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4 バッドエンド(1)

 気を取り直してゲームに取り掛かる。

 まずは学校へ行こう。


 主人公である『私』には何人かの女友達がいるらしい。彼女たちが情報を教えてくれるようだ。

 いろいろ話を聞いているうち、この学校には『超素敵な先輩』がいることが分かった。

 それと『新入生にカッコいい子がいる』とのこと。


 年上と年下。どちらも攻略対象キャラだろう。どっちに行くかな……年下はあんまり趣味じゃないんだけど。コンプすれば五百万だから、いずれはどちらも攻略しなければなるまい。

 

 後は、同じクラスに何人か攻略対象がいそうなものだが。

 パッと見まわした限りそれらしいイケメンはいない。モブ顔ばかりだ。むしろ、すごいヲタ丸出しのデブ男がいて目立っている。

 担任の先生か? と思えば無闇に厳しくて厭味で感じ悪いオッサンだし。


 梨佳は攻略可能キャラは十人と言っていたが、彼らはいったいどこにいるのか。

 まさか、それを捜索するところから始めるのか!? いろいろ難易度高すぎだぞ、やっぱり。


 とりあえず分かりやすいところから攻めよう……。

 主人公は部活に入っていない設定なので、素敵なセンパイが入っているというオーケストラ部への入部を試みた。


 すると。

「うちは部員は余っていましてよ! お呼びじゃないわ!」

 髪の毛縦ロールでまつ毛バシバシ、リボンごてごてのいかにも悪役令嬢風の先輩に門前払いを食らわされてしまった。

「うちの部に入りたければそれなりの実力を付けてから来ることね! 楽器も持たないあなたにオーケストラ部に入る資格はないわ!」

 何すかソレ……。ここ学校の部活だよね? プロとかじゃないよね?

 

 そして、この時点でまだ『素敵なセンパイ』の顔すら見られていない。

 これは年下少年から始めるべきなのか、とサッカー場に向かう。

 いかにもショタ萌えしそうな、やわらかそうな髪の毛の天使顔美形の男の子が楽しそうにサッカーボールを蹴っていた。

 周りには女の子が群がっている。


「佐藤くーん!」


 佐藤……。

 いや、全国の佐藤さんには悪いけどさ。

 梨佳。もうちょっと派手な名前つけようよ。


 そして佐藤くんにはやっぱり近付けない。

「佐藤くん親衛隊に入りたかったら、入会金を払いなさい!」

 と親衛隊のハチマキをつけた女の子たちに阻まれてしまった。

 あのう、これってカツアゲでは。


 何、この攻略対象キャラに近付くことすら出来ない乙女ゲー。

 ムダにストレスたまるんですけど。


 入会金を払うにも手持ちのお金がない。バイトを探す。

 バイトの種類はやたらに多かった。近所の飲食店から、書店員だの事務員だの、老人介護施設だの。モデルとか華やかな仕事もあるけれど、何となくバリエーションを作るべき方向性を間違えている気がする。

 

 とりあえず普通にファミレスのバイトを始めた。しかし、これが失敗だった。

 週二回の契約のはずなのに、やたらに『今日入って』とイレギュラーな出勤を強制される。そして放課後ガッチリ拘束される。攻略対象キャラに近付く暇もない、バイト漬けの毎日(ゲーム内時間)だ。

 ひたすら学校とバイト先を往復するだけで、恋愛に何の進展もないまま(というか、攻略対象に接近すらできないまま)夏休みに突入してしまった。


 マズイ。これは失敗パターンである。


 今からでも何とか出来ないかと、たまたまバイトに呼ばれなかった日に町を歩き回ってみる。

 期待していた攻略対象キャラとの偶然の出会いとかはなかったが、街角である店を見つけた。


 楽器店・笛吹き ~レッスンもやってます


 これだ! 

 ここで楽器を手に入れ、レッスンをしてオーケストラ部に入り、素敵なセンパイに近付くのだ!

 私は店に飛び込んでフルートを買い、レッスンの申し込みをした。

 バイトは辞める。ゲーム内でまで仕事に縛られたくない。ていうか何なんだ、あの設定。


 そして、私はゲーム内で毎日(ゲーム内時間)フルートの練習をした。

 これもミニゲームになっていて結構楽しい。音感を試されたり、指使いを覚えたり。

 先生がイケメンの攻略キャラなら良かったのだが、女性キャラだったのが少し残念。

 そして、だいぶ上達したと思った頃。


 ゲームは唐突に終了した。


 寒々しい部屋に帰ると、一通の手紙が来ている。

『今月の学費・家賃の納入がなかったため退学。部屋も立ち退きしてもらいます』

 そして視界いっぱいに現れるGAME OVER の赤い文字。


 強制ログアウトされ、棺桶の中で目を覚ました私は思った。

 ホントに何なんだ、このゲーム。

 聞いてないよ! 



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