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インターミッション 本作の世界観27 ー 参審人ー

 古代ゲルマンの部族社会は戦士階級と隷属民(被征服者など)からなり、それ以上の細分化はだいぶ後世になってからと思われます。ですから裁判も、東洋的な専制君主のお裁きが上から下るのではなく、戦士仲間が色々と調停案を出し、それでも当事者が納得しないなら「決闘でも何でも勝手にやれ」というスタイルが後々まで残った模様です。

 龍やエルフが登場するファンタジーにゲルマン部族社会がどうだこうだ言っても詮無いですが、中途半端なリアリティ演出とご笑覧下さい。


 部族社会の裁判は村の戦士階級が総出であーだこーだ議論した末、議長役が「んじゃ、これで結審。よろしーですな?」で終わっていた模様。それが社会規模が大きくなって来ると、皆で合議していたんでは船が山を登ります。それで全員参加型から裁判員制度っぽいものに移行します。同輩の中から「最も分別があり、賢く、かつ最も名誉ある人物」七人を選ぶというスタイルです。この鉤括弧内はアイケル荘園法という後世のものですが、昔も似たようなものでしょう。

 もちろん、裕福であるのは大前提です。標準的自作農が0.5〜1フーフェ(1フーフェ=10〜15ヘクタール)を隷属民に耕作させる富農であったとき、3〜30フーフェを世襲的に所有する富裕層が選ばれました。ローマ人の制度にちなみ「スカビニ」と呼ばれ、ゲルマン訛りで「シェッフェン」。これが参審人と訳されています。何で上限があるかというと、それ以上の大土地所有者だったら、もう領主さまだからですね。

 参審人は終生職で、参審人に選ばれる資格のある血統が「参審自由人」という身分として固定化しました。祖父祖母四人が「参審自由人」身分であることが条件です。自由人フライエンの上層から「自由領主フライヘル」が分化し、続いて「参審自由人シェッフェンバルフライエン」が分化したわけです。中世封建社会の身分制度が国王を頂点とする盾序列ヘールシルトとして完成すると、彼らは第五の盾として騎士を輩出する階層の中心を担いました。封建社会には、彼らの家臣の、そのまた家臣までが存在します。ここまでが領地を持つ身分です。

 参審人は、先祖伝来の世襲地アイゲン+主君から賜った封地レーンという大きな領地を持つ身分であり、小領主と呼んでいいでしょう。彼らの家臣は3フーフェ未満の世襲地+参審人から封建された封地を持つ身分です。どこまでが騎士でありうるかは明らかではありませんが、少しでも世襲の領地を持つことは最低条件です。ただし、それが力づくで他人に占有されている貧乏騎士も存在するわけですが。


 作中のクリスちゃんはフィエスコ本家が自由領主、その家臣である親類衆が参審自由人の騎士で、本家の最後の当主(故人)が伯父さんあるいは大伯父さんに当たります。おそらく領地は伯爵の家臣の誰かの実効支配地に組み入れられていることでしょう。身分的には参審自由人(第五シルト)のようです。従姉妹のエステルちゃんは男爵家に輿入れしていますので、本家筋の自由領主身分(第四シルト)でしょう。果たしてこのまま町人になってしまうのでしょうか? 縁続きのマッサ男爵家が勃興してきていますね。大逆転もあり得ます。


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