インターミッション 本作の世界観37 ー 馬ー
「不自由」の章で、諸侯Vorsten、自由領主vrie herrin、参審自由人schepphinbare luiteの人命金Wergeltを十八プントと紹介しました。
プントはザクセン語の綴りでPhuntで、何のことはない、英国通貨ポンドと同じことです。
1Phunt=20Schillinge=240phenningeです。
1ポンド=20シリング=240ペニーで、全く同じですね。このLSD比率、羅馬帝国の遺制です。
自由人(Aクラス)の人の命が18ポンドとお安くなっておりますのも古い時代の名残りでございまして、馬18頭の価格に由来します。ちなみに、お話の中で出てくる十両が1プントに当たります。
ちなみに「物価」の章で紹介しました馬の価格は、13世紀の最高級軍馬が80ポンド、高級乗用馬10ポンド、荷馬車用馬10〜20シリング。馬の価格は十二世紀を過ぎると大暴騰しているようです。戦術の変化で、騎馬軍団の重要性が大きくクローズアップされたことと関係があるでしょう。
お話の中で、賭場で大勝ちして成金になったエーリヒ・チンクが百両超の馬を買いますが、高級乗用馬です。しかし彼が女房質に入れると五頭買えます。千両の馬といえば超最高級です。男爵が年収の半分を注ぎ込むくらいの感じですね。前掲の“Standards of Living in the Later Middle Ages” , C. Dyer(著), Cambridge University Press,1989 での比較です。
このお話では1両(純金含有量約14グラム)を、現在は金価格がグラム7千円台と高過ぎますので、グラム3〜4千円で換算しますと、上手い具合に千両の白馬ちゃんがロールスで五百両のエマさんがフェラーリな感じ。ま、喩え話ですが。
関所のお兄さんは、中古の大衆車に乗って出かけたチンクが、その評価価格の十倍は下るまいという新車のスポーツカーに乗って帰って来たので驚いたのです。その中古大衆車を格安(15万円程度?)で有り金はたいて衝動買いしたファッロくん、今後の活動にどう生かして行くでしょうか?
彼が見て目の保養になったという黒騎士の名馬磨墨は如何程のものでしょう?