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03.本題は残っている


 あたし達のステータスに『神々の仮守(かりもり)』という称号が現れる『特効薬』だけれど、ソフィエンタとしては自信作みたいだ。


 というか何やら対抗意識をにじませている。


「全く、『魔神騒乱』の時もそうだったけど、魂魄感染型ウイルスとかあたしが疑われかねない手口を使わないで欲しいのよね!」


「まさかソフィエンタは疑われたの?」


 だとしたらちょっと気の毒ではあるか。


「まあね。神々の街の自分の部屋でくつろいでたら、真っ黒いスーツを着込んだ法の神格の一柱が『調査にご協力ください~』とか言って訪ねてきたのよ? 何かと思ったわよ」


 それは相手が神々の法を担当する神さまと分かったら、微妙にリアルに怖いかも知れないな。


「でも今回は『赤の深淵(アビッソロッソ)』の子たちの監視を始めてから記録を取っているし、あたしが疑われることは無いわ」


 なるほど、どういう記録かは知らないけど、疑われないようにしたのはいい判断だったんじゃないだろうか。


「そしてウイルスにはウイルスで対抗するわよ! 薬神舐めとるんかーいっって感じよ?」


「べつに舐めてるワケじゃあ無いんじゃないかしら?」


 あたしはそう言って細く息を吐く。


 何にせよソフィエンタが気合を入れて用意したなら大丈夫なんだろう。


 あたしはそう思うことにした。


「あの、薬神さま。その『特効薬』ですか? 『神々の仮守(かりもり)』の効果はどのくらい続くのでしょうか?」


 確かに効果時間は重要な情報だろう。


 あたし達が対処している間に切れたら面倒なことになりそうだ。


「心配しなくて大丈夫よディアーナちゃん。個人差はあるけれど、三か月くらいは効果があるわ」


「なら安心ですね!」


 なるほど、それは確かに安心だ。


 そう思っていたあたしだったワケですが。


「しかも今回、あたしの『特効薬』を神々が勝手に調べようとしたら、タジーリャ様に警告が飛ぶように作っておいたわ! これで安心よ!」


 それは本当に安心なんだろうか。


 いや、あたし達人間にとっては安心なのだけれど、それはソフィエンタのところに連絡が行くようにすべきではないだろうか。


 あたしが戸惑った視線を向けていると、他の神々も何やら苦笑を浮かべていましたとも、うん。


「それじゃあ後は現実に戻してもらって対処を開始かな?」


 そう言ってコウが腕組みをする。


「となると、いきなり『骨ゴーレム』に対処しなければならないのね」


 あたしはそう言ってから考え込む。


 ホリーがヤバい状況はまだ解決したわけじゃあ無い。


 戻ったのと同時に動き出す必要があるのか。


 プリシラが氷神さまから『詢術(しゅんじゅつ)』を教わったらしい。


 前にソフィエンタの話では、アカシックレコードに作用するヤバ気なワザと聞いた記憶がある。


 プリシラと氷神さまは練習したと言っていたし、そこまで心配は要らないだろう。


 それでも万一に備えて、あたしはプリシラのフォローに入れるようにしておこう。


 そこまで頭の中であたしは計算を走らせていた。




 だがどうやらまだ本題は残っているらしい。


 あたしとコウが少しマジメな表情をしていると、魔神さまが済まなそうな顔をして口を開く。


「あ、いや、まだ連絡することがあるんだ。『骨ゴーレム』のことでね」


「そうね。それも今言っておいた方がいいわね――」


 魔神さまに同意しつつソフィエンタが告げるけれど、中々面倒くさいことを言われてしまった。


「骨消えないの?!」


 あたしは思わず叫んでしまったけれど許して欲しい。


「ええ。『赤の深淵』の子たちが禁術の儀式を病院屋上で始めているけれど、王都の路上に溢れかえっている『骨ゴーレム』は別口なの」


 ソフィエンタがそう告げると、氷神さまが落ち着いた口調で補足してくれた。


「安心なさい、そちらの話はあなた達が直接対処する必要は無いのよ」


