表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
埋もれた声明文 ~陰キャでぼっちな俺が、なぜか学校一の美少女に呼び出された~  作者: シッポキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/94

31 告知

 白川(しろかわ)渡辺凛(わたなべりん)のテーブル席に、注文した料理が運ばれて来た。店員とやり取りをしている間に、俺はドリンクバーの設置場所へ行き、アイスコーヒーを注いで戻って来た。シロップとミルクを入れてストローで()き回していると、背もたれの後ろから再び二人の会話が聞こえてきた。


桐島(きりしま)君とは同じ高校だったの。白川さんも知っているだろうけど、南小(なんしょう)に一番近い、市立西河南(さいかみなみ)高校よ。事故の話は全校集会で先生から報告があったわ。川でソロキャンプ中に(おぼ)れたんだってね」


(もと)六年二組のクラスメイトで、同じ高校に入学した他の生徒はいない?」

白川が尋ねると、少し間をおいてから渡辺凛(わたなべりん)は答えた。

「極端に頭がいい人と悪い人、それと引っ越した人以外はほとんど入学しているんじゃないかな。ちゃんと調べていないから(くわ)しくは分からないけど」


「そう……。現在(いま)把握しているだけで、六年二組に関係している人が三人も亡くなってる。三人とも事故らしい(あつか)いだけど、私は(つな)がりがあるんじゃないかと(うたが)っているの」

(つな)がり? ……どういう事? 確かにクラスメイトと担任の先生が立て続けに亡くなるのは少し不自然だけど、桐島(きりしま)君の事故に連続性は無いんじゃない?」


 ミックスグリルランチが到着した。店員は会計伝票を丸めて伝票立てに()して戻って行った。俺は背後に耳を澄ませながら、チキンステーキを一口サイズに切って口に入れた。皮はこんがりと香ばしく、ふわりとしたモモ肉を噛みしめて舌で転がすと、甘辛い醤油の旨味と肉汁が(はじ)けて口一杯に広がった。

「なかなか美味(うま)い」

(つぶや)いた(あと)、慌てて口を(ふさ)いだ。


「本題に入っていい? 渡辺さんの様子を(さぐ)った理由を話すわ」

「聞かせてくれる?」

「小学校六年生の卒業式の日に、(みんな)で埋めたタイムカプセルを覚えてる?」

「……確か、学校の裏庭のどこかに埋めたような覚えがある。わたしは手紙とその頃流行(はや)ってたお菓子を一緒に入れたかな」


 背もたれの隙間(すきま)から窓ガラスに(うつ)った渡辺凛(わたなべりん)の表情を(うかが)うと、不自然な様子は無い。手元にも目を()ったが、ぎこちなさは見当たらず、美味(おい)しそうに食事を取っていた。


「実はこの夏休みに、私は(みんな)に内緒でそのタイムカプセルを掘り起こしたの」

「え!? どうしてこの時期に?」

「理由を(こま)かく話すとまどろっこしいから、簡単に言うと、当時私をいじめてたクラスメイトたちに仕返しをしたかったの。中の手紙を盗み見て、嘲笑(あざわら)ってやろうと思ってね」

「それで? ……まだ何か続きがあるんでしょ?」

窓ガラスに映った渡辺凛は好奇心たっぷりな眼差しで身を乗り出した。


「そのタイムカプセルの中に、差出人不明の茶封筒が(まぎ)れ込んでいたの。この封筒に見覚えはない?」

白川は(あらかじ)め用意していた茶封筒のレプリカを見せた。中には三つ折りの手紙のコピーが入っている。俺はアイスコーヒーを音を立てずに(すす)りながら、渡辺凛の横顔を垣間(かいま)見た。


「ありきたりの封筒ね。中身を見てもいい?」

渡辺凛はナイフとフォークを置いて茶封筒を受け取り、中の手紙を開いた。窓ガラスに映り込んだ表情が次第に強張(こわば)って、眉間に(しわ)が寄り口元を手で押さえて(つぶや)いた。

「何よこれ……。誰がこの手紙を書いたの?」


「分からない。この手紙の内容がただの悪戯(いたずら)じゃないとしたら、亡くなった三人の死に(つな)がりがあるかも知れない。私は当時の連絡網(れんらくもう)を使って、六年二組のクラスメイトたちの安否確認をする事にしたのよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