02:悪友が新入生をロックオンしたようです
リヒトは変人だ。
私が入学してから四年経ったが、その印象は今も変わらない。
※
「うふふふふ、今年も美味しそうな子が揃っているわね……」
今年の新入生は特にレベルが高い。
昨年度の生徒がマズくて不評かったから今年は特に美味しそうな子達を寄せ集めたのだとか。
さっき、その仲でも特に美味しそうな子を見つけたわ。
栗色のふわふわしたセミロングの髪の女の子。
彼女は要チェックだわ!
リヒトの退屈な挨拶を聞いていたら、どこからともなく良い香りが漂って来た。
今までに嗅いだ事のない、甘くてお上品なフローラル系の匂いだ。リヒトが好きそう。
お互いの好みは大体把握している。
吸血鬼同士の獲物の取り合いは刃傷沙汰になる事もあるので、出来る限り穏便に済ませるための知恵だ。
匂いのする方向を見たら、金髪に淡い紫色の瞳の女の子が立っていた。
……今年の主席かしら。
しばらくすると、彼女はリヒトと交代で壇上に上がった。
やっぱりあの子、美味しそうだわ……。
でも、リヒトの出方を伺っておいた方が良さそうだ、奴とガチバトルはしたくない。
「今年の新入生、やっぱりレベル高いわね」
それとなく様子を探ると……
「あの子は俺が貰うから、手を出さないでよ」
やっぱりね、アンタの好みのど真ん中だもんね。
うわぁ、早速マーキングしているわ……。
離れているからそれほど強力じゃないけれど、リヒトが唾付けているとハッキリ分かる。
これであの子に手を出すのはよっぽどの命知らずかバカだ。
私は、そのどちらでもない。
※
渡り廊下で盛大に転んで血を流している女の子を見つけた。
私の大好きなスッキリフルーティー系の血の匂いだ!
それは入学式に美味しそうだと思った栗色の髪の女の子だった。
「ラッキー」
ハンカチを貸すついでに、しっかりマーキングしておいた。
それ以来、彼女は私に懐き、私を見かけると走って来るようになった。
……やだ、可愛い。
※
ある日、生徒会室にいくと、リヒトが生徒名簿やら何やら資料を積み上げて、お気に入りの彼女についての情報を片っ端から調べていた。
入学式のあの子はリルちゃんという名前らしい。
本当にどん引きだ。
「やだきもーい、ストーカー?……職権乱用して生徒名簿までのぞいちゃってさぁ」
「何言ってるの?気になる子について調べようと思うのは当然の事でしょう?」
キモいという自覚も無いらしい。ダメね、この男は。
あら、あの子の名前もあるわ。
私は便乗してミミちゃんという女の子の個人情報を頭に叩き込んだ。
ついでにリヒトにミミちゃんについての情報を流しておいた。
今後、リルちゃんの情報と引き換えに何か教えてくれるかもしれない。