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12.好きか嫌いかでいえば好きなんだ


 食堂に隣接する部屋で制服に着替えて、あたし達はクラスのみんなに合流した。


 クラスのみんなは笑顔で迎えてくれる。


 あたし達が本陣から出た後、食堂の中ではクラスごとに集合して席についているようだ。


 ディナ先生はいないけれど、食堂のある建物の警戒に参加しているらしい。


 あたしとキャリルは実習班のみんなに合流する。


「おかえり二人とも、無事で良かったわ」


「おかえりなさいウィン、キャリル」


「おかえりなのじゃ」


 サラとジューンとニナの顔を見ると思わずホッとする。


「ただいま」


「ただいまですの。なかなか有意義な作戦でしたわ」


「あたしは身体はともかく気分的にくたびれたわよ」


 なんか妙な神さまに絡まれたんですよ、言えないけれど。


 みんなからは (当然だけど)今日の午後の授業が無くなって、担当教科の先生からは宿題の連絡だけ来たそうだ。


 “食堂で自習”と言わなかったのは、教科書が教室にある子も居るだろうとの判断らしい。


「それでみんなはどうしてるの?」


「思い思いに過ごしとるで。読書しとる子が多いやんな。それよりウィンちゃん、どないな感じだったん?」


 さて、どこまで話していいものやら。


 キャリルに視線を向けると、彼女が笑みを浮かべて口を開く。


「もちろんわたくし達は、秘密組織の者たちなど物の数ではありませんでしたわ」


『おお~』


「やっぱり変幻の乙女(メタモルメイデン)斬撃の乙女(スラッシュメイデン)が揃ってたら最強だよな」


「おれ現場で見たかった」


「賭けをしとけばよかったよな」


 あたし達の会話を周囲から伺っていた連中の声が聞こえたので、あたしが視線を向けると静かになった。


 野次馬め。


 そのあとあたし達は、実習班のメンバーを囲むように【風操作(ウインドアート)】で周囲を防音にしてお喋りをして過ごした。


 夕食はそのままクラス単位で学院の食堂で食べた。


 ちなみに風紀委員会の週次の打合せは無しになったと、エリーが伝えに来てくれた。


 あたし達は夜まで食堂で待機したけれど、王都の路地の安全が確保されたということで寝る前には寮に戻ることが出来た。


 自分の部屋に戻った後に部屋着に着替えてボケボケっとしていたら、アルラ姉さんが訪ねてきた。


 二人でハーブティーを飲みつつ、ゴッドフリーお爺ちゃんたちが王都に来ている話を伝えたら笑っていた。


 姉さんが自分の部屋に戻った後、明日は闇曜日で休みだし、さすがに宿題の片付けとか今日の日課のトレーニングは休むことにする。


 ホントにくたびれたんですよ。


 人間に憑依した状態とはいえ、戦神さまと決闘したし。


 戦神さまと戦ったことで何か変化があっただろうか。


「あれ? そういえばステータスを確認してないわね」


 そう思って【状態(ステータス)】で確認すると、新しい“役割”を覚えていた。


「『布瑠主(アークエマナー)』か。強くなったのは歓迎だけど、それで妙な絡まれ方はしたくないのよね」


 ステータスの情報では、布瑠主(アークエマナー)は“()つことで関係性を創造する者”とのことだった。


 あと、布瑠(エマナー)のスキル『淘機収斂(とうきしゅうれん)』が消えて、連環真興(れんかんしんこう)とかいうスキルを覚えていた。


「“経つことで縁を結び直す”って何、このスキル……」


 概念的すぎてよく分からないし、とりあえず寝かせておこう。


 あたしは今日は考えることを放棄して、薬草図鑑を取り出して薬草の絵を見てのんびり過ごした。




 そろそろ寝るかと思っていると、【風のやまびこ(ウィンドエコー)】でカースティから連絡があった。


「こんばんわウィンさん、いま大丈夫かしら?」


「こんばんはカースティさん。通信の魔法が使えるようになったんですね――」


 カースティによれば少し前から魔法連絡が回復しているそうだ。


 フェリックスが今日のことをブルー様に報告し、ブルー様がレイチェルに情報を流し、カースティがそれを聞いて連絡をくれたようだ。


「フェリックスが割込んでごめんなさいねー。やりづらかったんじゃないかしら?」


「いえ、大丈夫でしたよ。フェリックス先輩は別の先輩と二人一組で、『赤の深淵(アビッソロッソ)』を一人制圧してました」


「そうなのね」


 あたしが説明すると、カースティは安心したような声で応じた。


「それでウィンさん、本題なんだけれど、私が気にしていた女の魔族は見付からなかったわ――」


 カースティは予定がないときは、ここ数日は中央広場で張り込みをしていたそうだ。


 魔神さまの聖地があるということで、『赤の深淵』が活動すると思っていたらしい。


「そうしたら巨大な『骨ゴーレム』を呼び出した女の魔族を見つけたんだけどねー」


「幹部では無かったと?」


「うーん……、人間の身体と同じ素材を使った、高性能の自律型ゴーレムだったみたい」


「なんですかそれ……?」


 説明を聞いたけれど、ゴーレムは普通に喋りかけてきたし、知らなければ人間だと判断しただろうとのことだった。


 ちなみにそのゴーレムは、ノーラに手伝ってもらって片付けたという。


「微妙に不安ですけれど、これで王都に来た『赤の深淵』は撃退できましたかね?」


「たぶんねー。幹部の『三塔(さんとう)』のうち、一人は生け捕りで一人は討伐、一人は行方不明。構成員は二十人強を捕まえたり討伐したわ。今回は終了ねー」


