表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
埋もれた声明文 ~陰キャでぼっちな俺が、なぜか学校一の美少女に呼び出された~  作者: シッポキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/94

91 根本遥の独白⑳ 潮時

 鈴木静(すずきしずか)に犯罪行為をさせ、決定的な証拠(しょうこ)を手に入れて告発(こくはつ)する作戦。あたしは海野洋(うみのひろし)()()って、さりげなく指示役(しじやく)から支援者(サポーター)に立場を変える事ができた。


 危険な【物語】への介入(かいにゅう)は、この(あた)りが潮時(しおどき)だと、あたしの防衛本能が()げていた。

 指示を出さなくても、海野洋が自発的(じはつてき)に行動する流れは作った。あたしの思い通りに(こと)が運ぶかどうかは分からないけど、海野洋と鈴木静――【(おど)す者】と【(おど)される者】の軋轢(あつれき)は、どちらかが(たお)れるまで、ずっと消えずに(くすぶ)り続ける。


 その勝負の結果が出るまで……あたしはしばらく息を(ひそ)めることにした。


 それから三週間が()とうとしていた。町内で小火(ぼや)や火災のニュースは無く、あたしは部屋の中で歯痒(はがゆ)い思いを(つの)らせていた。

 そんな時、不意(ふい)にリビングの電話が鳴った。あたしは急いでリビングに(すべ)り込み、コードレス電話の小さな液晶を確認した。080……スマホからの番号。少し前に、同窓会を企画(きかく)している山本(やまもと)と名乗った女の番号だと思う。

 以前あたしは低めの声で保護者を演じ、本人はカナダに留学していることにして、話を打ち切っていた。


「はい。根本ですが、どちら様?」

『私は白川瞳(しろかわひとみ)と申します。根本遥(ねもとはるか)さんに(つた)えたい事があって電話をしました』


 予想外の相手に、あたしは思わず絶句(ぜっく)した。これから山本と名乗る女とどう会話を(はず)ませるか――自分に()した思考ゲームを楽しむつもりだったのに。


『もしもし? もしもあなたが根本遥さんだったら、お願いだから電話を切らずに話だけでも聞いてほしいの。ダメかな?』


 ろくに話した事も無い白川瞳が、どうしてあたしに電話を? 海野洋が小鳩(こばと)駅のホームで彼女を見かけた事と、何か関係があるのだろうか。


『木田さんを犠牲(ぎせい)にした悪い奴を見つけ出すために、あなたの力を借りたいの。お願い!』


 ちょっと待って。(わけ)が分からない。あたしは思考がまとまらず時間を(かせ)ぐため、ゆっくりとした口調で相手に問い返した。

「……本当に白川(しろかわ)さん? この(あいだ)の山本って名乗った(あや)しい人じゃないの?」


『それは偽名(ぎめい)よ。私の名前を出すと警戒されると思って偽名を使ったの』

「……ふうん。カナダ留学の(うそ)はバレてたんだ?」

『声が若かったし、本人が電話に出て嘘をついているんじゃないかと思ったの』


 どうやら白川瞳は前回の電話で、あたしの様子を(さぐ)ろうとしていたのかも知れない。だとすると、すでに渡辺凛(わたなべりん)安藤芹(あんどうせり)とも接触している可能性がある。


誤魔化(ごまか)さなくてもいいわ。どうせ渡辺凛か安藤芹に聞いたんでしょ? 中学から不登校だってね。で、あんたは(めぐみ)を殺した悪い奴を見つけ出すために、あたしの力を借りたいと言ったわね。何かつかんでいるの?」

あたしは相手に音が聞こえないように静かに息を吐き出し、鼓動(こどう)(しず)めた。


『木田さんを誰かが(あやつ)っていた事は分かってきた。(くわ)しい事はあなたと直接会って話がしたい。外に出るのがダメなら、あなたの部屋に入れてほしい。腹を割って話がしたいの』


「……あたしを(うら)んでないの?」


『もう(うら)んでない。もちろん木田さんの事も』

白川瞳は落ち着いた声で(まよ)い無く答えた。何を目的に、どこまで調べたのか分からないけれど、今のところ白川瞳は、(めぐみ)(ウラ)(あやつ)っていた人物を見つけ出したいようだ。


「……わかった。あたしの家に来て。あんたは高校生だろうから、いろいろ忙しいんじゃない? あたしはずっと家にいるから、あんたの都合のいい日に会ってあげる。住所はもう知っているんでしょ?」


『ええ。それじゃあ今週の土曜日の正午はどう? お昼はあるの?』

「いつもはレンチンか宅配ピザだけど」


『私の手作り弁当を持って行ってあげる。料理には自信があるの。一緒に食べながら話をしましょう』

「フフフ。楽しみに待ってるわ」


 思いも寄らない登場人物が、向こうから近づいて来た。(あら)たに加わった白川瞳が、この【物語】にどういう影響を与えるのか――。


 あたしは安全な場所で、ゆっくりと見物させてもらおう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