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埋もれた声明文 ~陰キャでぼっちな俺が、なぜか学校一の美少女に呼び出された~  作者: シッポキャット


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33/94

33 切っ掛け

「わたし、ちょっと御手洗(おてあら)いに行って来る」

「そう。それじゃあ、私は紅茶のお()わりに行って来るわ」

席を立った渡辺凛(わたなべりん)を見送って、白川(しろかわ)は俺の前を通り過ぎ、ドリンクバーの設置場所へ向かった。

 俺は渡辺凛の後姿を確認した(あと)、コップを持って席を立ち、白川の隣りに並んでコップの氷を入れ替えた。


「渡辺さんは当時の事を正直に話してる。()()()の不利になるような事も。私はシロだと思うけど、(はじめ)はどう?」

白川は包装から取り出したアップルティーのティーバッグをカップに入れ、熱湯を(そそ)ぎながら(つぶや)いた。


「窓の(うつ)り込みで確認したけど、不審な挙動(きょどう)は見当たらなかった。シロと判断して、()み込んだ質問もしてみたらどうだろう?」

「そうね。もし()()()がどこかに(ひそ)んでいて、渡辺さんと私が接触した事が分かったら、どんな行動に出て来るか分からない。今のうちに聞き出せる事は()いておいた方がいいわ」


物騒(ぶっそう)な事を言うなぁ。さすがの()()()にもいろいろとやる事があるから、ずっと標的に張り付いている(わけ)にはいかないだろう」

俺は横目でトイレから出て来る人の気配を感じた。二杯目のアイスコーヒーを多めに注いでシロップとミルクを鷲づかみし、小走りで席に戻った。


 スマホを(いじ)る振りをしながらアイスコーヒーを()き回していると、白川と渡辺凛が連れだって奥のテーブル席に戻って来た。二人で追加のデザートを注文した後、渡辺凛が口火(くちび)を切った。


「白川さんは、さっき『口封(くちふう)じ』と言ったわね。それは一体どういう意味?」

「私を執念深(しゅうねんぶか)い女と思わないでね。当時あなたたちに(ひど)い落書きをされた教科書をまだ持っていて、何か分かるかも知れないから、その落書きを再検証してみたのよ」


「へ、へぇ……そうなんだ」

(ひど)い落書きに(まぎ)れて、気づかないくらいの目立たない小さな文字で『ごめん』って、謝罪の言葉が書かれてあったの」


「一体誰が書いたのかな?」

「タイムカプセルに入っていたクラスメイトの手紙の文字と照らし合わせた結果、(くせ)が木田さんの書いた文字と一致していたの」


「うそ?! あの木田さんが? どうして? (わけ)が分からない」

渡辺凛は両手で口を(ふさ)いで声量を(おさ)えた。


「私は改めて当時の事を俯瞰的(ふかんてき)に振り返ってみたの。当時の私はひねた性格で、同い年なのにクラスの(みんな)を子ども扱いして見下(みくだ)していた。いじめられる要因(ファクター)は確かにあった。

 でも、それ以外にも理由があったんじゃないかと思い直したの。あなたたちのグループがいじめを始めた切っ掛けよ」


(くわ)しくは覚えていないけど、グループの中で木田さんが言い始めたのは確かよ。白川さんはわたしたちを見下(みくだ)して、お(たか)()まってるってね」

「……その木田さんが、こっそりと私の教科書に謝罪の言葉を(しる)していたのよ。木田さんは、本当は私をいじめたくなかったんじゃないかな?」


「わたしの意見を言っていい?」

渡辺凛は静かに言った。


「ええ。どうぞ」


「言い(わけ)に聞こえるかも知れないけど、いじめる方もしんどいし、先生に告げ口される恐れもある。悪い事をしている自覚もあるから罪悪感に押し(つぶ)されそうになる事もあった。

 正直、どうして木田さんが、ずっといじめをやり続けているのか理解出来なかったの。だけど当時のわたしはリーダーの木田さんが怖かったし、仲間(はず)れにされるのも嫌だったから……本当にごめんなさい」

渡辺凛はしばらくの(あいだ)頭を下げて、(うつむ)いたまま押し(だま)った。


「あなたは木田さんの命令に(さか)らえなかった。同じように木田さんも、()()の命令に(さか)らえなかったとしたら……私はそう考えるようになったの」

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