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おしゃま少女ヒゲグリモー  作者: オジョ
第5話「護符演舞」
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ツバメside その1

10月最初の土曜日。


枕元で震え出したスマホに手を伸ばし、ツバメはアラームを止めた。

「うう」

小さく呻いてから、モゾモゾと布団から抜けベッドに腰掛ける。


午前7時。

もう支度を始めなくてはならない時間だが、頭が重くて立ち上がることができない。

しばらくの間パジャマ姿でぼんやりしていると、ツバメは再びまどろみ始めた。

カーテンから漏れる暖かい光の中、垂らした髪がうつらうつらと揺れる。

そうして、座ったまま二度寝しそうになった。


そんなときである。

ゴトン、と窓の外で音がした。

ツバメはカーテンに遮られた窓へと、寝ぼけまなこを向ける。

カラスか何かが屋根の上にやってきたのだろうか、とツバメは思った。

彼女の部屋は一戸建ての2階にあるのだ。

だが、それにしては大きな音だった。


するとカーテンの向こう、今度は窓のところでカチャリと鳴った。

鍵が動いた音である。

恐ろしく嫌な予感に襲われ、ツバメの目が完全に冴えた。

慌てて布団を引き寄せ、息を詰める。

同時に、窓が外からゆっくりと開けられた。

「誰?」

誰何したツバメに対し、

「おはようございます」

押し殺した声で言いながらカーテンを持ち上げたのは、日向陽子だった。

「時刻は午前7時、ツバメちゃんはまだ寝ています。イヒヒヒ」

寝起きドッキリの口調だが、完全にツバメと目が合っている。

「起きてますよ。なんですか、こんな時間に」

「お前んち、すごい豪邸だな」

質問には一切答えず、陽子は部屋の中を見回しながら言った。

「うーわ。部屋も広いし乙女チック」

ウロウロと室内を歩き回り、メトロノームの振り子を乱暴に突く。


休日の朝から最悪の客がやってきた。

ツバメの頰が引きつる。

しかも、

「その格好でここまで来たんですか?」

何故か陽子は、ヒゲシャイニーに変身していた。

たてがみのように繋がった髪とヒゲに、真っ赤なマント、黄金に輝く王冠。

ヒゲグリモー第2の戦士の姿である。

「悪を許さぬ正義の魔法少女、ヒゲシャイニー参上!」

陽子はいきなり大声を上げ、グローブに収まった右手を突き上げた。

「家族がいるんですから騒がないでください!」

ヒゲグリモーとしての目立った行動はするなとウィスカーから言われている筈だが、その姿勢が微塵も見られない。

それに土足である。

ツバメの眉間のシワは、深くなる一方だった。


「ていうか、日向さん、窓の鍵かかってましたよね。どうやって開けたんですか?」

ツバメが尋ねると、陽子は得意げに右腕を前に出してみせた。肘から上が白く光り始める。

「フフン。これぞ我が能力、シャイニーピッキングだ」

人差し指をクイクイと曲げながら、陽子は言った。

「あ...、悪用しないで下さい。あと正式な技みたいな言い方もやめて下さい」

合点のいったツバメは、キレの悪いツッコミを放った。


ヒゲグリモーとしての陽子の能力は、「自らの身体に光の性質を加える」というものである。

その一例として、彼女は透明な物質を通り抜けることができる。

さっきの芸当は、陽子が窓ガラスに右腕を潜らせ、内側の鍵を開けた、ということなのだろう。

悪を許さぬ者のすることではない。


「いや、最初は使い道のねえ地味な魔法だと思ったんだけどさあ。考えたら結構色々できるんだよ」

陽子は自慢げに、自分のこめかみを突いた。

「宝石屋とかのショーウィンドウがあるだろ?あんなのいくらでも手を突っ込めるんだよ。すげえよな」

ツバメは首を振りつつ言う。

「駄目ですよ、そんなことしたら......、いや待って下さい。日向さんはガラスをすり抜けられても、肝心の宝石の方を取り出すことができません」

しばらく黙った後、陽子は「あ、そうか...」と小さくつぶやいた。

使い道を考えたという割には浅はかである。

「じゃあもう、ショーウィンドウ叩き壊したほうが早いな」

「魔法の要素ゼロの犯罪になりましたけど」

陽子は笑った。

「あはははは。違法少女だ」

全然面白くないと思いつつ、ツバメは天井を見上げて言った。

「せいぜいその能力でできるとすれば、UFOキャッチャーのガラスに手を通り抜けさせて、景品を取り出し口に落とす、とかそのくらいですかね」

つまらないことしかできないという例をツバメは挙げたつもりだったが、陽子の目は輝いた。

「天才かよ!なるほど、その手があったか!」

「いえ、だからヒゲをそういう風に使うのは......」


「ツバメ、余計なことを教えないで欲しいモニャ。陽子は多分実行するニャ」

窓からウィスカーが入ってきた。

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