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トゥインクルラバー  作者: 全力番長F
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煌めきだす日々

 「だよな~!」

 放課後の教室に響く笑い声。俺、涼汰(りょうた)と気の合う女子の燐那(りんな)の二人しか、今は教室にいない。いわゆる二人きりという状態だ。

 「いや~、涼汰が親友でよかったわ~。めっちゃ楽しいもん」

 「俺も燐那が親友でよかったわ~」

 俺たちが知り合ったのは、中学三年の時だった。それまで話したこともなかったのに、席替えで隣になったのがきっかけで、よく話すようになったのだ。

 お互いの第一志望は違うはずだったのだが、燐那が運悪く落ちてしまい、俺が受けた県立高校の再募集で何とか引っかかって、今でも親友関係が保たれている。


 「相変わらず涼汰はバスケに夢中なのね」

 「まぁな。燐那はなんで部活やめたの?」

 「だってなんかめんどくさくて…」

 俺の質問に、少し哀愁の感じられる笑顔をつけて答える燐那。

 燐那は元々バレー部だったのだが、二年になると同時にやめてしまい、今はどの部活にも所属していない。俺は会話でもわかる通り、バスケ部だ。中学からのバスケバカなのである。

 「そういえば、今日は部活ないの?」

 「先生来ないから、五時からなんだよね」

 「ふ~ん、そっか」

 二人はほぼ同時に時計に視線を向けた。しゃべりすぎて部活のことなんて、少しも考えていなかった。体育館使用が五時からなので、ほかの部員は、体育館の周りでぐだっていることだろう。そんな時間を過ごすよりだったら、燐那と話していたほうが、ずっと楽しいに決まっている。

 「じゃ、そろそろ行くわ。今日はありがとな」

 「うん、こちらこそ。頑張ってね、部活」

 「おう、じゃあな~!」

 話に区切りがついたところで、燐那に別れを告げ、体育館を目指して教室を後にした。西日に照らされる校舎の廊下は、いつになく煌めいて見えた。



 「お?ヒーローは遅れてってか?」

 「ん?どーいうことかな?」

 体育館の前には、予想通りバスケ部がたむろしていた。その中の俺の相棒、真弥(しんや)に話しかけられる。どういうことか未だに理解できていない俺を見て、真弥は続けた。

 「どうせ教室で話し込んでたんだろ?リア充が」

 「そういうことね。でも、付き合ってないよ俺ら」

 ようやく理解できた俺は、すぐさま否定の意を述べた。その否定に、真弥は意外そうに驚いて見せた。

 「あんだけ仲良くて付き合ってないとか、僕らの敵とでも宣言したいのかな?」

 「なんでそーなるんだよ。友達同士だってば」

 「へぇ~そうですかぁ」

 少し不機嫌そうに発する言葉にはどこか意地の悪さがにじみ出ていた。訂正にもそっけない返事で返されてしまい、何となく複雑な気持ちになる。そこで、部長が体育館に入るよう指示をしたため、話の中断を余儀なくされた。


 「「ありがとうございました!さようなら!」」

 部活が終わり、各自で帰宅を始めたころ。体育館の外は、街灯がいくつかあるだけであったため、星がきれいに見えた。すると後ろから、いきなり肩を叩かれた。

 「お疲れ、涼汰。星、きれいだね」

 「おう、さっきは悪かったな」

 叩いてきたのは、相棒の真弥だった。先ほどの会話には自分にも非があると思って謝ったのだが、真弥はきょとんとして特に気にしていない様子だった。

 「あぁ、あれね。気にしないで。モテない奴があれ聞くと、イラッと来ただけだから」

 「そっか…って、真弥のほうモテるだろ!」

 個人的なことでふてくされていたのかと思うと、誤ってしまったことを妙に後悔し始めた。でも、おかげでいつも通りに戻ることができたから、それも徐々に薄れていった。

 俺よりも絶対女子受けがいいはずだ。真弥は女子生徒の間でも噂されていると、燐那から聞いたことがある。だから、真弥に自覚がないだけなのだ。そういう奴のほうが、俺は頭に来るのだが。


 「まぁ、後悔だけはするんじゃねぇよ~」

 「はぁ?どゆこと?」

 ふと真弥が俺に向けたつぶやきを、聞き流すことができず、思わず聞き返してしまった。思わぬ聞き返しだったらしく、真弥は少しの間フリーズしてぼけっと口を開けていた。少しして、正気に戻った真弥は俺に向き直してから言った。

 「その関係に満足して、ずっとこのままでいいやなんて考えだけは、どう間違ってもすんじゃねぇよ」

 「おう、そんなのわかってるさ。心配いらねぇよ」

 少なからず心配してくれていたことに少し驚いたが、次の瞬間には嬉しさに変わっていた。その感情も束の間、何となく妙に複雑な感情に襲われていた。

 そして、真弥が俺に言った二言目。それは、意外すぎて事実かどうか確かめる間もなく、ただただ頭に刻まれることになるのだった。


 「あんまりもたついてるんなら、僕も参戦するからね。恋のバトルに」


 それだけ言うと、真弥は振り返ることなく帰路へとついたのだった。

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