01:私達について
真相編その2です。
6/18 誤字、改行を修正しました。
吸血鬼の社会は、先祖に始祖を持つ王族を頂点とする縦社会だ。
私は人間の血がいっさい混じらない純血種の吸血鬼で、私の家は吸血鬼社会における貴族だった。
吸血鬼の社会の中では、上位にあたる。
上流階級の吸血鬼達は古風で保守的だ。
故に、幼い頃から厳しい環境で自分を律しながら生きていなければならなかった。
そんな環境に、私は……十数年で挫折した……。
家を飛び出し自由に狩りを始めた私は、それから好き勝手生きた。
……で、野良吸血鬼となった私が辿り着いたのが、ここノワール・シュヴェルツェ学園という訳だ。
ここは吸血鬼が隷属や餌を穏便に手に入れる為の隠れ蓑の一つだ。
世界にはこういう吸血鬼用の施設がいくつかある。
表向きは人間用の教育機関だが、裏では隷属生産施設や養成施設も兼ねている。
あと、餌場。
そこで出会ったのが、学園の総責任者という名のお飾り……リヒトだ。
リヒトも純血種で、吸血鬼社会での王族の血を引いている。
ただし、彼自身は王家とは関係なく生きている。
吸血鬼は長寿な上に子沢山で、子供は全て卵から孵る。
しかし、知らないうちに卵から勝手に孵って外に出て行ってしまう者が多いから、もういったい誰が何なのか収拾がつかなくなっているのだ。
吸血鬼の赤子は、放っておいても生きていける。
生まれながらに自由に歩き、空を飛び、吸血する術を持っているのだ。
そして、彼ら特有の放任主義と自堕落な性格がさらに収拾がつかない事態を助長させている。
リヒトも卵から勝手に孵ってフラフラしていたクチだろう。
吸血鬼同士は血の匂いで何となく相手の系譜が分かる能力があるので、そんな状態でも特に困っていない。
大体が分かれば良いのだ、大体が。
この学校は、その昔リヒトの友人が建てたのだそうだ。
その友人は、途中で経営がめんどくさくなったのか、数年前フラリと遊びに来たリヒトに理事長の役を押し付けて行方を眩ませてしまったらしい。
仕方ないので彼は一年間理事長をしていた。
しかし、つまらないとの理由で殆どの仕事を部下に投げて生徒に混じって遊び始めた。
生徒会長として最低限の仕事だけを引き受けて。
……それが彼の今の姿である。