照れ
おかげで私と環も二人きりになれた――色々と聞きたいことが有る。聞くなという方がおかしい。しかし、一体何から話せばいいか。
「……」
「何も聞かないの?――いえ、何も聞かないで。答えなら出ているわ」
「万千は一体どうなるの?」
「……。舞踏会に行き、組織の代表と会う――その先は彼女次第。大丈夫。彼女達は大郷司さんに何もしないわ。信じて」
「万千の事なんて心配してないよ。環の事も…。それに、環らしいと思うわ」
環は自己中心的で、大概他人に対し眼中人無しである。
そんな彼女でも、物事に干渉する時がある。たぶんそれは、本当に我慢出来ないよっぽどの時なのだろう。
彼女はむしろ、周囲や家を気にするがあまり、関心を無くしているのだと私は思う。
傍若無人な言動は全て、その反動なのかもしれないと。
しかし、やり方はどうあれ、筋は通っており、思いつきとかではない筈。意味も無く人を傷付けたりしたことは無い。と、信じている。
女性解放戦線にしてもそれは変わらないだろう。きっと彼女の腹の虫を揺り起こし、それだけの何かが組織に、或いはあの女性には有るのだろう。その価値と目的が――。
「何よ、知った風なことを――貴女はまだ私を知らないわ。さぁ、もっと私について聞き尽しなさい」
「それじゃあ…。私が、環を止めようとしたらどうする?消す?」
「フフッ。あの人達なら殺らないでしょうね――でも、私自身『おとめ』にならやりかねないわね…。おとめになら」
「それって女性解放運動の為?環、思いっきり嫌っていたじゃない」
忘れもしない、あの時の事は。珍しく女性に、女性解放運動家に突っ掛っていた環を。
「あんなカビ臭い連中と一緒にしないで。それに私は、組織の一員じゃないわ」
「じゃあ、なんなのさ。私にも黙って、一体何をするつもり?――環。貴女、一体何処へ行こうというの?」
「夢の国。そこに行けば――」
ガララッ――。話を遮る様に戸が開かれ、万千が部屋から出てきた。あの女性も。
「さぁ、行こう。カボチャの馬車を待たせている」
「話は終わったの?」