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あや子の日記  作者: 緑青 海雫
9月
14/19

9月17日

 

 9月17日


 朝起きた時、やっぱりクッキーが無くなっていた。

 ゾッとして冷や汗が出たが、野良猫が居るとでも思えばたぶん平気だ……よね?


 昨日、信くんがお札の事を調べてくれるとLINEに返事が来た。

 さすが信くん、信くんが頼りになってカッコいい!

 思わず携帯に、ちゅうした私は悪くないと思うんだ。


 それからしばらく、濱田先輩が休職すると上司が朝礼で言っていた。

 どうやら妊娠したらしい。

 お目出度いって思ったら、同期の篠田ちゃんが……。

「なんかね、濱田先輩って、不倫してたらしいよ。

 それで、不倫相手と子供が出来ちゃって、いま相手の奥さんとか奥さんの親戚とかと揉めに揉めてるんだって。

 子供をおろせとか、産むなら養子にするとか、不倫相手の男が結構な財閥の跡取りだったみたいでね。

 奥さんと不倫相手の男の間に、まだ子供が出来ないからそれならって、ホントにヤバいらしいよ。

 怖いね~! やだやだ、不倫なんて! 」

 と、情報をくれた。

 篠田ちゃんの情報網がスゴすぎて、驚いた。

 お目出度いのに、目出度くなくて、お腹の子供が可哀想になってしまった。

 濱田先輩は、産むのかな? どうするんだろう?


 帰り際にまた、野村のおばあちゃんが栗と里芋の煮物をくれた。

 本当に有り難い……。

 ちょっと涙が出そうになったのは内緒だ。

 少しだけ雑談をしつつ、私の部屋の話をふってみた。

 以前、私の前に住んでいたヒトのことだ。

 野村のおばあちゃんは、親切に色々と話してくれた。


 私の部屋の前住人は、男性だったらしい。

 4年間住んでいたのに、ある日突然、引っ越してしまったらしい。

 野村のおばあちゃんとも仲が良くて、良く立ち話をしたり、お裾分けをしていたらしい。

 ちょっと私と一緒だ。 親近感が湧いてしまった。


 それが、ある日突然、仕事の都合でと引っ越してしまった。仕事なら仕方ないと、野村のおばあちゃんは肩を落として残念がったらしいけど、会話にふと奇妙な引っ掛かりを覚えたそうだ。

 なにが引っ掛かったのか、男性の顔を見詰めて世間話をしていると、野村のおばあちゃんはそれに気付いた。


 男のひとが、真っ青になってちらちらと階段下を見ていたらしい。

 あれ?と思いながら「具合が悪いの?顔が真っ青よ?」と聞くと、男のひとは狼狽えながら、おばあちゃんに「ぼくが出ていったあと、どうかベランダの端っこに、生米をヒトツマミ置いておいてくださいね。 約束ですよ。 絶対に守ってくださいね。」と、何度も懇願したらしい。

 その酷く狼狽えた様子は、尋常じゃなかったらしい。

 前住人は、常識がしっかりした男性だったので、おばあちゃんは少しだけいぶかしみながらも、何かよほどの事だろうって、その変なお願いを了承した。

 なんで?って何度問いただしても、男性は首を横にふって、「知らぬが仏ですよ、野村さん。ぼくは不甲斐ないとしか、言いようがなくて。……野村さんには、本当にお世話になりました。」と言い残して去っていったらしい。

 野村のおばあちゃんは、いまでもベランダの隅に生米を少しだけ盛っているらしい。


 それを聞いて、私は確信した。

 このアパートのベランダには、なにかヤバイものが出るんだって。

 そして、前住人は強い霊感とかそう言うものがあって、あの黒い影の正体を知っているんだって。


 あの木札、絶対に魔除けだけじゃない。

 それに、あの座敷わらし。

 前住人が、関わってるとしか考えられない。

 今週末、不動産屋にクレームと一緒に、前住人の連絡先を聞き出そうと思う。







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