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12.魔力切れを防げるように


 寮に戻ってからはいつものようにアルラ姉さん達と夕食を取って自室に戻り、宿題を片付けた。


 つづいて日課のトレーニングを片付けようと思ったのだけれど、その前に何となく現時点でのステータスを確認した。


 以下のような内容だ。


状態(ステータス)

名前: ウィン・ヒースアイル

種族: ハーフエンシェントドワーフ(先祖返り)

年齢: 10

役割: 風水師(フローセージ)

耐久: 90

魔力: 240

力 : 90

知恵: 260

器用: 270

敏捷: 380

運 : 50

称号:

 八重睡蓮(やえすいれん)

 斬撃の乙女(スラッシュメイデン)

加護:

 豊穣神の加護、薬神の加護、地神の加護、風神の加護、時神の加護、

 薬神の巫女

スキル:

 体術、短剣術、手斧術、弓術、罠術、二刀流、分析、身体強化、反射速度強化、思考加速、影拍子、専心毀斬、隠形、環境把握、魔力追駆、偽装、毒耐性、環境魔力制御、周天、無我、練神、風水流転

戦闘技法:

 月転流(ムーンフェイズ)

 白梟流(ヴァイスオイレ)

固有スキル:

 計算、瞬間記憶、並列思考、予感

魔法:

 生活魔法(水生成、洗浄、照明、収納、状態、複写)

 創造魔法(魔力検知、鑑定)

 火魔法(熱感知)

 水魔法(解毒、治癒)

 地魔法(土操作、土感知、石つぶて、分離、回復)

 風魔法(風操作、風感知、風の刃、風の盾、風のやまびこ、巻層の眼)

 時魔法(加速、減速、減衰、符号演算、符号遡行)


