名無し人
気付いた時には自分が自分ではなかった。
もう私の知っている私でもなく、周りの知っている私でもなく。
十数年、生きてきた私の名を誰も呼ばない。
私も知らない私になっていた。
ふと気付いた自分が、自分では無くなって居たけれど居心地が良かった。
このまま私は、この私として生きていくのか。元の私として生きていくのか。そんな事を考えた事もあった。
自由に生きたいからここに居る。広いように見えて狭いこの空間。
自分というものはとうにない。
今まで生きた名と、作られた名と。でも私はどちらでもない。名も無い。形だけ在る何もない物だ。