インターミッション 本作の世界観130 ー 短剣7 ー
画像史料
前回は代表的な各種ダガーを見てきました。もっとも普及したのは前腕長を基調にした物ですが、同じロンデル式でもずいぶんバリエーションがあります。
ロンデル各種
どれもクリップ部は個人の体格にもよりますが8cm超くらい。刃長はその三倍見当で刃先が肘に達するのが最も普及タイプですが。決して一様ではありません。右端に至っては貝殻こじ開ける漁具ですか! ってくらい短いですが・・
『キリストの受難』騎士団 The military order of Our Saviour's Passionの武装
La sustance de la Passion de Jhesus Crist
©オックスフォード大ボドリアン図書館蔵より部分(既出の拡大)
短いですね。
こういう短さが便利だと思える状況で使われたんでしょう。想像難しいですが。
この頃のダガーは一次大戦のトレンチナイフと一脈通じる物がありますが、決定的な違いは図のようにガントレット着用が大前提だったため、ナックルガードが発達しなかった点。ロンデル型の鍔と柄頭が円盤状なのは、ガントレットで握り拳を作った時に、鉄板で覆われていない部分が親指側と小指側で円形に露出しているからだと言われます。
ダガーは一般人の護身用武器にまで普及しますが『三ツ子の魂』なんとやらです。武人が特殊な場合に使う特殊武器という性格が最後まで付き纏います。
人間と一緒ですね。
一次大戦のトレンチナイフといえば、殴り合い用のナックルと一体化した1918年型が有名ですが、手甲をつかわない一般人にダガーが普及しても、こういう発想は生まれない。まぁ、一般社会人に塹壕で命賭けて格闘する等なニーズがあったら怖いが。
まぁ、一般人がお侍の殺人専用特殊武器を持つようになった方が、変と言えば変ですが。
だって、そうでしょう。飯食うのにだって使う万能生活用小刀が護身用としても普及うしちゃう方が自然だし平和でしょう。
なんでダガーみたいな殺人武器が広まったんでしょう? 物騒な世界だったんでしょうか。
ワット・タイラーの殺害
Chroniques sire JEHAN FROISSART
フランス国立図書館蔵
反乱指導者ワット・タイラーは1381年リチャード二世と講和のための会見の際に殺害された。
十五世紀の図絵なので風俗も状況も史実と合わない。
タイラーさん、かなり長いロンデルで脳天刺されています。
先日のラインマル大膳頭もですが、ダガーで脳天直撃って怖すぎます。
かなり長いロンデル・ダガーをアイスピック握りの逆手で持って、柄頭の円盤に左掌を添えて脳天穿孔しようとしてる人がロンドン市長W・ウォルワースで、後ろで叫んでるおっちゃんが国王リチャード二世ですかね。
このように、ロンデル・ダガーは本来、鎧武者を組み伏せてベキッとトドメ刺すアサシネーション武器です。




