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おしゃま少女ヒゲグリモー  作者: オジョ
第3話「サンシャイン陽子のマーチ」前編
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その3


日向陽子、14歳。

彼女は問題児である。

体育館の屋根に穴が空いていた、真夜中のプールで誰かが泳いでいた、屋上で沢山の犬が飼育されていた、校内の時計が全て4時44分で止まっていた、体育祭の日が雷雨だった、等々。

学校で事件が起これば、まず疑われるのが陽子だ。

そして大抵の場合、彼女の仕業だった。


どんなに教師から怒られようが、陽子はケロリとしていた。

やり終えた悪戯になど興味がないからだ。

まるで台風の目である。

後始末に追われるのはいつも周りの大人達だった。

しかし、ここまでならまだ良い。

教師陣も、中学校に1人だけ無分別な小学生が混じっていると思えば、対処のしようもある。


問題なのは、陽子の暴力性だった。

彼女は喧嘩が大好きである。

その相手はもっぱら年上の男子で、標的を見つけては、何かとインネンをつけ殴りつけた。

陽子は小柄で細身だが、瞬発力と敏捷性にかけては誰にも負けない自信があった。

相手の攻撃を避けながら自分の拳を繰り出せば誰にでも勝てる。

陽子はさも簡単そうに言い、そして実演してみせた。

負けた相手も、まさか一回りも背の低い女子に泣かされたとは言えず、かといって噂にならないわけもない。

当然、教師達の耳にも入るのだが、被害届けが出ていないので叱ることができない。

結果、今に至っても陽子は野放し状態となっている。


以上が、加代が語る日向陽子の説明である。

スカートを履いたゴリラじゃないか、とツバメは思った。

そして、閃いた。


彼女を誘ってみよう。


✳︎


このところ、ウィスカーの勧誘が非常にしつこい。

ツバメに正式なヒゲグリモーとなって欲しいというものである。

最近ではツバメの家にまで、押し掛けてくるようになっていた。

毎晩、勝手に部屋の窓から入ってきては、君には才能があるだの、共に戦って欲しいだのと、とにかくうるさい。

ツバメが断っても断ってもめげずにやってくる。


遡ること一週間前、ツバメは不本意にも自らの意志で、魔法の付けヒゲを使用することになった。

音を操る戦士、ヒゲエンビーに変身し、強盗犯を捕まえるためだ。

結果、ツバメは強盗の家を探し出すことに見事成功したのだが、それがまずかった。

初心者のツバメがヒゲの力を振るえる領域はせいぜいのところ半径5、600m。

そうウィスカーは踏んでいたのだが、彼女が叩き出した記録はなんと約2kmだった。

勧誘を諦めるには惜し過ぎる才能である。

ツバメは指揮者になるという夢のため、夜はできるだけ勉強の時間に費やしたいのだが、ウィスカーがそれを許さない。

時間がないらしく、とにかく必死なのだ。


そして昨日のことである。

「君はヒゲの力を自分のために使ったニャ。それも2度も。利用するだけ利用してあとは知らないなんて、そりゃないモニャ」

もはや当然のごとくやってきたウィスカーは、突然そこを突いてきた。

こちらがツバメの個人的な目的に協力したのだから、それ相応の対価を支払えという意味であろう。

筋の通らないことが嫌いであるという、ツバメの性格を既に見抜いているのだ。

「むむっ」

案の定、ツバメは顔を歪ませ、腕を組む。

確かにデブネコの言うことにも一理あるように思えた。

けれど、ヒゲ戦士に就任するのは嫌だ。

どうしたものか。

ツバメの眉間にシワが寄る。


それからしばらく考え込んだのち、ツバメは顔を上げた。

「ええと、ウィスカーはヒゲグリモーとして悪と戦うメンバーを探しているのよね。中学生以下の女子に絞って」

「まあ、そうニャ」

「それなら、こうしたらどう?私が代わりのメンバーを探してくるの。私でなくても適性のある人が見つかればいいんだから」


今度はウィスカーが唸る。

「それはすなわち、君にとってのスケープゴートという...」

「まあ、人聞きの悪い」

口に手を当てるツバメの仕草がわざとらしい。

「とにかく。私の方がウィスカーより女子に声掛けやすいでしょ。お互いにとって得じゃない。ね!」

ツバメはウインクをしてみせる。

どうしてもヒゲグリモーになりたくないらしい。


ウィスカーは随分と迷っていたが、終いにはツバメの案を呑むことにした。

「わかったニャ。君が新たなヒゲグリモーとなり得るメンバーを2人見つけてきたら、君からは手を引くモニャ」

致し方なしと肩を落とすウィスカーに、ちょっと待ってよ、とツバメが手を振る。

「なんで2人なの!私の代わりなんだから1人でいいでしょうよ」

対してウィスカーは、まさか文句を言われるとは、という表情である。


「よく考えてみるニャ。君は強盗を捕まえるためにボクを呼び出しヒゲエンビーに変身した。けれど、もし君がヒゲグリモーになるつもりがないと知っていたなら、ボクはヒゲを貸さずに、その時間で他の娘を探すことができたニャ。つまりツバメ、君は魔法の付けヒゲの使用プラス、ボクの損失した機会や時間についても、埋め合わせをする必要があるモニャ」

「そんなのムチャクチャよ!あんたの薄気味悪い勧誘の仕方だったら、1日や2日あったところで、他の子を探せるとは思えないわ」

「君程の素質を持った子を手放す、こっちの身にもなって欲しいモニャ。君の連れてくる代理が、同じように才能ある少女とは限らないモニャよ。この通り、頼むニャ」

詭弁や泣き落としを巧みに使い、攻めてくるウィスカーであった。


身を伏せながら懇願するネコが無性に可哀想になり、ツバメはとうとう断り切れなかった。

「わかったわよ!2人ね、はいはい2人誘えばいいんでしょ!」


以上の経緯によりツバメは、自分の代わりとなるヒゲグリモーを探している。

そこへ現れた日向陽子。

果たして彼女は魔法少女の素質を持っているのか。

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