二十一
午後、校医が緊張による胃腸の不調、身体に問題なしと確認し、保健室を出る許可。
でも教室には戻らず、トイレの個室に隠れ、朝用意したパンを急いで食べ――味はしない、心はパニック。
制服のシワを整え、担任に連れられ教室へ。
クラスは20人ほど、道中で先生が、普段は各々の専門練習室、楽理や文化科目で集まると。
「明花さんが早く馴染めるよう、気の合うバンド仲間を見つけるため、簡単な自己紹介をどう?」
先生が優しく笑う、でも私の手は震え、恐怖が潮のように押し寄せる。
たくさんの目が一斉に、私が何を考えてるか分からない――朝吐いた変人?黙って陰気?逃げたい、足は鉛、汗がシャツの背を濡らす。
助けて…東京に戻るの後悔、母に電話して学校行くと言ったの後悔。
こんな社交、今の私には無理。
どうする?逃げる?今教室飛び出したら、もっと変?
「新同学、ちょっと恥ずかしそう、いいよ、先生が紹介するね。」
先生が助け、チョークが黒板を擦り、「シャシャ」と。「山葉明花さん、身体の理由で長い間学校生活できず、内向的…皆、よろしくね。」
身体?精神的な理由でしょ。
先生は私の顔を立て、真相を隠す。
席は最前列、先生が見やすいように、でも私は後ろの窓際を指す――東京ドームが見え、視界が開け、視線を避けられる。
先生は「教室は授業で変わる」と、でも私は明日も隅を狙う。
席を調整し、先生が厚い学校ガイドを渡す。「これ見て、環境に慣れて、分からないことあればいつでも聞いて。」
ガイドをめくり、子供時代を思い出す――姉がこの学校に行きたがり、「ピアノ室が家の部屋より広い」と、でも両親は「音楽に未来なし」と反対。
ここは音楽を愛する者の憧れ――文京区にそびえる40階の超高層ビル、ガイドのゾーン分けに驚く:
- B4-B1:後方支援(駐車場/機材倉庫、完璧な防音、上階の騒音遮断)
- 1F-3F:大型モール(音楽芸術店舗、学生証で7割引)
- 4F:総合ロビー(校史展示、バンドポスター壁)
- 5F-7F:文化科目教室
- 8F-9F:専門教室(楽理/作曲/音楽史)
- 10F-12F:練習層(最新機器の個人/複数練習室、予約制)
- 13F-14F:録音スタジオ(外部アーティストに貸出、学生優先)
- 15F-16F:スポーツセンター(体育館/ダンス/ジム/ヨガ)
- 17F-18F:公演会場(小劇場/ライブハウス、学生バンド頻繁)
- 19F-25F:芸能事務所オフィス(簡易オフィス、提携事務所用)
- 26F-27F:行政層(学校・モール管理)
- 28F-33F:学生寮(広々単室、私は通学だが部屋確保済)
- 34F-35F:教職員寮
- 36F-40F:スカイガーデン(屋外休息/小型ステージ/東京ドーム展望)
- 最上階:ヘリポート(特別ゲスト/緊急用)
とにかく、ここに通うのは金持ちか名門育ちの「お嬢様」。
衝動で転校してきた私は、場違い。
後で知った、「開学」でも正式授業は1週間後。
この期間は新入生が環境や流れに慣れ、迷宮のようなビルで迷子にならないため。
先生の注意事項、あまり聞いてなかった。
ガイドの「17F公演会場」を見て、心が空虚――[青空]がいない、バンド仲間見つけても意味ある?もう会えない。
休み時間、教室が賑やか、同級生が三々五々話す、誰も私に話しかけず。
朝の嘔吐で「近づきにくい」、または1年以上の付き合いで固まった輪、私が「よそ者」。
何もせず、誰も相手せず、20人でも社交の圧力は限界。
先生の言う「スカイガーデン」、人が少なく、風に当たりたい。
立ち上がると、スマホが震え、姉のSMS:「学校どう?校長が周辺の土地買って音楽大学作るって、君、そのまま進学できるよ~」
返信する気力なし。
スカイガーデンには行かず、1階モールのスイーツ店、甘いものでドーパミンを出し、緊張を和らげる。
モール従業員は制服に慣れてるが、他校生や通行人が好奇の目、「学校の中どんな?ほんとに芸能人録音に来る?」と。
学生ガイドに「SNSで校内写真や詳細公開禁止」とあり、この名門校は神秘のベール。
慌てて頭を下げ、スマホを装う、制服脱ぎたいが着替えなし――朝、急いでギターバッグだけ。
皆が私を見てるか分からない、でも好奇の視線とモールの雑音、胃が痛む。
やばい、また吐く?初日2回吐いたら、退学考えるべき。
口を押さえ、トイレへ急ぐ、慌ただしい心。
楽器店を通り、視界の端に馴染みの影。