 要するに『骨ゴーレム』だとか、王都に潜む『赤の深淵』の構成員を各個撃破するのは、衛兵とか冒険者とかに任せればいいだろうとのことだった。


 そういうことならそこまで心配する必要は無いか。


 あたしがディアーナに視線を向けると彼女は頷いている。


「わたしが『魔神の巫女』として王国に連絡をしておきます」


 あたしとコウとプリシラは頷いた。


 その後すこし肩の力を抜きなさいと氷神さまに笑われて、テーブルの上のお菓子をみんなで頂くことになった。


 『戻ったら色々やる必要があるから、おやつで元気を補給して行くように (意訳)』と火神さまに言われた。


「まだ伝えていなかったけれど、キミたちには『赤の深淵』の禁術儀式を何とかして止めて欲しい」


 火神さまはそう言ってあたしに視線を向ける。


 そう言えばソフィエンタから『時輪脱力法(じりんだつりょくほう)』で禁術を止められるという話をきいたか。


 詳しく確認しなかったけれど、あたしが覚えた技は振れた対象の状態異常を直す(、、)ことが出来る。


「あたしが生贄にされてるフリズ先輩に、『時輪脱力法』を使えばいいんですね?」


「それで問題無いね。それでももしウィンが失敗するようなら、プリシラが『詢術』を使う必要があるかな」


 あたしの確認に魔神さまが応えてくれた。


 名前が挙がったプリシラが表情にやる気を浮かべている。


「頑張りますと宣言します」


「うーん……。でもソフィエンタの見立てでは、ケーキの魔改造レベルの話なんですよね……」


 ソフィエンタの部屋でカレーとラッシーを頂きながら、さんざん毒づいている我が本体を見た気がするんです。


「何の話だい?」


 興味津々と言った顔をして火神さまがあたしに訊くので、ソフィエンタに確認してから一通り説明をしてみた。


「――ということで、例えればケーキをムリヤリ作り変える程度の話じゃないかっていうことになったんです」


「あー確かに。それは分かりやすい考え方だ」


「どうにもソフィエンタとその巫女は、発想が独特だよね」


 魔神さまは感心した表情を浮かべ、火神さまはくつくつと笑った。


 独特と言われても分かりやすかったし、その例えでいいってソフィエンタに言われたんですよ。


「でも大丈夫ね。私もソフィエンタの意見に賛成するわ」


 そう言って氷神さまがフォローしてくれた。


 その後ケーキの話が出たからということで、魔神さまがお勧めというケーキを出してくれた。


「ルーモンで行きつけだった飲食店(バール)は、甘味(ドルチェ)が美味しくてね」


「魔神さまと行ったことがありますね!」


 ディアーナがそう言って嬉しそうにしていた。


 ちなみに出てきたのはブルーベリーのレアチーズケーキだ。


 クリームチーズの濃厚さを酸味が引き立たせ、そこにブルーベリーソースがさっぱりした甘みを加えている。


 あたしは魔神さまが行きつけだったという店の情報について、あとでディアーナから訊き出すことを心に誓ったのだった。




 全ての準備 (おやつ補給含む)が完了した。


 ソフィエンタが用意した『特効薬』も、あたしたち全員に付与された。


 ステータスの情報を確認したけれど、確かに『神々の仮守』という称号が加わっている。


「それじゃあ、そろそろあなた達を現実に戻します」


 氷神さまがそう言って、他の神々に確認するように視線を向けると、ソフィエンタ達は頷いた。


「先ずはキミ達を呼んだ場所に戻す。時間はほぼ経過していないから、直ぐに動き出して欲しい」


 火神さまがそう言って鷹揚な笑みを浮かべる。


「色々ときみ達に任せることになって済まない」


 魔神さまがそう言って苦笑する。


 そしてソフィエンタが笑顔を浮かべる。


「大丈夫よ。仮に失敗しても、その時はその時で何とか手立てを考えます。みんな頑張ってね」


『はい』


 そうしてあたし達は現実に帰還した。





お読みいただきありがとうございます。




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