あなたはあなたが好きですか?
この作品を読もうとして下さり、ありがとうございます。今回書いた作品は、なにもかもが初めてだったので、難しかったです。恋愛を書くのが初めてですし、ファンタジー以外を書くのも、短編小説を書くのも、女主人公で書くのも初めてでした。この作品は、あなたがあなたに自信を持てなくなったときに読んでもらえると一番嬉しいと思っています。悲しいときに前向きになれる作品を目指しました。
あなたはあなたが好きですか?
この質問をして、返ってくる答えは『好きです。』と『嫌いだ。』の他に、『どちらでもない。』や『場合による。』や『分からない。』など、答えは人それぞれだと思う。わたしは……
私の名前は、長田優里といいます。高校1年生です。実は、私には好きな人がいます。それは、同じクラスの中込智治君。本人は心配いらないって言ってるけど、少し病弱なんです。その影響であまりスポーツができないけど、頭が良くてとっても優しいんです。歌もうまくて、思わず聞き入ってしまいます。
そんなある日、私は文化祭実行委員に選ばれたのですが、なんと中込君と一緒に選ばれたのです。
「中込君…!よ、よろしくね!」
「おお、よろしくな。」
私達は装飾担当になって、活動が始まりました。
「今年のテーマは、『Be together as one~心を一つに~』に決まりました。このテーマに沿った素晴らしい文化祭にしましょう。」
委員長の長谷川さんがそう述べると、室内で拍手が鳴り響いた。そして、私達のクラスで話し合いました。
「このテーマだったら装飾は揃えた方がいいかな?」
「あっ!それいいかも!」
さすが中込君。いいアイデアを出してくれる。だったら…
「だったら、ドアの前とかを千羽鶴にするのってどうかな?」
「それいいな。やったら綺麗かも。」
「でしょ。ちょっと大変だけど、みんなに協力してもらえばできるよ。」
とてもこの時間が嬉しかった。中込君と話している。それだけで、1時間があっという間に通り過ぎる。
「あれ?もうこんな時間じゃん!」
「え!?本当だ!ごめんね、こんな長く……。」
「いや、俺の方こそ…。なんか話してたら、案がめっちゃ出てきてさ…なんか楽しかった。」
……え?それって…それって…私と話してたら…楽しいってこと!?
「ねぇ、中込君。その…さ、LINE交換しない?その、文化祭についての連絡用に…。」
「分かった。じゃあ…」
そして、スマホを操作してLINEを交換した。
「じゃあな!また土日明け!」
そう言って、彼は速足で帰路についた。わたしは、いつも楽しみだった土日が明日からは鬱陶しく思うだろう。
「先生!」
「おお、長田。どうした?」
「こんな装飾にしたいんですけど、どうでしょうか?」
そう言って、企画した内容を分かりやすくまとめた紙を提出した。
「なるほど…。千羽鶴を使うのか…。でも、出来上がるか?」
「それは…みんなと協力して……。」
と自信無さ気に言った私に先生は、
「まぁ、好きにすればいいさ。良くも悪くも、文化祭を作るのはお前ら生徒だ。予算さえ守ってくれればな。」
「あ、ありがとうございます!」
そして職員室を出て、待っていた中込君に報告する。
「ばっちり!通ったよ!」
「まじか!?やったな!話し込んだ甲斐があったな!」
そうして2人で喜んで、またクラスで話し始める。この繰り返しがずっと続けばいいのに…。とか思っても意味が無いのは分かってる。でも、すごくこの時間が嬉しくて…続かないのが…終わってしまうのが辛くて、考えずにはいられない。
そして、文化祭当日。千羽鶴のところや、他のところも全部完成して文化祭を迎えられた。本当に達成感があり、完成してよかったと思った。でも、まだ文化祭は終わっていない。うちのクラスは、少しベタだけどお化け屋敷をやることになった。もちろん、飾り付けをしたのは私達。
「中込君!もう次来ちゃうよ!」
と、小声で呼びかけた。
「分かってる!ちょっと待て!」
急いでこっちに駆け寄ってきて、準備が整った。……少しずつ足音が近づいてくる。今だ!!
