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インターミッション 本作の世界観30 ー 相続ー

 本作はお家騒動を主軸にした物語ですので、相続法を明らかにしておく必要があり、概説します。基本的に、史料Sachsenspiegelに基づく13世紀のリアル中世に準拠します。


 被相続人(男性)が死亡した時点で相続が開始しますが、実際の遺産分割は被相続人の配偶者が主催する「三十日忌」終了後になります。ただし故人に扈従する下僕への給金は相続人名義で直ちに支払うものとされ、同時に転職先が探しやすいよう三十日忌までは雇用することが推奨されています。まあ法で定められているということは、ブラックな雇い主が多かったと逆に解釈すべきなのでしょうが。


 故人がまだ若くて親が生存している場合の話を割愛すると、相続順位は被相続人の子息、子息なき場合は娘。被相続人の子息が先に死去し孫息子が有る場合は現代のような代襲相続でなく、孫息子と故人の兄弟が同順位です。同じ二親等という扱いでしょうか。故人に兄弟もない場合は故人の姉妹が相続人になります。故人と両親のいずれか一方を異にする兄弟姉妹の相続順位が一段階下になるのは後世と同じですね。これより遠い血族しかいない場合は、もう男女に差がありません。

 故人の配偶者(妻)が出てきませんね。夫が生前に妻の持参金に手をつけていた場合の補償くらいしか、目立った記述がありません。実際は被相続人の妻である時も、相続人である息子の母である時も、財産管理人として資産を占有しているのが標準ケースです。亭主元気で留守がいい。

 配偶者(妻)の出生身分が上位で婚姻の際に実家から財産分与を受けているケースは、結婚の章で「劣等身分継承の原則」に述べたとおり、一期分(妻の生存時限定)の財産であって子には相続権が無く、妻の死後は実家に返納されます。


 物語に沿って略述すると、P家の先代伯爵は長年の抗争相手で有るG伯爵家と平和共存の道を選び、G家の長女を妻に迎えます。しかし抗争継続派の旗頭である実弟が伯爵夫人を暗殺したため、実弟とその一族はG家の血の報復を受けて徹底的に根絶やしになります。これが半世紀前の内戦です。伯爵領南部の領主に有力者がいないのは、先代P伯爵がこのとき根切り根絶やしで後継者の絶えた領地を新興の騎士たちに分け与えたからです。

 先代P伯爵は後妻を迎えて、儲けた子息が現P伯爵。そして先妻の子の生存が後年明らかになりましたが、彼は相続放棄して僧籍に入りました。のちの修道騎士団長、A師です。この時点で長男を儲けていた現P伯爵(当時は伯爵世子)は、異母兄が僧籍に入る前に儲けていた娘を養女に迎えて第二順位の相続権を認めることで和解したのでした。これがU.Ma姫です。

 伯爵の次女、すなはち現P伯爵の妹はG伯爵家に嫁ぎ、G子爵を産みました。G家は岳父のP伯爵を立てて家格を伯爵から子爵に落とし、臣従したのです。順風満帆かと思われた伯爵家ですが、ここで大事件が起こります。先代P伯爵(当時は伯爵家当主)が行状不行届で内孫、つまり現P伯爵の長男を廃嫡して、外孫のG子爵を次々代の後継者に指名しようとしたのです。そしてその矢先に謎の急死を遂げました。内孫派による暗殺と囁かれ、お家騒動の勃発です。

 この時の内紛で譜代筆頭のT男爵家が野に下ったのをはじめ、嶺南に激震が走ります。

 現P伯爵が当主となり平穏を取り戻したかに見えた嶺南地方ですが、水面下では騒動が深刻化していました。P伯爵夫人とU.Ma姫の母(ともに故人)は、それぞれG元・伯爵家の双子の娘だったのです。夫婦は相互に法定後見人となります。先代の外孫G子爵とU.Ma姫の成婚でG家閥は一枚岩となり、エリツェ市に根を張る親G家派のM男爵家の影響力もあって、じわじわ勢力を伸ばした外孫派が、ついに圧倒的優勢に立ったのです。おまけにU.Ma姫の後見人V師は途轍もない大物でした。

 そして、内孫伯爵世子には驚くべき出生の秘密が・・(いまここ)



 明日更新の本編をお楽しみに。



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