 そういうことなら安心できるだろうか。


 そう思っていたらカースティが奇妙な情報を教えてくれた。


「あとウィンちゃんが生け捕りした幹部だけど、闇魔法で色々矯正するみたい。それで合体魔法で王国に隷属させて、暗部に放り込む案があるらしいわー」


「マジですか……?」


「速報の段階だけど、モノになりそうらしいわよー」


 まだブルー様からの極秘扱いの話らしいけれど、共和国はゼヴェロを国外追放にしたいらしい。


 そして王国としては武の実力を有効活用したいのだそうな。


 カースティとそこまで話し、情報のお礼を伝えて連絡を終えた。


 その後あたしは早めに寝た。




 一夜明けて二月第三週六日目の闇曜日になった。


 今日は学院が休みだし、昨日の今日だし、そもそも学院からの外出禁止が解けていない。


 あたしはゆっくりめに起き出して寮の食堂に向かう。


 配膳口で料理を受け取って、味わって食べる。


 朝食後は新聞が目に入ったけれど、手に取ってみても今日の新聞は配達されていなかった。


「まあ当然か」


 『骨ゴーレム』で大騒ぎだったし、新聞どころじゃないよね。


 そう思って部屋に戻ろうとすると、食堂を出たところで寮母さんに声を掛けられる。


 ちょうどあたしを呼びに行こうとしていたらしいけれど、ゴッドフリーお爺ちゃん達が訪ねてきたそうだ。


 いま部屋着なので、アルラ姉さんにも声を掛けてから制服に着替えて向かうと伝えた。


 急いで自室に戻り姉さんに【風のやまびこ(ウィンドエコー)】で連絡を入れる。


 どうやら自分の部屋で読書をしていたようだ。


 お爺ちゃん達のことを伝えて玄関で合流という話になり、連絡を終える。


 その後あたしは速攻で着替えて玄関に向かうと、お爺ちゃん達が居た。


「おはようみんな、来てくれたんだ」


「おはようウィン。元気そうだね」


「おはようなのじゃ」


 そう言ってリーシャお婆ちゃんとお爺ちゃんが挨拶してくれた。


 他にはアードキル伯父さんとリア伯母さん、そして意外だったのだけれどケイラ姉さんの姿があった。


 程なくアルラ姉さんも降りてきて挨拶をする。


「寮の玄関で話し込むのもどうかしらね」


「なら学院を案内しよう?」


 姉さんとそう話してから大講堂に向かうことにして、あたし達は寮を出た。


 歩きながら話していると、あたしを訪ねてきたのは顔を見に来たのと、重要な相談があるからだという。


「重要な相談って?」


 あたしが訊くと、お爺ちゃんがモジモジしながら応える。


「うむ、儂らに使い魔のスキルの覚え方を教えて欲しいのじゃ」


 ああ、一瞬で納得しました。


 お爺ちゃんとお婆ちゃん、そしてアードキル伯父さんの家族は全員動物好きだった記憶がある。


 というか、お爺ちゃんはモフラーだよね。


「頼むわアルラ! ウィン! いまこそ私は魂の封印を開放して、真なる獣をうつつに顕現させるのよ! アハハハハハ!」


「……どうしたのケイラ姉さん?」


 アルラ姉さんがそう言って眉をひそめているけれど、気持ちはわかる。


 謎のテンションでケイラ姉さんが笑っているけれど、こんな性格だったろうか。


 あたしが入学前に、ミスティモントに伯父さん一家が尋ねて来たことがあった。


 そのときケイラ姉さんは、もっと落ち着いた性格だった気がする。


「ケイラはそういう話し方にハマってるみたいなのさ。ビョーキだよ」


「ほらケイラ、いつもの寸劇はほどほどにしよう。ウィンが困ってるみたいだし」


 お婆ちゃんが呆れた顔を浮かべ、伯父さんが苦笑している。


 よく分からないけれど、ケイラ姉さんは“何か”に目覚めたのだろうか。


 あたしはとりあえずスルーすることにした。


「そういうことなら、大講堂に向かってたけれど、実習棟に案内するわね。本棚がある方が説明しやすいから」


 あたしはそう言ってアルラ姉さんに視線を向けると頷くので、二人でお爺ちゃん達を案内する。


「それにしてもウィンちゃん、久しぶりに会ったけれど、なんだか活き活きしてるわね。学校は好きかしら?」


 リア伯母さんがおっとりした口調であたしに問う。


 活き活きしてるかなあ。


「そうね……。風紀委員会に入ってからときどき面倒ごとに巻き込まれてるし、ラクをしたいって思うけれど、学院が好きか嫌いかでいえば好きなんだと思うわ」


 あたしの言葉に、みんなは柔らかい表情を浮かべていた。






――――


【お知らせ】


 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。


 第66章で一区切りとなるため、拙作は一旦「仮完結」という形を取らせていただきます。


 今後は、いつものように章末に簡単な登場人物・設定集を投稿したあと、翌日に「余章」を公開し、完結フラグを立てる予定です。


 まだ回収していない要素もありますが、物語を一度整理するための区切りとなります。


 また、これに合わせて作品タイトルを変更いたします。詳細は活動報告の

「タイトル変更につきまして」

( https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3548677/ )

をご覧ください。


 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


 熊野八太


 (2025/12/13)




お読みいただきありがとうございます。




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