協力者
「やっぱおかしいだろ!?普通そんなに早く治らねえよ!」
2人がギルドに運び込まれた翌日、朝飯を食べ終えた彼らはまだ塞がってもいない体の傷を見せあっていた。
「そうか?少し前までは身体中に穴を開けられて、次の日には完治してまた穴を開けられて…………なんてこと、日常茶飯事だったぞ?」
「意味わかんねーよ!てかお前、俺の傷跡こんな風にしたのもその名残──うえっ、気持ちわりぃ」
バルドが自分の傷跡を見てえずく。
彼の体は惨憺たることになっていた。
全身には針を刺されたような小さな穴がびっしりと開き、大きな一撃を食らった右脇腹は大砲でも打たれたかのように抉れている。
集合体恐怖症の彼にとっては見るに堪えない光景であった。
「そんなことを言われても、覚えていないからな……」
「いやいや、俺は忘れねえぜ?必ずこの借りは返してもらうからな!」
もう見たくない、という風にまくった袖を元に戻したバルドがリケルを指さして宣言する。
「ところでよ、昨日はどこ行ってたんだ?
なかなか帰ってこねえからてっきり一人で『棺』に乗り込みに行ったのかと思ったぜ」
「ああ、昨日は『火鳥亭』を見に行っていたんだ。
なにか手がかりが無いかと」
「そうか…………なあ、リケル」
「どうした」
バルドが彼の肩をがっしりと掴む。
「俺たちゃまだ会って一日ちょいだけどよ。
俺から見て、正直お前は焦りすぎだ」
彼の目は先程までと違って、至って真剣な風である。
「ああ、お前のいいたいことも分かるぞ、バルド。
だが、俺に残された時間は7日しかない。
一刻も早くソニアに関する情報を────」
「お前今『俺』って言ったろ?
そこからもう間違えてんだよ」
リケルが首を傾げる。
──なにかおかしなことでも言ったか。
一人称が間違っているのか。
彼の頭の中を浮かんでは消える泡のように湧き出た考えは、バルドによって否定された。
「『俺たち』、だろ?」
はっと目口を開く。
「俺がそんなに薄情な人間に見えるか?」
バルドが自身のポケットから一枚の紙を取り出し開く。
しわくちゃになっているが、書いてある文字は問題なく飲み込める。
【街で暴れる正体不明の男あり。素性の確認と事情の究明を求む】
「緊急事態だったんで任務書の発行は今日になったが、俺の任務は暴走したお前を止めることじゃねえ。
お前の身体のことも、お嬢さんが攫われたことも、全部解決するまでが俺の仕事だ、」
一度言葉を切るバルド。
「だから────」
「だから僕が呼ばれたってわけだね」
扉を開けて自身げに金髪の男が姿を現す。
その隣には、燃えるような赤い短髪の男が立っていた。