37 プレイ解析第5回
「はい、おつかれさまー」
梨佳が私を起こしてくれる。その顔をにらまずにはいられない私だった。
「あのさ」
「何?」
「今回は何がダメだったの?」
やっぱり体育祭が分かれ目か。前回と同じキャラだから、同じイベントで攻略なんて考えが甘かったのか。
「あー、うーん。まあケガが直接の原因ではあったんだけど」
梨佳の言葉は歯切れが悪い。
「根本的な原因はアイドルとしての人気不足かな」
歯切れ悪い割にハッキリ言うね!
「つまり、私が音痴なのがダメだと?」
「そういうわけでもないのよ」
「アバターが地味だから? もっと美少女に作れと」
「それもなくはないけど、それだけではないのよ」
何だそりゃ。
「梨佳、ハッキリ言いな」
私はつい本気で梨佳を問い詰めてしまった。
「な・に・が・原因だったわけ?」
「んー。だからね、人気不足よ」
梨佳は言った。
「歌がうまかったり、アバターが男の子受けしそうな美少女だったりすると一応初期値は上がるんだけど。ただ人気ってそれだけではないでしょう? だからアイドルのイベントごとに乱数計算して、LUCK値を出してるのね。それに初期値と今までの集客実績を総合して、アイドルとしてのパラメータを上下させてるの」
面倒くせー。無駄に面倒くせー。そんな計算してたのか。
つうか、このゲームやっぱり力を入れるべきところを間違えてない?
それにしても。
「ということは、今回の私は徹頭徹尾運が悪かったというわけ?」
「そうねえ。初期値も高いとはいえなかったけど、LUCK値も上がらなかったよね」
「ちょっと待って」
私は言った。
「そうするとつまり、このルートは運さえ良ければ攻略できるわけ?」
そして運が悪ければ攻略できないのか?
「一応、初期値がかなり低くてもLUCK値最高が出続ければ攻略可能な設定にはなってるよ。ホラ、芸能界って可愛くて実力があれば絶対に売れるってわけじゃないでしょ。現実だと本人の魅力とかもあるんだろうけど、その辺りまで数値化すると複雑すぎるからそこをLUCK値にゆだねてみたわけ」
むむ。確かに、必ずしも美男美女だけが人気者とは限らないが。
「でもそれ、最初のアバターで初期値が決まっちゃうってズルくない?」
「まあね。でもこのルートではLUCK値の方が影響大きいから。それに初期値パラメーターはオシャレに力入れたりとか、お客さんに対する営業頑張ったりすれば上がるようになってるよ」
「そうなの?!」
つまりアレか。元がイマイチでも、化粧美人になればカバーできると?
無駄に奥が深いな。
「けど、女子高生なのにBBA扱いっておかしくない? どうにかならないの」
「ん? あの辺、ライブアイドルヲタのうちの兄の監修入ってるんだけど」
まさかの身内監修入ってた!?
「待って。梨佳のお兄さんって、一流大学出て一流企業入ったエリートじゃなかったっけ?」
「エリートかどうかは分からないけど。会社が休みの日は秋葉原行って、一日中ヲタ芸やってるみたいだよー」
困るよね恥ずかしいよ、とこぼす梨佳。
私は、人間って学歴じゃないんだなーとしみじみと思った。
「それにね、咲」
どうした梨佳。何か笑いが黒いよ?
「女子高生だけが万能じゃないって思い知ってもらいたくて。中学生や小学生から見たら、女子高生なんてオバサンよ?」
梨佳ああああ! 何があったあ? 女子高生との間に一体何があったのさ。
コワイよ梨佳! コワすぎるよ!!




