女性街
何故か万千を知っているらしい。
校内でも有名人だし、不思議ではないが、そのおかげで厄介ごとに巻き込まれ、さらに教師に目を付けられるとはついてない。
「そうですわねぇ。だからこそ敬称というものは、無位に等しい。そう思えますわ――それより、わたくしをご存じで?」
「無価値。おべっかと言いたいのかな。流石ね――私が今日ここに来た理由は貴女を…。ミス大郷司、貴女を舞踏会に招待する為よ」
「まぁ、それは嬉しいわ。日取りは何時でして?わたくしも色々と忙しくて。それに、会場も――」
「それは心配ないわ。貴女は今すぐにでも来てくれる筈。私が招待するわ、『女性街』へ」
『女性街』――。女性が女性で居られる場所。
噂ではそこに行けば、女性でも手に入らないものが無いとか。
しかし、誰も場所を知らない所。その存在すら疑わしい場所だった。
噂はよく聞いていた。しかし、あまり良い噂も聞かなかった。
突拍子も無く、その大半は信じられるものではなかった。が、私は一つだけ、それだけは信じてしまった。いや、信じたかっただけかも知れない。それが事実なら、噂でも構わないと。
その話題になると、誰もが必ず口にする噂――。
女性が守られ、平等な世界。そこには、女性に対する法律も権利も在り、政治への参加も許されるという。
それが本当なら信じたい、実在して欲しい――しかし、信じられない。本当に女性街は実在したの?
「『女性街』は実在するわ。大郷司さんも噂位聞いたことが有るでしょう。といっても、噂程悪い所ではないわ」
環は、実際に訪れた事のある様な口ぶりだった。
「女性街だなんて…。その様な所、本当に――一体どの様な方が…」
「主催者は貴女のお父様に色々とお世話になっていてね。どうしても貴女を招待したいらしいわ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。貴女は一体――一体何者なの?女性街は本当に在るの?」
つい我慢出来ずに話に割り込んだが、この女性が女性街に行こうというなら、噂が本当だとしたら――黙って等居られない。
「在るわ、女性街。ちゃんとね――自己紹介が遅れたわね。習慣が無いもので」
っと、言いながら環を窺った。環は面倒くさそうに紹介してくれた。