八雲怪談①
気づけば蝉の鳴き声が弱々しくなっていた、ある夏の夕暮れ時である。
蒸し暑く西陽が俺の部屋を照らしている。
机の上には山のように出された学校の宿題と、漫画本が散乱していた。
俺は椅子に掛けておいた学ランを押入れに入れようと後ろを振り向く。
すると突然、襖から血の通っているとは思えない真っ白な腕が、にゅうっと這い出てきて俺の腕を掴んできた。
俺は不意を突かれた恐怖のあまり、そいつの腕を掴み返して得意の合気道で投げ飛ばしてしまった。
そいつは畳の上に、投げ出されボキッっという鈍い音を立て首が異様な方向へねじ曲がった。
白装束に長い黒髪のといういかにも典型的な女の霊はねじ曲がった首のまま
「いしゃりょぉーよーこおーせぇえー」
と叫びを上げながら、少し距離を置き、こちらの方へ這い出てきたのだ。
なぜ少し距離を置いたのかわからなかったが
「今のわざとだろぉ。もうネタは分かってんだこっちはよぉ!」
と、言ってやると、霊はいそいそ押入れの中へ帰って行った。
二時間ほど待っただろうか?そいつは恐る恐る襖を開け這い出して来ようとしたため、大量の塩をぶっかけて成仏させてやったのである。