追放されてからの事を相談
「それで、これからだが────」
「まあ、ぼちぼちやっていきます」
みなまで言わさず、トオルは軽く今後への展望を口にした。
「浅い階層なら俺でもどうにかなるでしょうし」
「まあ、そうだな。
お前の実力なら問題なくやっていける」
その言葉通り、トオルも無能というわけではない。
まがりなりにも現在、最も深くまで迷宮に潜り込んでる旅団の一員である。
他の団員に比べれば劣るとはいっても、そんじょそこらの探索者に比べれば優秀な部類だ。
辞めても引く手あまたであろう。
たとえ勧誘がなくても、一人で浅い階層を巡るくらいは出来る。
食いっぱぐれる事は無い。
だから、そこまで悲観はしてなかった。
「それに、先に辞めた人たちもいるし」
「まあな」
それも楽観の理由だった。
この旅団において辞職を勧告されたのはトオルが始めてではない。
これまでに何人もの人間が解雇を言い渡されている。
だが、それをそのまま放置できるほど頭領は薄情な人間では無かった。
どうしても辞めさせねばならない事情はあったが、そんな者達にもそれなりの対応はしている。
その一つが、離れていった団員達への補助である。
能力が足りず、やむなく解雇した団員達。
そんな彼らが一人でやっていけるように、頭領は動いていた。
他の旅団への推挙や、新たな旅団を組むための手助け。
場合によっては、辞めさせた団員に現役の者達を何人かつけて助ける事もある。
いずれも辞めさせた団員が単独でやっていけるまでの短い期間ではあるが。
それでも、団員が路頭に迷う事がないように気を遣っていた。
そんなものだから、この探索者旅団には下部組織と言えるものがいくつもある。
それらは迷宮の浅いところからそれなりに深いところまで、様々なところで活動している。
「そういう所に潜り込もうと思います」
トオルとしては、それをまずは考えていた。
元々所属が同じ者達である。
見知らぬ他人というわけではない。
また、そういう所も自分たちより奥地に出向いた人間が入ってくるというなら、それなりに喜んで迎えてくれる。
たいていが、能力の高い者が参加してくる事になるからだ。
よほど性格や人格に問題がないかぎり、拒否する理由がない。
頭領もそういうところなら話をつけやすい。
「なら、推薦状でも書いておこうか?」
「お願いします」
これで辞職は確定した。
新たな転職先(というか配属先)も同時に。
「一本立ちは考えてないのか?」
一応、頭領はそんな事も聞いてくる。
完全に独立して、別の旅団を作るという事だ。
「それなら、人が集まるまでうちの人間を貸すが」
「いえ、さすがにそれは。
俺にはそんな才能ありません」
分をわきまえた発言をする。
謙遜でも何でもなく、本当にそう思っている。
「迷宮で人を率いる自信はないですよ」
「そうか、残念だな」
本当に残念そうに頭領はしょげかえる。
「頭領こそいいんですか?
競争相手が増えるんですよ」
「そりゃそうなんだがな」
言いながら頭領は苦笑する。
「狩り場争いにならないなら問題は無いさ。
今まで独立した連中とだって、騒動は起こってないしな」
嘘では無い。
迷宮は広く、いくつかの探索者旅団が展開してもそれで競争状態になるような事はほとんどない。
効率よく怪物を狩れる狩り場のとりあいもない。
「むしろ、もっと旅団が増えてもらわないと困る。
俺たちの負担がそれだけ大きくなるからな」
現実としてはそちらの方が問題だった。
あと、ここで
☆☆☆☆☆を★★★★★に
とか書けばいいのか?
この手のお約束ってのがよくわからんが