辞めていく奴についていく困った面々
迷宮における安全性の確保は至上命題で必須事項である。
怪物の巣窟だから、常に敵の脅威にさらされる。
そんな場所で安全を確保するには、可能な限り多くの人員を動員する事になる。
迫る怪物を可能な限り倒す為だ。
そして、頭数が多ければ一人当たりの負担も減る。
その分稼ぎも減るが、そんな事を言っている場合ではない。
死んだら稼ぎがどれほどあっても無意味になるのだから。
そして、迷宮は奥に行くほどこの危険が高くなる。
そこに到達出来る者が減るからだ。
まともな探索者ほどこれを切実に感じている。
出来るだけ多くの探索者が迷宮で活動してくれないものかと。
そうすれば自分自身の死ぬ可能性が減るからだ。
実際、探索者が多くうろついてる入り口付近になるほど死亡率は減っている。
その分稼ぎも減るが、それでも食って行くには問題ないくらいの収入は確保出来る。
現状では、狩り場の争奪戦というような問題は杞憂でしかない。
頭領としては、トオルにそういった役割を期待していた。
最前線で戦えなくても、そこについてこれただけの力はある。
単純に比較するならば、現役の探索者の中でも上位の能力はもっている。
その力で、中盤地帯の安定に貢献してもらいたかった。
そうすれば、最深部に出向く旅団の安全も確保出来る。
何よりありがたいのは、途中の無駄な戦闘を省く事が出来る事だった。
最深部に向かう者達にとって、それは無駄な戦闘でしかない。
「そうしたいのはやまやまですが」
「ダメか」
「ダメというより、無理です。
仲間がいません」
がっかりした顔の頭領に、トオルは事実を語っていく。
確かにトオルはかなりの腕をもつ探索者だ。
しかし、単独でそれなりの奥地まで出向けるほど強くは無い。
活動するには同等くらいの能力を持つ同行者が必要になる。
そんな人間、そうそういるものではない。
なので、やる気があっても実現は不可能であった。
しかし。
「それは大丈夫だろ」
頭領はあっさりと否定する。
「なんでです?」
「そのうち分かる」
頭領は肩をすくめた。
「うちとしては痛い事になるがな」
「はあ……」
要領を得ない発言に首をかしげる。
しかしそれも数時間もしないうちに理解する事となった。
「なんでお前らまで辞めるんだ!」
そう叫ぶトオルの前には見知った連中が数人。
いずれも同じ旅団だった者達だ。
だいたいがトオルと同期、あるいはすぐ近くの後輩ばかりである。
そんな彼らは、
「だってねえ」
「山川先輩が辞めるって事だし」
「じゃあ、ここにいる理由もないなって」
「おいおい……」
呆れるしかない。
「最前線にいける旅団だぞ。
そこを辞める理由になるかよ」
「それが、なっちゃうんですよねー」
「トオルみたいな面白い奴がいないとな」
「迷宮に潤いがない」
「なんだそれは!」
自分の扱いにいささか問題を感じた。
大事にされてるというよりそれは、
「俺はオモチャか、マスコットか」
とおもえたからだ。
「もちろん」
「当たり前」
「何を今更」
返事は辛辣で容赦のないものだった。
それでもそれなりの人数とかなりの実力者が揃ってる。
旅団の中でもかなりのやり手であった。
迷宮の奥地で最前線をはるような者達である。
トオルよりも腕は一段も二段も上手だ。
そんな奴らがトオルについていこうとしている。
「何考えてんだ」
トオルがそういうのも無理はないだろう。
しかし、彼らにしてもそれなりの理由はある。
「こっちに残ってもいいんだろうけどな」
「別に奥に行くのが目的でじゃないし」
口々に彼らは理由を口にしていく。
「稼ぎだって、もう十分だし」
「寝てても食っていけるくらいにはあるからな」
実際、彼らが迷宮に潜る理由はほとんどなくなってる。
あと、ここで
☆☆☆☆☆を★★★★★に
とか書けばいいのか?
この手のお約束ってのがよくわからんが