プロローグ 【美しき救世主】
森の中を駆ける。草葉や枝木が身体中に切り傷をつくろうとも、只々前へと進む。
自身へ伸びる手から逃れる為に。捕まってしまったら何をされるか分からない、分からないまま永遠の眠りへと就いてしまうかもしれないから。
しかし私にも限界があった。相手はそれを知っていたのだろう。追い詰められていたと気がついた時にはもう遅かった。14歳の小娘の体力なんてたかが知れている。視界が眩む、息がうまくできない。
目を閉じ開いた先に映っていたのは冷たい地面だった。諦めたように再び目を閉じた。私を囲うように複数の足音が聴こえる。
ごめんなさい、お父様お母様…リタは先に逝きます…。
_____下卑た吐息と嘲笑と下品な足音が近づいて来る。
「お前なにっ…!ギャァァァ!!」
思考を止めた時、耳に汚い悲鳴と鈍い音が聞こえ目を開けた。視界に映ったのは月明かりに照らされ凛と輝く華のような美しさを持った女性が大男たちを大剣を振り回し薙ぎ倒している姿だった。
「くそっ…!てめーら引くぞ!覚えとけよ、クソアマ!」
女性が大男たちを見送り溜息を吐くと、此方にゆっくりと近づいて来る。次の瞬間にはふわりと身体が宙に浮き美しき女性の腕の中に収まっていた。
間近で見る女性の美しさに息をするのも忘れそうだった。助けてもらった礼を言おうと言葉を探すが、美しさに見惚れてしまい言葉が見つからない。
「怪我は森の中を走った時の切り傷だけか?他に痛いところや苦しいところは?」
____ん…?お礼を言おうと私が口を開く前に聞こえてきたやけに低い声にぽかんとする。いや、声が低い女性もいるけれどこれは明らかに…。
「あ、いえ、だいじょぶ、です。あの、助けていただいて本当にありがとうございます。」
「そうか、よかった。もっと早く来れなくてごめんな。お嬢様、案外足速いんだな。よく頑張った。あいつらは大丈夫だ。警護隊に連絡して来たから、森の入り口で捕まってるはずだからな。」
柔らかな優しい笑顔に自然と涙が溢れる。同時に疲労と安心感で私はそのまま眠りに就いてしまった。
次に目を覚ました時には二日も経っていた。女性にちゃんとお礼をしたいと両親に訴えたが、名前も何も言わずお礼も受け取らなかったと言われ私は酷く後悔した。そして絶対にあの美しい女性を探し出しお礼をして、この胸に残る気持ちを確かめたいと、そう決意した。
キーワードとジャンル選びに迷い過ぎて。もう適当に選んだとか内緒です。
使い慣れないので変なところが多々あるかもですが、のんびり書いていきまぁす。