好奇心旺盛なのは自重すべき
ヨシュア達が地上で戦闘が始まっていとき、和澄とミナは落ちてしまった穴の奥を進んで、大きな神殿のような場所に辿り着き、その入り口で休息をとっていた。
「ごめんなミナ。ずっと肩借りっ放しで疲れてないか?」
「ううん全然平気!カズくんこそ今のうちに身体休ませといてね」
ミナの気遣いが嬉しい。
俺たちは祐樹によってやられたであろう爆発によって学校の地下まで落とされてしまった。
奥に進むと中世ヨーロッパにありそうな大きな神殿があった。
地下なのに建物があるのはどういうことだ?
「しかしまさか学校の地下にこんなものがあるなんてな」
「そうだね。そもそも地下に建物を建てる意味ってなにかな?まさか昔人々は地下で暮らしてたとか?」
ミナも俺と同じく地下に建物があることに疑問を抱いていた。
俺たちの知る歴史で、地下で人々が暮らしていたというものは全くない。何かしらの理由で消失した可能性はあるが。
だがもっと高い可能性がある。
「ここは、この学園は何かがあった場所を埋め立てて作ったんじゃないか?」
「確かにその可能性はあるかもしれないけど、そうだとしたらわざわざ建物を残した理由がわからないね」
そうだ。強度的に全部埋め立てたほうがいいに決まってる。何かしらの理由で施設を残した可能性がある。大切だから地下に残すくらいなら記念物として残して、埋め立て地にはしないだろう。
謎めいた土地に和澄の好奇心がそそられる。
「なぁミナ、相談があるんだけどさ」
「わかってる。この中探検してみたいんだよね?」
「ミナの能力は俺の思考まで解析するのか!?」
「わたしの<解析>は生物には効かないでーす。そんなニヤついた顔してればわかるよ!何年幼馴染してると思ってるの?」
俺は小さい時から、ミナを連れて色々なところを探検していた。徘徊する幽霊のいる廃病院。夜な夜なピアノの音が聞こえる音楽室。一年に一度だけ現れるという食人村。色々回ったがどれも都市伝説止まりで実際は勘違いなものも多かった。
「さすがに付き合い長いだけあるな。じゃあ早速行ってみよー!」
「一応未知の領域なんだからね。あ、もう。ほんと昔から好奇心旺盛なんだから」
ミナはそう言ってもいつも着いてきてくれる。
俺とミナは神殿に足を踏み入れた。
◇◆◇◆◇
俺はがっかりしていた。
地下にある未知の場所だからなにかしらが住んでいた跡や歴史的産物があると思っていた。
結果神殿の中にはでかい広間があるだけで、他のものがなに1つなかった。
「さすがにこの広間だけってのは残念すぎる!」
「ここが使われてた痕跡があればここが、どういう経緯で作られたかわかるのにね」
なぜここに神殿があるのか、それくらいは知りたかった。
だがその痕跡が無い!無いものは無いんだ。
仕方ないがそろそろ上では兄さんたちが祐樹たちを捕縛していることだろう。兄さんが祐樹たちに遅れをとるとは思えない。
俺はミナに地上への帰還を提案する。
「ミナ。結局何もなかったしそろそろ地上に戻ろうか」
「そうだね。いつまでも戻らなかったら流石にヨシュ兄やカナンちゃんが心配するだろうしね」
「そうねぇ。いつまでもこんなところにいないで地上に戻ったほうがいいわね」
ーーー!?
俺とミナの横から、金髪の髪の長い女性が言葉を口にした。
いつの間に俺たちの横に来た!?
「くそ!全く気づかなかった!ミナ、俺の後ろに隠れて」
「あら<未来視>なんて懐かしいわね」
バカな!?俺はこの女とは初対面だ。俺が魔眼所持者ということ自体バレたことなんて一度もなかった!
まずいまずいまずい!何をしたかはわからないが、<未来視>の存在がバレた。もしこの女が、能力を使っても躱すことのできない物量攻撃ができたらもう詰みだ。
「ミナ!さっき瓦礫を塞いだのと同じあれをやる!少し離れててくれ」
「・・・わかった!」
ミナは少し考えて了承してくれた。初対面のしかも女性に先制攻撃を仕掛けるといったんだ。戸惑うのもわかる。
「あなたに恨みはないけどここは凍っていてくれ!」
そして俺は女性を完璧に凍らせた。
俺は体中のエネルギーを使い果たし、座り込んだ。
しかしパキパキ音がなっている。
「うそ・・・だろ・・・」
―――パリーン!
完璧に凍らせた感触はあった!そのはずなのに女性は氷を一瞬で砕いて出てきた。
あぁ、これは圧倒的強者だ。今の俺が逆立ちしてもまるで歯が立たない相手だ。
・・・ミナ、ごめん。俺が殺されたら次は戦闘力の全くないミナが狙われる。
そう思ってたらミナが俺に駆け寄ってきて、女性に懇願した。
「カズくんを殺さないで!何も聞かずに先に攻撃しといて虫がいいのかもしれないけど、ごめんなさい!彼はわたしにとってかけがえのない人なんです」
「ミナ・・・」
そうだ。ミナのいう通り彼女は話しかけてきただけで攻撃なんてしてこなかった。ただ未知の場所で急に横に現れて、ミナを守ろうと精一杯だったから相対してしまったが敵ではないのかもしれない。
俺もミナに習い謝罪する。
「申し訳ない。先に仕掛けたのは俺だ。俺は殺されても文句は言えないが、せめてこの子だけでも見逃してもらえたら助かる」
「カズくん!?」
俺とミナをみて女性は言葉を言い放つ。
「ふふふ。急に攻撃を仕掛けられたのは驚いたけれど、お互いにかばい合う姿にはもっと驚いたわ。安心して。わたしは最初も今も、あなたたちに何もする気はないから」
とりあえずは許してもらえたのか?俺とミナは安堵する。女性は続けて話す。
「わたしが急に現れてそのまま話しに入ろうとしたのも悪かったわ。そうねぇ、まずは自己紹介から。わたしはイヴ。この神殿に住んでいるわ。そして元地獄の管理者、閻魔よ」
最後の一言に、俺とミナを口をあんぐり開けていた。
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