表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
埋もれた声明文 ~陰キャでぼっちな俺が、なぜか学校一の美少女に呼び出された~  作者: シッポキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/94

38 残りの案件

 白川(しろかわ)はテーブルに置いたスマートフォンの通話を切った。飲みかけの缶コーヒーを一気に(あお)り、ゆっくりと息を吐いた。

「何とか根本遥(ねもとはるか)(ふところ)に入る事が出来たわ。彼女は木田(きだ)さんが誰かに殺されたと考えているようだった。その(あた)りの事情を知るためにも、土曜日の訪問はキーポイントになりそうね」


 俺は仕舞い込んでいたクラスメイトの一覧表を広げた。横線を引いて一度消した根本遥の(らん)(あらた)めて確認する。

根本遥(ねもとはるか)……【知性?】【意欲×】【性格:不真面目(ふまじめ)で反抗的?】【備考:真面目に取り組んでいない。作文が苦手?】


「根本遥はいずれの文集も真面(まとも)に取り組んでいなかった。俺は彼女が不真面目過ぎて()()()の候補から(はず)したけど、電話の応答(おうとう)ではサバサバした性格で、頭の回転が速い印象を受けた。それに学校や仕事に行ってる様子は無い。世間(せけん)(しがらみ)が無く、日中(にっちゅう)自由に動ける。油断しない方がいいと思う」


「彼女が()()()の可能性もあるという事ね」

白川はクッキーを二つ同時に口に入れた。()(くだ)きながら折り(たた)んでいた自分の一覧表を取り出して、考察した根本遥の欄を確認した。


「●根本遥……【知性×】【意欲×】【性格:やる気なし】【備考:興味の無い事に真面(まとも)に取り組まない。分かりやすい性格】。(はじめ)の言う通り、話していて受動的(じゅどうてき)な弱々しい印象は受けなかった。だけど、思っている事を上手(うま)く隠し通せるような器用(きよう)な人じゃないと、私は感じたわ」


「俺も(ひとみ)の付き()いで行ったら、根本遥は部屋に入れてくれるかな?」

(はじめ)は、私一人に行かせるのは心配? それなら彼女の家まで一緒に来て。ダメ元で許可してくれるか聞いてみる。ダメなら家の(そと)で待ってもらうしかないけど。それでもOK(オーケー)?」


「わかった。たとえ(そと)にいても抑止力(よくしりょく)にはなるだろう。(ひとみ)も最悪の事態に(そな)えて、適度に距離を()けて迎撃(げいげき)出来るようにしておいてほしい。何かあれば、すぐに警察に通報するつもりだ」


OK(オーケー)。根本遥についての打ち合わせは一先(ひとま)ず完了ね。あとは海野洋(うみのひろし)安藤芹(あんどうせり)。安藤芹は、根本遥の情報を引き出した(あと)に計画を立てましょう。二人から得た情報を照らし合わせれば、当時の木田さんのグループの内情が見えてくるかも知れないわ」

白川は座椅子の背にもたれて首を回した。


「あとは海野洋か。当時、学級委員長をしていたという事だけど、(ひとみ)から見て()()()のイメージはありそうかな?」

俺が問うと、白川は目を(つぶ)って腕を組んだ。当時の記憶の断片を(まと)めているようだ。


(そつ)なく役割をこなしていた印象があるわ。でも率先(そっせん)して(みんな)を引っ張っていくような覇気(はき)は感じられなかった。()()()のイメージに近いと言えば近いかも知れない」


「その……(ひとみ)に恋愛感情を(いだ)くような様子は無かったのかな? 告白されたとかじゃなくても、じっと見つめられたり、視線を感じたとか」

「言葉にして伝えられないと、他人(ひと)の心の中なんて分からない。私は女性にしては背が高い方だから、男女に(かか)わらずよくジロジロと(なが)められるの。正直言って分からない」

白川は腕を組んだまま、俺に視線を合わせじっと見つめた。むず(がゆ)くなってすぐに視線を()らせ、クッキーをつまんだ。


(はじめ)は同じクラスになってから、ずっと意識的に私を見ないようにしていたわね。一度も話した事が無いのに、嫌われているのかと思った」

「……ジロジロ見ていないアピールだ。気持ちの悪い男だと思われたくなくて」

「ふふっ。挙動不審(きょどうふしん)(はじめ)に興味を引かれて、気づかれないようにずっと観察していたのよ。いい(ヒマ)つぶしになったわ」


「話が()れた。海野洋の件に戻るけど、優等生で、クラスメイトの大部分が入学している高校とは別の高校に入学している。つまり行動をクラスメイトたちに把握されにくい。その上、クラスメイトの名簿を(にぎ)っている強みもある。()()()の要件を十分(じゅうぶん)()たしているんじゃないかな?」


「名簿を握っている海野洋が()()()だとしたら、担任の先生を先に(ほうむ)った動機はどうなるの? 大人を手に掛けるとしたら、子どもよりもハードルが高くならない?」

白川は残ったクッキーを俺の(ぶん)と合わせて、クッキングシートに(くる)んだ。

「残りは帰りに食べて。昼食もちゃんと食べてほしいから」


俺は(うなず)いて時計を見た。時刻は午前十一時半を少し回ったところだった。


「死亡した順番に意味があるとしたら、木田恵(きだめぐみ)口封(くちふう)じ。担任の先生は住所録の入手以外に何があるんだろう?」

俺は昼食の準備をすると言う白川を見送って、独り言を(つぶや)いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