03 嘘じゃない、疲れてない!
スナイプたちはゼンセンの町の入口に到着したが、門はしっかりと閉じていた。
スナイプの身長の倍以上ある門は金属版で、向こう側は見えない。
「入れないの?」
スナイプはサクルに言った。
「誰か! スナイプ王女をお連れした! 門を開けてくれ」
ややあって、声がした。
「まだ撃退作戦は実行中です。門は開けられません」
門の上の方から聞こえる。
スナイプが顔を上げると、外壁の一部に人が立っていた。手すりもついているようだ。そういう設備らしい。
あれが門番なのだろうか。
「魔族の部隊は、すでにリーダーを失って統率は取れていない! 第一種戦闘状態ではない!」
サクルが言う。
「どこ情報ですか? そんな報告入ってませんけど」
「わたしが自分で、魔道具の望遠鏡で確認した!」
「そんなもの王都にしかないでしょう」
「王女が敵リーダー射ぬいたのだ!」
「はあ?」
上の人間は、下からは見えないが近くにいる誰かと視線を合わせて、肩をすくめるだけだった。
「いいからさっさと開けろ! ここに魔物がいないのはお前たちから見てわかるだろう!」
「サクルさん。いつも『そういう、規則をねじ曲げる判断がヒューマンエラーを生む!』っておっしゃってるじゃないですか」
「む、むむむ!」
サクルが拳を握って震わせている。
「でも、私たち、もうここまで来てしまっているのだけれど、危険ではないの?」
スナイプの言葉に、門番、サクルが言葉に詰まる。
「王女様、ですか?」
門番が言った。
「ええ」
「であれば……、入っていただいたほうがいいな?」
裏で門番会議が行われたようだった。
「開けます! 急いでください!」
まだ門は腰くらいの高さまでしか上がっていなかったが、スナイプとエスタはしゃがみながら中に入った。
すぐ門が閉じられる。
「ここがゼンセンの町です」
サクルは言った。
通りはほとんど人通りがなく、商店もあるが閑散としている。
王都のにぎわいを見慣れていたスナイプとしては、大通りがすでに、裏路地の雰囲気のようにしか思えなかった。
「人がいませんね」
スナイプは素直な感想を言った。
「町の人間は、この町を死守するために活動をしています。日中は任務につき、このあたりに活気が出るのは夜でしょう」
「塀はそれほど高くないですね」
入口でも思ったが、高いのは高い。でも、はしごをかければ登れるだろう。
「はい。魔物は奥の山からしか来ませんから、塀を高くする意味がないのです」
「それも、魔法を防ぐ仕掛けとか、そういうものですか?」
「そうです。戦いというものは、事前の準備が大切なので。これから宿にご案内します。今日はそこでお休みください」
「……サクル? なにをしてるんだ」
通りからやってくる人がいた。
背の高い男で、鎧を身につけ剣を腰に差し、戦いに出かける準備が整っていた。
「隊長!」
サクルは足をそろえた。
「王女を迎えに行く任務はどうした」
「お連れしました!」
「なにを言っている? 第一種戦闘状態だ! 危険が及んだらどうする!」
「いえ、ですが」
「仕方ない。宿にお連れしてお前が警備にあたれ! すぐに行け!」
「ですから」
「早くしろ!」
「戦況を変える大変な発見がありました!」
「? なんだ、言ってみろ」
「王女が魔族のリーダーを弓で狙撃することに成功いたしました! これにより、状況は二種、あるいは三種戦闘状態になったと考えられます!」
やや間があって、隊長、はスナイプを見た。
それからうなずく。
「わかった。王女を宿にお連れして、お前はそこで警備にあたれ」
「いえ、わたしは第三部隊に合流します!」
「お前は疲れてるんだ。おれも、今週はお前に仕事を振りすぎてしまったな。今日はもういい」
ぽんぽん、と隊長はサクルの背中をたたくと、来た道をもどっていった。
「なんだかわからないけど、大変ね」
スナイプも、サクルの背中をぽんぽん、とたたいておいた。




