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あや子の日記  作者: 緑青 海雫
9月
12/19

9月14日

 

 9月14日


 昨日の夜中、なんだか可笑しかった。

 虫の声も、車の音も、鳥の声も聞こえなかった。

 いつもは世界の営む音が、普通にしてたのに。

 まるで切り取られたような、シィン……とした世界。

 こんなこと、はじめてだ。ごくりと生唾を飲み込む音が部屋に響いているようで、恐かった。

 カーテンをした窓の向こうから、生き物の気配がするのだ。やっぱり首筋の辺りがチリチリとした。

 ヤバいものが、ベランダにいる。

 だけど、この部屋に入ってこれないんだ。

 それだけは分かった。

 たぶん、あのお札のせいだって思った。

 剥がさなくって良かった。窓、本当に開けとかなくて良かった。

 カーテン越しの黒い影が、ウロウロしている。

 何かをブツブツ言ってるけど、聞こえない。

 しばらくすると、空気がフって軽くなった。

 身体中の力が抜けて、ベットにへたりこむ。

 ぐっしょりと汗をかいて気持ち悪かったけど、お風呂に行こうという気力が湧かない。

 喉がカラカラに渇いていたので、枕元に常備置いておくペットボトルの水を一気に飲み干して枕にダイブした。


 そのまま目をつぶって、微睡んでたらまた座敷わらし的な女の子が出てきた。

「あーちゃん、またくる。あいつ、またくる。

 おこめもってて、おこめもってて。

 あいつ、またくる。またくるの。」


 ………正直、誰も来ないで欲しいんだけど。


 それから、朝は普通にいつも通りだった。

 だけど、ベランダがちょっと生臭い。

 ベランダ、というより、たぶん下の方から漂ってくる。

 ベランダの床にでも這いずって、居たんだろうか?

 そんな想像をしてゾッとした。

 それから、さっさと仕事へ行った。


 今日は濱田先輩が、休みだった。

 なんだか、体調が悪いらしい。

 あれはたぶん、寝不足が原因でしょ、って部署内の皆が思っていたに違いない。


 仕事帰りにまた焼き鳥屋によって、ボトルキープしたお酒を一杯引っ掻けてきた。

 あぁ、癒されたぁ~!


 それから百均によって、3個セットのピルケースを買った。

 アパートに戻って、ピルケースに塩と生米をそれぞれたっぷり入れた。

 どこ行くにも必ず持っていこうと思う。


 テーブルの上に、お饅頭をひとつ置いておく。

 その下のメモ用紙に、『ざしきわらしちゃんへ』と平仮名で書いて置いておいた。


 マジで、守ってください、お願いします。





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