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10 マスター攻略 クリスマスイベント

 買い物を終えて戻って来る頃には、少しは落ち着きを取り戻した。

 店に戻ると上下スエットに着替えたマスターがいる。

 昨日プレイした時は気にもしなかったんだけど、もしかしてコレって攻略相手のいつもと違う姿が見られるとかいうイベントなのか?


 いや、でもさ。

 普段のマスターはぴしっとアイロンがかかった白ワイシャツに黒いタイ、黒いスラックスという姿でそれが結構決まっているわけよ。

 しかしスエットになっちゃうと、単なるオジサンの普段着にしか見えん。

 いつも見ている姿の方がカッコいいお着替えイベントって、どうなのさ。


「ありがとう。山田さんのおかげで助かりました」

 スエットになってもマスターはやはり紳士だ。あと三十歳若ければ、どストライクなのだが。

「いえ。ゆっくり休んでください」

 やっぱり距離が近くなると焦るな!

 待て自分。ホント五十代は範囲外だから。落ち着け!


 お別れを言って店を出る。

 くそー。あんなイベントとも言えないイベントでドキドキしてしまった自分が悔しい。

 梨佳のシナリオのせいじゃないからね! VRの現実感にビックリしただけだから!


 

 で。ゲーム内時間は進むが。

 やはり、これと言って進展があったように思えん。

 確かにマスターはあれ以来、

「こんにちは」

「お疲れさま」

 以外の言葉も頻繁にかけてくれるようになった。


 と言っても、

「ジャズ、好きですか」

 とか。

「コーヒーは何が一番好きですか」

 とか。

 ぽつりぽつりと聞かれるくらいなのだが。

 

 答えるとウンウンと穏やかな顔でうなずくばかり。

 フラグが立った感ゼロなんだけど。


 そして今さらなんだけどこのゲーム、自分のパラも相手の好感度パラも見られないんだよね。

 数字で分かるのは預金通帳と学校の成績表(とテスト)のみ。

 相手の好感度は反応で感じ取るしかない。


 パラが命の乙女ゲーで、これはどうなのよ。

 梨佳は『パラメーターをコントロールして』とか言っていたけど、そのパラを見られないんじゃどうコントロールしろというのか。

 行動も選択肢ではなくその場その場で自分で考えるしかないから、自由度高すぎて逆にどうしたらいいのか全く分からん。

 梨佳が口をすべらせなかったら、マスターが攻略対象だなんて一生気付かなかった気がする。


 このゲームでフルコンプとか、ものすごく難しい課題に挑戦している気がして来た。


 

 季節は秋から冬に移るが、これといったこともないまま日々は進む。

 考えてみれば、これだけやってまだ一度もデートイベント起こってない。あらゆる意味で斬新すぎる、このゲーム。


「クリスマス、大丈夫ですか?」

 マスターに聞かれた。

 その日は混むから入ってくれと前々から言われていたし、今回はマスター狙い一本だから躊躇せずうなずく。


 そしてクリスマスイブの日。

 フツウにバイト。

 フツウに忙しい。

 働いただけ。


 お店が終わった後は、

「おつかれさまでした。今日は忙しかったですね。山田さんのおかげで助かります」

 とマスターがねぎらってくれる。

 昨日のプレイと大して変わらん。


「お礼にケーキ食べて行きませんか? コーヒーも付けますよ」

 とマスターが言ってくれる。これも昨日と……。


 ちょっと待て。

 まさかコレ。

 クリスマスイベントかー!?


 マスターが好きなケーキを選ばせてくれる。そして、私が前に好きだと言ったコーヒーをいれてくれる。

 二人きりの店内で向かい合って、黙ってケーキとコーヒーをいただく。

 マスターが好きなジャズが店内に流れている。

 言われてみれば、確かにビミョウにいい雰囲気なんだけど。


 ビミョウすぎるわ!!!!!


 分かるか! こんなもん!

 乙女ゲーとしてどうなの、これ! ルートに入ってるなら、もっと盛り上げようよ!!


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