 称号の欄から例のアレが消えてくれてから復活する気配はない。


 たぶん斬撃の乙女(スラッシュメイデン)の方が、学院内で一般的な二つ名になってしまったということなんだろう。


 もうちょっと可愛らしい称号が欲しい気もするんだけど、これはもう納得するしかないか。


 スキルとか魔法に関しては変化は無い。


 そういう意味では停滞している気もするけど、あまり数ばかり増やしてしまってもと思う。


 スキルを増やし過ぎると器用貧乏になると教えてくれたのはアルラ姉さんだったか。


 話を聞いたときはそういうものかも知れないなと思ったけれど、ニナから『最強の魔法』の議論の話を聞いて妙に納得した。


 正確にはあのときキャリルが言った言葉がストンと納得できたのだけれど。


「『剣でいえば“斬るを極める”』か。確かに一芸に秀でるとかは強そうだよね」


 思わず呟きながら、あたしはステータスの数値を確認する。


 力とか耐久の値が伸びていないけど、これはもう成長途中ということで気にしないことにしよう。


 内在魔力の循環による身体強化で補えるんだし。


 運に関してはいつもソフィエンタに訊こうと思って忘れちゃうんだよな。


 まあこの辺りはいいんだ。


 問題は伸びている数値だけど、気が付けば敏捷の値がエラいことになっている。


「『三百で精鋭、四百で達人』だったよね。あたしが達人? ないわー……」


 脳筋な一面はもういつの間にか否定しきれないけど、これでも食べるものやカワイイものが好きな女子生徒なんですけど。


「達人級とか言われたら色々そういうのから遠くなる気がする……」


 思わず重いため息をつきながら、魔力や知恵の値を確認する(ことにして現実逃避する)。


 闇神の狩庭(あんじんのかりにわ)で夢の世界に行くようになってから、【風操作(ウインドアート)】を徹底的に練習している。


 その練習が数値上昇に効いてるのかも知れないな。




 一通りステータスの確認をしたところで、ソフィエンタやティーマパニア様が環境魔力の扱いを覚えなさいと言っていたことを思い出す。


「そんなことを言われてもな……」


 広域魔法研究会の先輩からは、『制御が甘いと魔力が過剰に溜まったり、逆に魔力漏れを起こすようになる』と言われている。


 だからいままで制御重視で、環境魔力の流れを作り出すようにしていたんだよな。


 腕輪サイズまでは成功しているけど、というか日課でトレーニングしてるけど、もっと大きいサイズまで広げてしまってもいいんだろうか。


 詳しい人に見てもらえばいいんだろうけど、広域魔法は王国国籍が無いと学べない。


 いつも気軽に訊きに行ってしまうニナには訊けない話題だ。


「となると、まずは姉さんかな……」


 明日で期末試験前の最後の平日になってしまうし、その後は週末を経て期末試験に突入してしまう。


 その後はもう冬休みだ。


 広域魔法研で相談するにせよ明日中がいいだろうし、事前に姉さんに見ておいてもらった方がいいかも知れないな。


 そこまで考えたところであたしは【風のやまびこ(ウィンドエコー)】でアルラ姉さんに連絡した。


「こんばんわ姉さん。今ちょっといいかな、広域魔法のことで相談したいことがあって」


「あら珍しいわね、大丈夫よ。どうしたの?」


「正確には広域魔法というよりは環境魔力を使って魔力切れを防げるようになりたいんだけど、今のところ腕輪サイズの環境魔力の流れを作れてるのよ」


「ふむ。あなたのことだから飽きたというか焦れて来たか、どこまで制御の精度をこだわったらいいのかとか、その辺りかしら」


 さすが我が姉である、かなりスルドい所を突いてくるな。


 ただ、飽きたと言われるのは少しだけ悔しい気がする。


「飽きたというよりは、いちおう『焦れてきた』の方が近いわ、うん」


「そうなのね、ふふ。……それにしても腕輪サイズか。私が見てもいいけれど、広域魔法研の先輩に見てもらいたい所ね」


「そうなんだけど明日を逃すともう週末で、来週は期末試験でそのあとは冬休みじゃない?」


「要するに急ぎたいワケね。……ギリギリねえ。もっと早くに言い出せばよかったのに」


「おっしゃるとおりですおねえさま、たいへんもうしわけございません」


 だって仕方ないじゃないか、気が付いたのが今なんだから。


 でもアルラ姉さんから言われたのが正論だよね。


「まあいいわ。私の知り合いでは直ぐに思い浮かぶ人が居ないから、ロレッタにも声を掛けてみる。だいたい今から三十分くらいしたらウィンの部屋に行くわね」


「え、来てくれるの?」


「いま私の部屋、資料を広げていて動かしたくないのよ」


「そ、そうなんだ。ごめんね急に言い出して」


「構わないわ。ウィンが相談事なんて最近では珍しいもの。……今晩初雪でも降るんじゃないかしら」


「それは言い過ぎよ姉さん」


「冗談よ。……それじゃあ一旦連絡を終えるわね」


「おてすうをおかけしますおねえさま」


「はいはい」


 連絡を終えてからは【回復(ヒール)】の練習などをして過ごした。


 やがて時間が経ち、自室の部屋の扉の向こうに知った気配が並んでいるのに気づく。


 直ぐに扉がノックされたので、あたしは椅子から立ち上がって扉を開いた。


 そこにはアルラ姉さんの他にはロレッタ様と、キャリルとクラウディアの姿があった。


 クラウディアは回復魔法研究会の部室以外ではあまり会ったことは無いけれど、広域魔法研究会にも所属しているんだろうか。


「こんばんは、突然呼び立てて済みません。どうぞ部屋に入ってください。……あ、あたしの部屋ですけど絨毯を敷いてあるところからは土足禁止なので、履物は脱いでくださいね」


