「あ、いた」そんな感想を抱く幼女です。
■!グロ注意報発令!■
■現在公開可能な情報■
├敵の名称:エグリアルマティアス
├略称:マティアス
├形態:個体により様々である。知能が高い順に「人型」「獣型」>「昆虫型」>「異形型」となっている。
├なお、当然ながら知能の高さにも、例外個体も存在する。「不確定個体」と呼ばれている。
└マティアスには、レベル(Level.)が存在し、低い方から順に「0」>「1」>「2」>「3」>「4」>「5」>「Error_00」
「よっ、よっとと……それにしても、あれじゃの~敵さん、おらぬの~ルリルリ~」
直径が30cmほどある、立派な木々の根をトトっと飛び移りながら向日葵は瑠璃に愚痴を垂れる。
それに対して、瑠璃は向日葵の後を続くように木々の根を飛び移りながら。
「そうだね」
先ほどの場所から、北へ15分ほど歩いているが一向に敵の気配を感じない。それどころか、ここに来るまでに一匹の動物すら見ていない。これほどに広い森林なら鹿の一匹や二匹いたっておかしくないだろうに。
「……お!!」
「殺気?」
進んでいる。方向から先ほどまでは感じなかった殺気を感じる。
「やっと、戦えるようじゃのう~」
向日葵はやる気満々といったような、明るい声を出す。
「向日葵静かにして!!こっちの位置がばれたら大変……っ!!」
前方から鞭のようにしなるピンク色の舌がこちらに向かって来た。
「危ないの~まったく、大丈夫かのルリルリ?」
「大丈夫」
飛んできた舌を刀化した向日葵で切り伏せる。
「グギャ~~~~!!」
舌をとばしてきたであろう主が、舌を切られた痛みからか汚い鳴き声をあげる。
「なんじゃ、こやつ、姿を透過させてさせておったのか」
「そうみたいだね」
私たちの目の前15mほど先の空間が不自然に歪み、カメレオンのような形をしたマティアスが現れる。
その身体には、所々ゴツゴツとした人の頭蓋骨のようなものがついており、毒々しい紫色の紋様が身体全体を覆っている。
「それにしても、不思議。あの時、なにもできなかった私が今は普通に戦えているなんて」
本当は、心配していた。実際に、マティアスと戦う状況になって、自分が恐怖に駆られてしまわないかを、でも、それは杞憂だったみたい。私は今、戦えている。
「訓練してきたかいがあるというものじゃの~」
こんなことを考えながら喋っている2人、いや、1人と1振りの刀だが、実際は、敵の舌攻撃を躱し、反撃できるときは随時、反撃をしながら戦っている。
「グギャ!!ギャ!!」
なかなか、当たらない標的に苛立ちを覚えたのか、カメレオン型のマティアスは一度、舌での攻撃を止め、口に何かを溜めるような動作をとる。
「あれ、危なそう」
「そうじゃの」
危険を感じた瑠璃は、カメレオンに向かって踏み込もうとしていた足の力を後ろへ変え、バックステップを行う。その1秒後、瑠璃が先ほどまでいた場所に向かって透明な液体がカメレオンの口から吐かれる。
透明な液体が吐かれた、木の根の部分は白い煙をあげながら溶け出す。
「あれは、酸?」
「どうみても、酸じゃな」
「危ない」
「それは、見ればわかるじゃろ」
「それは、そう」
「でも、隙だらけ」
「じゃの」
瑠璃は刀を両手で握り、再度、酸を吐こうとしているカメレオンに向かって素早く懐に踏み込み、左斬りを行う。
「グギャァーーーーーーァァアァアァアアアア!!」
汚い悲鳴をあげながら、カメレオンは瑠璃によって、切り裂かれた左腹部を再生させようとする。
しかしながら、瑠璃たちがそんな隙を許してくれるわけもなく、カメレオンは首を斬られ紫色の不気味な血をまき散らしながらあっけなく死んだ。
「これで、討伐完了」
「やったの~!!初、マティアス討伐じゃ!!」
「うん」
Level_0のマティアス討伐だけど、それでも、初めて敵を倒すことが出来た。
自分の……いいえ、向日葵と自分の力で。
私は、少しだけ浮かれた。もちろん、警戒を怠っていたわけじゃない。
それでも、戦場で少し油断した。
「ルリ!!避っ……!?」
向日葵がこちらに向かって何か叫んだ瞬間に、私は危険を察知し、その場から後ろへ避けようとした。しかしながら、少し油断していたせいで反応が一瞬、遅れた。
「……ぁ!!」
見覚えのあるピンク色の舌が、わき腹を抉り取っていった。
当然のことながら、内臓を体内にとどめておくための外皮がなくなったわき腹からは、赤い血に交じって、ピンク色をした小腸や薄紫色をした大腸が溢れ出てくる。
生暖かい感触が私の左手に伝わってくる。
「ルリ……ルリ?大丈夫かの?」
そんな、泣きそうな顔をしないでよ。
向日葵。
大丈夫だからと伝えようと声を出したが。
「d……ぁ……ブ」
上手く声が出なかった。
「あぁ……ルリ」
大丈夫。だから……いけない、肝臓も少しずつ下に落ちてきた。
出血は何とか止めれたけど、これはダメかも……あれ、目の前が霞んで……
「……うぁがぁ!!」
気を失ってなんていられない、いま、この状況で気を失ったら本当に死ぬ。
だから、私は意識を維持するために、左手で押さえていた内臓類を強く握り、痛みで意識を保つ。
でも、これは、あまり持たない。
正直言って、今の状態だと、まともに刀も振れない。
それに、視界が霞んでいるせいであまり見えないけど、さっき倒したはずのカメレオンの遺体から、何か手のようなものが体内から這い出ようとしているみたい。
「ルエルエ、逃げるのじゃ」
向日葵は瀕死状態の瑠璃を抱え、退却することを選択した。




