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17 伊藤くん攻略 小休止

 というところでお昼になったので、いったんログアウトして休憩。

 毎日毎日梨佳におごらせるのも悪いので、今日は私が二人分のお弁当を作って来た。

 といってもサンドイッチなんだけど。

 梨佳みたいなカワイイお弁当とか作れない自分の女子力のなさに、失望する今日この頃である。


「おいしいよー」

 と梨佳は嬉しそうに食べてくれるが。ちなみに室長が外にお昼を食べに行っていないので、彼女はご機嫌である。

「ゴメンね、手抜きで」

 恐縮する私。ジャムサンドとハムサンドと卵サンドとツナサンドという、大変簡単なメニューですからね。ジャムサンドなんかパンにジャムぬっただけだからね。


「そんなことないよ。この卵の塩加減とか、すごくおいしいよ。咲、味付け上手いよね」

 梨佳……アンタ時々天使だよ。基本は電波な天然だけど。



「ところで梨佳」

 食事が終わったところで、私は聞いてみる。

「伊藤くんって、攻略対象でいいんだよね?」

「えっ?」

 目を丸くした梨佳。

「ダメ。言ったらネタバレになっちゃう」

 いや。バイトとはいえ私もスタッフだし。


「咲には、あの世界を思いっきり楽しんでほしいのよー」

 とか梨佳はおっしゃいますが。

 逆に楽しめないんだけど。これで伊藤くんが攻略対象じゃなく、無駄な攻略を繰り返した挙句に何事もないノーマルエンドを迎えようものならその衝撃は致死量に達するであろう。


「誰が攻略対象か分かるようなシステムは必要だと思うんだけど」

「えー。分からないところがいいんだよー」

「せめて、関わり合いを持つようになった時に攻略キャラかそうでないか判別がつくようにしてほしい」


 だってさ。私は梨佳の好みを知ってるから、まだ『この辺か?』と見当をつけることが出来るけど。

 一般のお客様は、コイツがどんな種類の天然電波か知らないわけですよ!

 ノーヒントで攻略対象発掘とか、絶対ムリだと思う。



「最後まで分かんない方が面白いと思うんだけどな」

 梨佳は不満そう。

「あのさ。プレイする方にしたら、最後までやってみて攻略対象じゃなかったら徒労感ハンパないよ」

 私の使命がツッコミにあると分かったからには、必要なことは言わせてもらう。将来の、この会社に降りかかるであろうクレームをひとつでも減らせるように。


「むー。そうかなあ。一応、咲の意見はテストプレイの感想として記録して報告するけど。室長に」

 と言って梨佳は不味いものを食べたような顔になる。思い出すだけでイラつくらしい。

「ウン。お願い」

 そして今からでも修正できるなら修正して。


 かなり渋ったが、伊藤くんが攻略対象の一人であることを最後には梨佳は教えてくれた。

 やっぱりね! そうだと思ったよ。

「いいところに目を付けたな、って思ってたんだ、実は」

 ネタバレしてしまうと、梨佳は少し饒舌になる。

「伊藤くんはシナリオが何種類かあって、いろんなやり方で攻略できるキャラだから。楽しみにしてね!」

 そうですか。あのキャラにそんなに愛を注げるアンタの気持ちが私には分からんよ。



 で、午後のダイブ。

 電機量販店のバイトは簡単に決まった。シフトは月・水・金の放課後。忙しい時は土日も頼むかもしれないが、その場合は時給に色を付けてくれるとのこと。

 シフト変更の可能性を初めから言ってくれる、そして土日手当を付けてくれるだけ最初のファミレスより優しい。つうか、あの店が最悪過ぎたよね。


 よし。これで伊藤くんとの接点がきっと出来る。

 女子高時代、乙女ゲームをやりまくった私のスキルを今こそ生かしてみせましょう!

 待っていなさい伊藤くん。この私が、あなたを落としてみせますからね!


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