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115 雪だるまを作ろう ~小林トゥルーエンド

「山田さん。山田さん」

 小林の声で、起こされた。

 んー……寒い。でも、カーテンの向こうは明るい。

「ねえ。雪だよ。雪が積もってるよ」

 声がはずんでいる。えーと、うーん、昨日、どうしたんだっけ?


 なんとか説得して、アパートに連れ込んで(語弊)。

 もともと鍋で釣るつもりだったから、買い込んであった食材を二人でたらふく食べて。テレビのバラエティを見て笑って、アンジェリカのブラッシングをして、おしゃべりして、小林がアンジェリカのお風呂に再挑戦して、噛まれて、その手当てをして……。


 いっぱい騒いで、いっぱい笑った。隣りから苦情が来るんじゃないかと思うくらいに。そういえば、このアパートの他の住人って出てきたことがないから誰が住んでいるのか知らないけど。それでも心配になるくらいに大騒ぎしてしまった。


 そして……そして、途中から記憶がないな。

 最後に鍋にうどんを投入して、つゆまで全部食べて。体が温まったところで、こたつで寝落ちしてしまったやつか、これは。

 アンジェリカ、アンジェリカは……。ああ、大丈夫。ちゃんとケージの中で毛布にくるまっている。


 時計を見ると、朝の七時。この時間に小林が部屋にいるっていうことは……お前、またお泊りしたのか。また一緒に寝落ちか。アパートに来るまではあんなにぐだぐだ言っていたくせに、うかつなやつ。そんないい加減なことだと、人生を失敗するぞ。


 念のために言っておくが、あやしい展開とかはなかったから。これは健全な全年齢向けゲーム。二人で寝落ちして、ただグーグー眠っていただけである。色気のないお泊りイベントだな!


「ねえ、起きて。すごいよ。すごく積もってるよ」

 小林はまだ窓の外を見ている。テンションの上がった犬か。そういえば、昨夜の十時ごろから雪が降りだして、『積もったらいいね』なんてそのときも話していたのだけれど。

「起きてますよ……」

 私はもぞもぞと身を起こした。


「おはよう! ねえ、外に行って雪だるまを作ろう!」

「何で朝からそんなにテンションが高いんですか……」

 私は伸びをしてあくびをする。

「ちょっと……こたつで寝ちゃって、体が痛いし声もガサガサしてるから……。熱いシャワーを浴びて着替えてきますから、それから朝ご飯を食べましょう」


「えー。早く雪だるまを作ろうよ」

「ご飯を食べてからです。アンジェリカにも朝ご飯をあげなきゃいけませんし」

「ああ、そうか。おーい、起きろー、アンジェリカ」

 アンジェリカも起こそうとする小林。けど、そうか。昨夜、あんなに大騒ぎしてお風呂に入れたのに、今日すぐに雪でびしょびしょになるのか、アンジェリカ。


 まあ、いいや。シャワーに入って目を覚まそう。

 そして小林。お前は女子の部屋に泊まったというのにどうしてそんなに平常心なんだ。晴とのお泊りだって、もう少ししっとり感があったぞ。

 まるで夫婦だよ、これ。ずっと前から一緒に住んでいたみたい。


 とか言いながら、私もあんまり気にせず裸になってシャワーを浴びるのだった。相手、小林だしね。ロマンティックとかより、これくらいの距離感のほうがらしいよね。

 ちなみに、今日は土曜日で学校は休みである。カレンダーの曜日は、ニューデータを作るたびにランダムで変わる。


 シャワーから出ると、起こされたアンジェリカが小林に吠えまくっていた。楽しそうだね、アンジェリカ。遊び相手がいて良かったね。

 ということで、アンジェリカの相手は彼に任せて私は朝ご飯を作る。

 トーストと紅茶、ベーコンとスクランブルエッグにレタスとトマトのサラダという簡単なものだけど。


 ちなみにアンジェリカは、自分より先に小林に食事が供されたことに抗議し続けていた。

 愛犬よ。認めたくないかもしれないが、お前は犬で小林は人間なのだ。その一点で、小林はお前より上位の存在なのである。頂点に立つのはもちろん私だけどね。



 そして私たちは一緒に朝食を食べ、早朝の冷たい空気の中を河川敷まで行って存分に雪遊びをした。

 あのクリスマスの約束を、会えなかったひと月半を取り戻すように遊びまわった。

 昨日とは一転して晴れ渡った空から降り注ぐ陽光が、積もった雪に反射してキラキラとまぶしく輝いて……。


 気がつけば、青空に『TRUE END』の文字。

 真っ白な世界が、笑っている小林が、跳ね回っているアンジェリカがだんだん光の中に溶けていく。

 そして気が付くと私の意識はリアルに戻り、棺桶のごとき筐体の中でひとり横たわっていた。




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