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死ぬ前に一冊の本を書いてみようと思う

作者: ドラる

死ぬ前に一冊の本を書いてみようと思う

「なんだぁ、こりゃ」

机には物が散らかった机のど真ん中に買った覚えのない一冊の本が置いてあった。

「おっかしいなぁ」

何回記憶を漁っても本当に心当たりがなかった。

母に聞いても心当たりはなく、まさかないとは思いつつ父にも尋ねたがやはり違った。

姉にも、犬に聞いても分からなかった。

そんな不可思議な本に微妙に惹かれつつ、後で読もうと思い学校へ行った。

当時の俺は国語は嫌いではなかった。

むしろ授業の中では体育の次に好きだった。

だからと言って、授業時間外では決して読まなかったし、自ら進んで文豪の作品に触れようとも思わなかった。

ちなみに国語で読んだ作品でトップクラスに面白かったのは夏目漱石の「こころ」であった。

帰ってきてみると、その本はやはり机のど真ん中で堂々としていた。

読もうかなと思わなくもなかったがしかし、ゲームがしたかったが故にその日は読まなかった。

次の日も、その次の日も読まなかった。

なぜならゲームが楽しかったからである。

そしてその本はどんどん端の方に追いやられていき、結局本棚に重ねられてしまった。

そして月日は流れ私は、大学生となった。

大学とはなんとも空虚な場所である。

私は一度受験に失敗した。

1年間、浪人というものを味わった。

ある人はこう言った。

「金は時として命より重いんやで」と。

それが関係しているかどうかは分からなかったが、塾に莫大な費用を懸けたくないがゆえに自宅で勉強する手段を選んだ。

覚悟が足りなかったのだ。

その後、私が心を入れ替えて勉強すると誰もが思ったであろう。

私自身、そう思っていた。

しかし、やらなかった。

ゲームばかりしていた。

その1年間のゲームは楽しかったが今まで程ではなく、やらなければいけないという焦りだけを心に抱きながらふて寝した。

ちゃんとした時間に寝て、ちゃんとした時間に起きたことはあの一年間の中ではないのではないだろうか。

あの1年間で身に思い染みるほど実感したことが一つあった。

「人は変わらない。」

本質は一生変わらないのだと思った。

この例えは逃げだな。

「私は変われない。」が正しい。

恩師に久しぶりに会いに行ったとき、「辛かったね」と言われた。

何もしなかった自分の怠慢さに辛かったねと優しい言葉を投げてくれたのが今でも忘れられない。

今だから忘れられないのかもしれない。

正直あの場ではなんと返せば良いかだけ考えていた。

結局何もせず、受験を受けて、なぜか第二志望に通って、大学生となった。

母とも色々あった。

受験が終わった後、「多分落ちたわ」と言った。

そうだろうねと返された。

この先の進路について話し合った。

「あんたは何がしたいの?」と尋ねられた。

ムカついた。心の底から苛立った。

「なんだよ、何がしたいのかだって?何もしたくないよ!なにすりゃいいんだよ!」

涙は噴火したようにあふれだして、心も体も制御できなかった。

感動した時以外で泣くのは本当に久しぶりだった。小学校の低学年の時以来だったかもしれない。

そして初めて本音を言った日でもあったかもしれない。

「本当は小説家になりたかった。曲とかも作りたかった。役者にもなりたかった。でもそれ一本で人生進めるほどの勇気は自分にはない。だから大学という暇な4年間が欲しかったんだ。」

大声で叫んだ。

泣きじゃくってたから何言ったか伝わっていただろうか。

そんなことを恥ずかしげもなく言ったのだ、私は。偉いだろ?

受験に合格していた時も泣いた。

母が先に泣いて、つられて私も泣いたのだ。

そんなこんなでまあ悪くはない大学に通うようになったわけだが、先ほども言った通り、空虚なものであったわけだよ。

高校の時よりも何を勉強させられているのか分からなっかった。

不必要な知識であるのは当然として、高校と違って大学受験という目標がない。しかし単位は取らねばならない。

無であった。

システム的に友達もできにくく、高校時代の友達のような、面白い人材というのも全くいなかった。空虚であった。

バイトに勤しんだ。

嫌な客に嫌なバイト仲間。良い客に良いバイト仲間もいたが、良いことでは悪いことは消せぬ。

何回かバイトを転々とした。

資格も取った。簿記やらなんやら、いくつか取った。

大変だった。

うすうす感ずいた。

このまま死んでいくのだな。

普通に嫌だなぁと思いながら日々を過ごす毎日であった。

ある時、オナニーをしていた。

ネタのシナリオは疲れた会社員と幽霊の話だった。

ふと思った。

「自分の為に何もできていない!」

次の日、私は旅に出た。

致した後、どこに行こうかずっと悩んでいた。

季節は秋であった。

紅葉を見に行こうと決めた。

遠くに行きたかったから県外に出た。

新潟まで行った。

「おお」

目にした赤に思わず声を漏らした。

風景のみの写真を撮った。

SNSに投稿しようと思ったが、なぜか何となく自撮りをしようと思った。

普段なら自分の写真なんて撮りたくもないが人半風景半の良い写真が撮れたのでそれを投稿した。

飯はとにかく米を食った。丼も食ったし、寿司も食った。

安めの宿に止まって、床に就く。

「ああ、心が死んでいたんだな。」

しみじみと、しみじみと。


それから休みにはとにかくいろんなところに行った。

近いところ、遠いところ、きらびやかなところ、何もないところ。

友達を誘って数人で行ったりもした。

正直倍楽しかった。

そんなこんなでもうじきこの人生の夏休みも終わりを迎えようとしている。

集大成に文字にでも認めようかな。

この経験を活かして物語を一つ書いてみることにした。

どんな内容が良いかな。

心をテーマにしたいな。

タイトルは~…

どこかで見たことあるようなタイトルだなぁ。

まあいっか!

死ぬ前に一冊の本を書いてみようと思う。

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