 日本人の記憶がある者としては、自室では靴とか脱いで過ごしたいんですよ。


 季節的にもう寒くなってきているし、フカフカに厚めの絨毯を敷いてある。


 まあ、【洗浄(クリーン)】の魔法もあるし、窓から寮を抜け出すようなときには自室でも靴を履くんだけどさ。


『こんばんはー、おじゃましまーす(ですの)』


 そう言って集まった面々はあたしの部屋に入ってきた。


 共用の給湯室を使ってハーブティーを淹れてみんなに出したところで、こたつ代わりのローテーブルを囲んで話を始めた。


 座布団代わりのクッションは人数分、マジックバッグから用意してある。


 どうやらクラウディアはロレッタ様とキャリルが魔法で連絡を出来るそうで、さきほどロレッタ様から声を掛けてくれたそうだ。


「それで、クラウディア先輩は広域魔法研究会にも入ってるんですか?」


「そうだよウィン。私は学院卒業後は医者を目指すと言ったことがあるだろう?」


「はい。じっさい、回復魔法研の部室では医学書を読み込んでいますよね」


「まあね。……それで将来医師として治療を行っている時に、魔力が切れて役に立たなくなるなんてことは嫌だったわけさ」


 ハーブティーを飲みながらクラウディアはそう応える。


 確かに医師なら魔力切れはそのまま誰かの命に直結する場合があるかも知れないな。


「それが防げるなら、環境魔力の扱いを覚えてしまうという訳ですね」


「そういうことさ」


「さすがクラウディア姉さまですの」


 キャリルがそう言って頷いている。


 確かに将来を見据えた学びは尊敬されるべきだと思う。


 魔法に関するトレーニングは、思い付いたからと言って直ぐに実現できるとは限らないんだよ。


 あたしの場合でいえば時魔法とかその最たるものだけれど。


 ちなみにキャリルが同席しているのは、彼女も環境魔力の制御を確認して欲しいようだ。


「それでウィンもキャリルも、腕輪サイズで環境魔力の制御ができると聞いているよ。座ったままで構わないから、順番に見せてもらっていいかい?」


「「わかりました」の」


 クラウディアに促されて、あたしとキャリルは環境魔力の制御を行った。


 日頃練習している腕輪サイズだったけれど、いつも通りにできたと思う。


 あたし達の様子を見てからクラウディアは少し考え込み、口を開いた。


「二人は学院に入学してからトレーニングを始めたのだったよね?」


「「はい」ですの」


「それでもうここまで制御できてるのか。まあ、魔力の制御は才能の部分が働くことが多いし、環境魔力もそうなんだけれど……」


「中々順調に鍛錬できているということですか、先輩?」


 ロレッタ様がクラウディアに確認するが、彼女は一つ頷いた。


「ああ。二人とも、身体を包む球状の流れに挑んでいいと思う」


 途中にベルトのサイズとか言われていた気がするけれど、それをスッ飛ばしてもいいということか。


「お手本をやってみせるから、見ていて欲しい。別にどんな姿勢でも構わないけれど……」


 そう言ってクッションに座っているクラウディアを包むように、球状の環境魔力の流れが現れた。


「大体、この位の魔力の濃さを目指して制御に挑んで欲しい。ロレッタやアルラはもう出来るよね?」


「「分かりました」の」


「私もロレッタも出来ますね」


「ええ」


 あたし達の返答に、クラウディアはまた頷く。


「うん。――ひとつの目安として、制御している環境魔力の流れにムラが出来ないようになることが条件になるんだ。感覚的な部分だから言語化し辛いんだけどね」


 そう言った後にクラウディアは、環境魔力を取り込む制御を実演してくれた。


 イメージとしては頭頂部から環境魔力を流し込み、尾てい骨から余分な魔力を抜けさせるらしい。


 頭頂部に流し込む環境魔力の動きについて、人によっては滝に打たれるだとか陽の光を浴びるだとか感覚的な説明をする指導者が多いそうだ。


「でもね、私の経験からいえば、最初に環境魔力を感じたときの印象をそのまま広げた方が上手くいく気がするよ」


「分かりました。まずは球状のトレーニングを頑張ってみます」


「わたくしも頑張りますわ」


「私も身体を動かしながらできるように練習中だけど、気長にやってごらん」


 その後はみんなで期末試験とか冬休みの話をしながら、ハーブティーを飲んで過ごした。



挿絵(By みてみん)

クラウディア イメージ画(aipictors使用)






――


2024/8/8


 本日午後七時十五分頃、気象庁が「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の臨時会合の調査結果を受け、南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」を発表しました。


 皆さまのご無事を願っておりますが、平常時に比べて巨大な地震が起きる恐れが高まっているとのことです。


 大地震への備えをご確認の上、お気をつけてお過ごしください。



お読みいただきありがとうございます。




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