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痛喰者は再び舞い戻る  作者: 龍 拡散
王都レイタスの異変
11/45

継承と疑惑

「女王なんだから!」


「アレシア…………」


 アレシアは得意気な顔をして胸を張る。


 それを見たリケルは────


「なんだか口調が変わってないか?」


「う、うるさいわね!

プライベートなんだからいいでしょ!」


 思わぬ返答にアレシアが声を荒らげる。


 悪い悪い、と苦笑するリケル。


「それで…………女王だって?前国王はまだまだ現役のはずじゃ……」


「お父様は、3年前の『反転』で急激に地位を失った後に、何者かによって暗殺されたわ」


 アレシアの顔が少し曇る。


「そ、それはすまなかった」


「別にいいわよ。あんまり好きじゃなかったし」


「そうか……でも、王子だって沢山いただろ?男が優先して王になるこの国で、アレシアが女王になれたってことは……」


「生きてはいるわよ。でも、どれも使い物にならないくらい弱くなってしまったのよ。『反転』のせいでね」


「どういうことだ?『反転』の影響を受けたのはアレシアも同じだろ?みんな平等に弱くなったんなら、結局王子間でのパワーバランスは変わらないんじゃないか?」


 リケルの素っ頓狂な声に、アレシアはやれやれとため息をつく。


「本当に何も知らないのね…………。

『継承』の話くらいは知っているかと思ってたわ」


「継承?」


「まず、この王国がどうやって出来たかは知っているわよね?」


「それくらいは知ってるさ。

 北の帝国や、西の共和国に迫害されていた俺達の先祖様の住んでいた小国に、突如として異世界から勇者が現れた、だろう?」


「ええ、そうよ。彼らのお陰で国境線は二国と渡り合えるほどに回復して、共和国とは対等な同盟を結ぶ事にも成功したわ」


「それと『継承』とやらに何か関係があるのか?」


「勇者の力の『継承』…………ここまでいえば分かるでしょ?」


「……!なるほど、王族の血筋には勇者の力が受け継がれているのか」


「そういうことよ。初代国王である勇者の血…………純血に近ければ近いほど強力な能力を手に入れられたわ。成人の儀で得られるものとは別枠でね」


「なるほど。別枠ってことは普通の人よりもスキルが一個多いわけだ。

それが『反転』でひっくり返ると、こんどは強烈なハンデになってしまうのか」


「第1候補だったザックス様は、『力9999』から『力1』になったりしたわね」


「9999の反対が1なのか。不思議だな」


「当たり前でしょう?9999が最大値なんだから反対は最小の1になるわよ」


 リケルは思わずん?と疑問を抱く。


(最大値─────たしか2年前に自分のステータスを見た時には5桁を超えていたし、今じゃ測定不能だ。

最大値を超えて成長している……?俺の能力の影響か?)


「それで、私の継承していた能力は『運が少し良くなる』ってショボイものだったわ。でもおかげで、『反転』の影響も比較的少なく済んだのよ」


「なるほど。それで女王になれたんだな」


 フェニケス王国の王位継承は、勇者の影響もあってか、血筋よりも実力を重視する。

 以前は結局純血に近いほど強い能力を持っていたから血筋が左右していたが、『反転』後は逆に純血から遠いアレシアが王座を勝ち取ったということか。


「さ、お話もこのあたりにしてそろそろ寝ましょうか」


「ああ、そうだな。ソニアも─────って、もう寝てるじゃないか」


 いつの間にか、ソニアはすやすやと寝息を立てている。


 それを見たリケルがふふっと微笑む。


 その横顔を、アレシアは真顔で見ていた。








────────────────────────







「…………はあぁ。もう朝か」


 小鳥たちのさえずりを聞いて、リケルは自然と目が覚める。


「キイィィ」


「!?どうした!?」


 リケルが伸びをしていると、視界の奥にゆらゆらと不規則に揺れる小さな光を見つけた。


 満身創痍な様子の光虫は、リケルの差し出した手のひらの上に着地すると、安心した様子で眠り始めた。


 よく見ると、頭の上にちぎれた紙片を乗せている。


「これは────主人からの手紙か」


 手紙と言えるのかも分からない、折りたたまれた紙片を開ける。


「……!これは!」









【ソニアも俺も捕まった。黒幕は女王だ】






「ソニアッ!!…………くそっ!いない!」


 2人は既に寝袋の中から姿を消していた。

 リケルは一抹の希望を頼りにあらゆる場所を探すが、どこにもいない。

 怒りと悔しさに噛み締めた歯を血が流れる。




「何が起きているんだ…………ッ!!」


 


 リケルの悲痛な叫び声が、森の中を何往復もこだましていた。

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