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おとめの夜あけ  作者: 合川明日
♯1 乙女のおとめ
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戦争せんそうよ――戦争のために、彼女達は勤労動員きんろうどういん兵器へいきつくっていたのよ」


 万千まち反応はんのううすく、何か残念ざんねんそうだった。何を期待きたいしていたのか。


「そう。それはまたお気のどくに」


わかってないなぁ。何でそんなもん造っているか考えろよ――そして、今自分が何をしているか」


「わたくしは、てっきり、優雅ゆうがなお茶会ちゃかいや、舞踏会ぶとうかいひらいているのかと…」


馬鹿ばかっ!貴女きじょの今()っているそれは、戦争の為にやって――私達も、人を殺す為の手伝いをしているのよ!」


「ばっ、馬鹿ですって!?そういう貴女こそ馬鹿ではなくて?そのような事――わたくしにどの様な関係かんけいがございますの?わたくしに如何どうしろと?」


「別に、何もないわ…。ただ、貴女という人間が解ったわ。所詮しょせんただ高慢こうまんちきってことがね」


「なんですって、このじゃじゃ馬!」


 口より手が早い万千は、立ち上がり、私につかかかってきた。


「戦争よ!戦争。解っているの?戦争が起きるかもしれないのよ!」


 相変あいかわらずすごい力でつぶされそうだ。


「そんな事、貴女に言われなくとも――わたくしは…。わたくし達ではどうにも…」


 何時いつももならばされるところであったが、万千のうでからはしだいにちからけ、意気消沈いきしょうちんしていった。


 彼女なりに思うところがあったのだろう。調子ちょうしくるうな…。


 ガラガラガラ――。そんな矢先やさき、彼女はあらわれた。


八乙女やおとめツクス!またですの?貴女という人は――喧嘩けんかなら私の見ているところでおやりなさいと、いつも言っているでしょう!」


 彼女は部屋に入るなり、私と万千がっているのを見ると、とても残念そうにしていた。


 彼女、たまき涼風すずかぜは、私と万千の喧嘩が好きだった。しかも取っ組み合いの喧嘩が。


 私達と言うより喧嘩を見るのが好きなのだろうか、してや女同士(どうし)の取っ組み合いなんて滅多めったに見られないからか。


 彼女がそれを初めて見た時なんて、ほおを赤らめ何とも言えない表情ひょうじょうをしていた。


 よほど気に入ったのだろう、その都度つど観戦かんせんしないと気がまないのだ。


 たまきは万千に負けずおとらず良家りょうけの出だった。


 才色兼備さいしょくけんび級長きゅうちょうつとめる優等生ゆうとうせい


 そこだけを見れば万千以上に『おじょう』そのものであった――。


 しかし実際じっさいは、その真逆まぎゃく。『お嬢』とはほどとおく、彼女をそうさせた原因げんいんともいえるそれは、彼女の家にあった。


 所謂いわゆる、良家の令嬢れいじょうである環。


 殺伐さつばつとした家庭かてい環境かんきょうに時代錯誤(さくご)男尊女卑だんそんじょひ


 私が聞くに、その何倍もきびしいであろう父親――その所為せいか、彼女は家に居たくなかったのだろう、勉学べんがくはげんだり、級長として雑務ざつむ積極的せっきょくてきに取り組み、出来るだけ家に帰らないため口実こうじつにしていた。


 今がまさにそうだろう。


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