「あああああああああああああ!!」
「きゃああああああああああああああああああ!!!!」
歩いてきた女性は叫び声を断末魔のように上げ、すごい勢いで去って行った。中込君と一緒に出たからなのに、何故か私の手柄と思えて仕方がなかった。
「ほら、また次が来た。」
「オッケー。よーっし!」
「いやー楽しかったね。」
文化祭も、もう終わり。それが少し寂しい。せめて、もう少し中込君と話していたい。そう思い、話す話題を考えて出したのが文化祭を振り返ることだった。
「ああ、特に委員長の驚きようがすごかった。」
「…う、うん。すごかったね。」
……あれ委員長だったんだ。暗くてよく見えなかったけど…委員長こういうの興味あったんだ。
「なんか、あっという間だったね。」
「ああ。準備してた時はものすごく大変だったけど、今は達成感でいっぱいだ。」
「千羽鶴とか大変だったね。数え直したとき、千羽じゃなかったり…。」
「だれかさんが、鶴踏んじまったりな。」
「それは言わないで!」
そこは…掘り返さないでほしかった…。
「……もう暗くなったから終わり!解散!!」
これ以上掘り返されたらたまらない。そう思い、その場を後にした。
その夜のことだったらしい。中込君が突然家で倒れて、救急車で搬送された。そのことを学校で知った。中込君は、病弱だったから病院に搬送されるのも今に始まったことではありません。でも、今回は違う。と私の本能が訴えかける。根拠の無い不安が体中を駆け巡る。虫の知らせっていうものなのかな…?でもこういうのは信じた方がいいって言うし、今日中込君のお見舞いに行こう。
放課後、私は中央病院に向かった。
「中込様は、302号室です。」
言われたとうりの部屋にエレベーターで向かう。朝の根拠の無い不安をそのままに、中込君の無事を祈った。お見舞いの品に…。302号室はベッドが2つあったけど、中にいたのは中込君1人だった。
「中込君…。」
「…珍しいな、長田がお見舞いなんて。」
ちょっと微笑んで、そう言った。私には、その笑顔がなんとも哀愁が漂うように感じた。
「中込君、調子は大丈夫なの?」
「ああ、完璧とは言えないが今は大丈夫だ。」
『今は』の言葉に違和感を感じた。聞き間違いじゃない。さっきの声は…震えていた。
「はいこれ。お見舞いの品。って言うには心苦しいけど…。」
「これ…装飾に使った千羽鶴…。」
片づけるとき勿体なくてとっておいた千羽鶴。こんな形で役に立つとは思っていなかった。
「ありがとな。」
また…声が震えている。
「中込君。……私ね。……中込君のことが好きなんだ……。」
中込君の震えを抑えるために言ったつもりだったけど、ちょっと勢い任せだったかもしれない。そう思っていると、中込君の頬が涙で濡れていた。
「そっか……そう…なんだ…。」
声は一層震えている。
「なんで…なんで今…言うんだよ…。」
その声はついに裏返り、涙で布団が濡れていた。
「俺さ…肺がんだって……ステージ…4って言われた…。」
その言葉に耳を疑った。
「親に迷惑かけないようにさ…治療は受けないって断ったんだ…。そしたら…余命半年だって…。死ぬのは…怖くないって思ってた…。誰にも言わずに…死のうと…思ってた。お前が…言うまで…。」
私は、先刻言った言葉を後悔した。言わなければよかった。それか、もう少し早く言っていれば…。
「長田…俺も…お前が好きだった。だから…怖い……。死ぬのが……怖いよ……。」
それから…中込君は声を出して泣いた。病院中に響いてもおかしくないほど…。
それからというもの、私は毎日お見舞いに行った。思い出をたくさん作りたい…その一心で。
「ありがとな、長田。なんか…いろいろと。」
「今更なに言ってるの?そうだ、写真とろうと思ってさ。」
そう言い、スマホを自撮り棒にセットして1枚。
「どうせなら、もう少し笑えるときに撮りたかったな。」
その言葉を聞いて、私は中込君に口づけをした。
「……これで元気出た?ちょっとカップルっぽくない?」
「………!ありがとう。」
半ば驚いたような表情で、中込君は礼を言った。
「なぁ、俺が死ぬときさ……泣かないでくれるか?笑って…別れたいんだ。」
「…………うん。分かった……。」
その言葉は、私に後悔することがないように言ってくれたのだろうか。今は、それが否か分からなかった。
余命最後の日。家族と医師が見守る中、中込君はベッドに横たわっていた。
「長田…。最後までありがとな。俺は、この6ヶ月が…楽しかったよ。」
そのセリフが終わる前に、私の頬は濡れていた。
「……なんだよ…。約束…守ってくれよ。」
「ごめんね、中込君。最後は…泣いて別れようって…決めたんだ…。」
「こっちまで…つられるだろ……。」
中込君の頬も濡れていき、声も震えていた。私は中込君の手を取り、
「私さ…あなたを好きになれて…嬉しかった。」
「…俺もだ。ありがとう…。」
…その瞬間その手は冷たくなり、だらんとぶら下がるように腕が落ちた。
「……瞳孔対抗反射…無し。午後3時46分…ただ今…旅立ちました。」
私は冷たくなった手を握りながら、静かに泣いた。
あなたはあなたが好きですか?
この質問をして、返ってくる答えは『好きです。』と『嫌いだ。』の他に、『どちらでもない。』や『場合による。』や『分からない。』など、答えは人それぞれだと思う。わたしは……………
彼を最後まで支えられた私が…大好きだ。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます。どうだったでしょうか?前向きになれたなら僕は嬉しいです。では、また縁があったらお会いしましょう。