告白
「帰るのは明日になりそうだ────っと。さあ、これを主人のところに届けてきてくれるか?」
「キィ」
リケルから主人への手紙を受け取った白い球体は、頷くかのように羽を鳴らすと、ゆらゆらとどこかへ飛び去っていった。
「光虫……っていうんだっけ?」
「ああ。俺から直接聖気を補給してやれば、紙を運ぶくらいならやってくれる」
「へぇ、便利なのね」
リケルは男達を倒した後、二人を包んでいた聖気のガードを解き、男達を縛った。
日の沈み具合から帰ることは不可能だと判断し、野営をすることにしたのだ。
しかし、焚き火の準備をしている間に、いつの間にか男達の姿は消えていた。
自分の警戒不足を祟ったリケルであったが、今はなによりもあの主人の顔が怖く思え、一刻も早くソニアの無事を知らせるために便りを書いたのである。
パチパチッと火花が散る。
焚き火を囲みながら、採ってきたきのこを焼いて雑談する三人。
ソニアだけがずっと、暗い顔をして黙っていた。
「どうしたんだ、ソニア?さっきから浮かれない顔して。具合でも悪いか?」
「…………なんでもないです」
「そんなことはないだろう。さっきとは全然様子が────「なんでもありませんっ!」」
予想していなかった大声にリケルがビクリとする。
「あ、いや、今のは……」
「もう寝ましょう。きっと疲れてるのよ」
なにやら弁明をしようとしたソニアだが、アレシアが重ねて提案をする。
「あ、ああ。そうだな。それじゃあ俺は徹夜で見張りをしておくよ」
「いいえ、それはダメだわ。交代で見張りをしましょう」
遠慮気味に言ったリケルの言葉をアレシアが制止する。
「姫様にそんなことさせられない」
「姫?なんのこと?」
「アレシアのことさ。影狼に襲われた時も姫って呼ばれてたじゃないか」
「ああ、アッシュは癖でいつもそう呼ぶわね。
…………あなた、もしかして今まで私が誰か知らずに話してたの?」
アレシアの発言に首を傾げるリケル。
「誰って、この王国の姫様じゃないのか?」
「あんた……どこかの山にでも籠ってたの!?
今やこの王国内で私の名前を知らない人間なんていないはずよ!だって私は────」
アレシアが左胸を強調する。
そこには、さっき見たように赤い鳥の紋章が刺繍されている。
「この『フェニケス王国』の女王なんだからっっ!!!」