幼女はだれもいないのです
私が受け付けで渡された紙には、こう書かれていた。
『富士の森林ー8番』
その名前の通り、森林。
しかも、かつては自殺の名所とまで言われた場所。
そんな場所が今回の私の試験場所。
「ここかな……」
山肌を駆け下り、木々が不思議と大量にそびえ立つ森林へと私は到着した。
辺りは、木々で覆われており、その木々に纏わりつくように苔や、ツタが大量に付着している。
不思議と日の光があまり差し込んでいないため、より不気味さが増している。
副団長の話では、指定の番号が書かれた場所にいる『エグリマティアス』を討伐してもらうという話だったけど。
「辺りに敵はいなそう……」
気配を探ってみても、少なくとも、私がいる場所の近くには敵の気配を感じない。
「うん、困った」
首をかしげていると、脳内に直接響き渡る。
{ねぇ~、瑠璃。そろそろ鞘から私を抜いてくれないかな?退屈なんだけど}
「……」
{聞いてる?ルリルリ!!}
「うん」
{聞こえてるなら、速く私を抜いてくれよ~~}
私は、腰裏に帯刀していた小刀を抜き、地面に刺す。
地面に刺された、小刀が淡く光り出し、光の粒子が漂い集まり、人の形をとっていく。
淡い光が晴れるとそこには、身長130cm、紅葉色もみじいろの瞳と、髪。
紅葉柄の着物を着た幼女がそこにはいた。
いるというよりは、現れたといったほうが正しいだろう。
しかしながら、小刀が人の形になるなんて言う非常識的なことが本当に起こりえるのか、答えは、起こりえる可能性を可能にした。ということが、解である。
何を言っているのかわからないだろが、そういうものらしい。
「ふぅ~やっと人型になれた。うぅっ~ん、やっぱり人型のほうが動きやすいね~~」
刀で、幼女である彼女は、可愛らしく背伸びをしながら。
瑠璃に向けて話しかける。
「そう、それは良かった」
「もう、相変わらず、ルリルリは反応が薄いのう~。もっとこう、明るく元気にういうい出来んのかね~~」
「そう」
「うぅ~、相変わらずじゃ」
「あなたもね」
「そうかね~」
彼女は、私の相棒?というよりも、相刀の幼刀ようとう向日葵ひまわり。
種類は『小刀』。私よりも、背が小さいのに、胸が大きい。
彼女とは、3年位の付き合いになる。
いつも、こんな感じで、あまり人と話さない私と違って、とても、人とのコミュニケーションが上手い。
「それにしてもあれじゃの、指定した場所に来たにもかかわらず、肝心の討伐対象がいないなどという面白い状況になっているルリルリを見てると笑えてくるの~」
「……うるさい」
「ふ、ふ、ふ、ふふ……なんじゃ、気にしておるのかルリルリ。可愛らしいの~」
「……」
そんな風にふざけた会話をしていたら……