二日目 午前四時
結局タダヨシは野宿の準備が整って晩飯代わりのヘビイチゴを頬張ってからすぐに眠りについてしまった。
というのも夜に備えて火が必要だったため、昔ながらの石を打ち合わせて生まれる火花により火種を起こそうと奮闘し、約一時間かけてやっと点火に成功したのだが、そのせいで一層疲労が酷くなってしまったのだ。
そのため日も落ちきった夜中の0時にルナに起こされ、そこから朝まで見張りを担当する事になったタダヨシは、燻る焚き火が風で消えないか終始気に掛けながら、暗闇で視界の悪い周囲に目を凝らしていた。
幸い真夜中に敵らしき者の襲撃等は無かったが、まだまだ得体の知れない場所のため油断は出来ない。
初夏であるこの時期は夜明けも早いようで、もう遠くの空が明るくなり始めていた。そのため自然と視界もはっきりとしだす。
「5時になったら起こすか」
立ち上がって背伸びをし、長時間硬い地面に座っていて訛った体をほぐすタダヨシ。
ふと見ると、ルナとアナが気持ち良さそうに寝ている姿が目に入った。
ルナは相も変わらず必需品のカメラを手にしたまま、アナは包帯代わりにハンカチの巻かれた左手を押さえながら静かに眠りについている。
緊張感がないとも言えるが、この状況でもちゃんと睡眠を取れている度胸を持っている事に、タダヨシは少し安心した。
ルナやアナ達にとって、それがタダヨシがいるからなのだが、タダヨシ本人は気付いていないようだが。
朝の冷たい空気を身に受けながら、タダヨシは深呼吸をしてから顔を両手で一度叩き、気合を入れ直す。
また一日、この異常な島の探索が始まる。
そう思ったとき、タダヨシはある事を改めて考え、再度空を見上げる。
「ヤヨイ、どこにいるんだ?」
タダヨシが追っている少女の行方はまだ分からない。だがこの島のどこかに必ずいる。今はそれだけが希望であった。
そしてあの犬のような女や、他の儀式の参加者に襲われている危険もある。
ならやはり、早く合流しなければならない。
心配は募る一方だが、ここで焦っていても仕方が無い。
まずは共に行動するルナとアナを守る事を優先しよう、とタダヨシは自分に言い聞かせた。