「待たせたわね」とドヤ顔を決める幼女です。
それにも、関わらず、彼女は失ったであろう複数の臓器を簡易的にとはいえ、自己再生させて「終わったかの……」
向日葵はそっと目を閉じる。
ルリルリ、ごめんなのじゃ、うぬの実力では、お主1人すらまともに守ってやることもできん。
向日葵の諦めた姿はどこか悲しげであった。
鳥の一匹すらいない樹海の中で、うぬは死ぬのかと、また、うぬは相棒を守ることはできなかったの。
せめて、最後まで瑠璃の身体は離さないと手に力をこめた瞬間だった。
「ふっふ~ん♪お待たせ、試験生ちゃん?いいや、試験生ちゃんの相棒ちゃんか~大丈夫♪」
そんな、陽気な掛け声とともに木々が粉砕される音が聞こえる。
何事かと思い、目を開けてみるとそこには、
紅蓮のように燃え滾る、朱い髪をたなびかせた幼女がいた。
「クレア団長……?」
「うん、そだよ~。よろしくね。って、言うか、試験生ちゃんなかなかに大変な怪我をしているね。おお~い、副団長!!」
「はぁ~まったく、クレアは相変わらず馬鹿みたいに移動が速いですね」
ちょっとした愚痴を垂らしながら、団長であるクレアのよこに落ちてくる副団長。
「そういう君もなかなか速いと思うけどな~私は、まぁ、それはいいとして、後ろで酷い傷を負っている試験生ちゃんを治療してあげて、よろ!!私は、アイツを倒してくるね♪」
「まったく、人の意見を聞かないで……」
副団長は後ろへ振り返り、向日葵に抱えられた瀕死状態の瑠璃に近づく。
「副団長どの、瑠璃は大丈夫なのじゃろうか!?」
向日葵は、抱えた瑠璃を落とさないようにしっかりと支えながら、近づいてくる副団長へ声をかける。
それに対して、副団長である静は反応を返す。
「安心してください、私が治療をするので、死体にでもなっていない限りは治せますよ」
「それは、よかったのじゃ」
安堵の息を漏らす向日葵。
「それではさっそく」
懐から取り出した20cm程のナイフを瑠璃に刺す副団長。
「えぇ!!何をしているのじゃ!!」
「落ち着いてください。これは治療です」
「これが治療じゃと!!」
「ええ、そうです。私の相棒である。治流の効果は刺した相手でないと発動することができません」
「そ、そう、なのかの?」
「ええ、そうです。落ち着いてください」
「わ、わかったのじゃ」
「それでは、そのまま山頂の救護テントまで運んでください」
「任せるのじゃ」
「ええ、頼みました」
そういって、その場から走り去る向日葵。
なお、瑠璃の腹部には副団長から刺されたナイフがあるため何ともシュールな絵面である。
「さて、行きましたか。それにしても、彼女は、普通ではありませんね」
副団長である、瑠璃の状態を診て、静は驚いていた。
私たちアルマは、敵であるマティアスの臓器などを取り込むことにより常人よりも卓越した、身体能力や技能を身に着けたりすることができる。もちろん、その中には、自己回復能力も含まれているが、それにしったって、あくまでも、人の回復能力を強化した程度の治癒能力でしかないはず。いた。
これは……面白いですね。
遠くの方で大きな、爆発音がし、煙が上がる。
「これは、あちらも終わったようですね。はぁ~まったく、誰が火を消すと思っているんでしょうかクレアは……」
仕事が増えましたね……と思いながら先ほどの爆発音がした方へと向かう静かであった。