妹の回想
4月25日
姉のあや子が入院したと、母から連絡が来た。
一度実家に帰って、あやちゃんの住んでたアパートの部屋へ行く。
突然の入院とのことで、準備が何も出来ていないらしかった。
パジャマやTシャツ、下着やタオルをトラベルバックへ詰め込んでいく。
ふと、あやちゃんの枕の下から日記が覗いているのに気が付いてしまった。
この時のあたしは、本当に魔が差していたのだろう。
そっと手に取ると、5年分の日記帳は重たかった。
開いて日付を確認すると、まだ2年目らしい。
本を読むのが好きな私は、ちょっとした好奇心と悪いことをしているような悪戯心と高揚感に酔いしれていた。
だから、少しの罪悪感を無視して、躊躇うことなくあやちゃんの日記を開いて読んでしまった。
一昨年の入社から始まり、おばあちゃんのお葬式から仕事の転勤の話しと簡素に書かれていて読みやすい。
そして、去年の8月の日記に入ると、そこからあやちゃんの周囲が恐ろしくなり始めた事が記述してあった。
それは丁度、アパートへ引っ越した辺りの出来事からだった。
「なに………これ………。」
あたしも読み進めるに連れて、うすら寒さを覚えていった。
真夏の夜にやる心霊系のテレビ番組なんて、子供だましの肝試しのようなもんだと分かる。
そして、先月末の日記。
「………あやちゃんの命があって、ホントに良かった……。」
あまりの事に、全身に鳥肌がたち、逆立った産毛がチリチリとした。
あたしは、茫然としながら、何があったかをもう一度確認して納得するため、またあやちゃんの日記を読み直した。