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十四

午前3時、目を見開いてスマホの画面を見つめ、画面の光が天井に映り、覚醒させる。

昼夜逆転の生活で体内時計はめちゃくちゃ、この時間帯、頭が冴える。

アルゴリズムが私の心を読んだように、女子高生の日常動画を次々プッシュ――コンビニで限定おにぎりを奪い合い、屋上で弁当を分け合い、放課後に肩を組み週末のライブを話す。時折、女子バンドの公演映像、ステージで同世代が楽器を抱えて飛び跳ね、顔に当たる光が眩しい。

指が画面に浮き、「いいね」を押したいけど怖くて、開いては閉じるを繰り返す。

無関係な世界と知りつつ、何度も見てしまう。

この自虐行為、心の奥でそんな青春を憧れてるから。

スマホをベッドの端に投げ、顔を枕に埋め、布が息を塞ぐけど、感情は抑えられない。

学校にも行けない私が、人の日常を羨むなんて笑える。

時々思う、こんな生活、できるチャンスはある?

指が連絡先を彷徨い、母のトーク画面を開いて閉じ、「学校戻ろうかな?」「東京、最近暑い?」と打ち、消し、指が痛むまで繰り返す。

入力欄は空白、停滞した私の人生のよう。

こんな夜、何度も繰り返し、頭で千百回考えた言葉、完璧な文すら送れない。

§

その午後、ゲームのキャラをフリーポートの最高の鐘楼に登らせる。

塔の上から見ると、広場のプレイヤーは色とりどりのアリ、賑やか。

バックパックから重スナイパーライフルを出し、照準で広場の演奏チームを観察――ギタリストが木箱でリズムに乗り、キーボーディストの長髪がメロディで揺れ、ドラマーまでスネアを叩き火花エフェクト、音符が光るピクセルに。

《終末地》の面白いところ、職業の硬直な制限がない。

私の聖騎士がスナイパー、修女服のプレイヤーがエレキギター。

システムは「正しい」遊び方を気にせず、装備とスキルの組み合わせは自由。

指が無意識にWキーを押し、キャラが身を乗り出す、広場に飛び降りそう――でも手を離す。

遠くから見るのもいい、群衆に直面せず、ミスを恐れなくていい。

演奏に見とれていると、横で白光が閃き、[青空]のキャラが現れ、射手ライフルに持ち替え、私の真似で欄干に伏せ、銃を構える。

[青空]:PvPする気じゃないよね?

呆然、つい笑う――彼女が私に冗談、初めてかも。

[鳥の詩]:演奏見てただけ…バッグに徹甲弾入ってないし…

送信して後悔、真面目に答えすぎ、言い訳みたい。

[青空]のキャラが銃をしまい、立ち上がり、「フォローして」のジェスチャー。

[青空]:じゃあ…近くで見る?

指がキーボードで固まり、迷って半日、打ち込む:[鳥の詩]:やっぱりいいや…

チャットが静まり、[青空]が「入力中」を繰り返し、消える、何度も、言葉を選んでるみたい。

[青空]:実は…私たち、似てると思う。

[青空]:ライブハウスで会って、もっと確信した。

[青空]:君がうちの学校に来てくれたら…私はよく屋上で一人、人の行き来を見て。

[青空]:時々、欄干を越えたら、桜の花びらみたいに「パッ」と散るかなって…

[青空]:あ、私何言ってるの。こんなこと起きない方がいい、ははは。

[青空]:ごめん、急に変な話…

「ははは」が細い針、画面で刺さる。

あの夜、彼女の細い指が鍵盤で震えた姿を思い出す――流れるメロディの裏に、こんな抑圧された闇。

[鳥の詩]:大丈夫…私も…よくそう思う。

送信ボタンを押し、仮面を少し外したようにホッ。

[青空]:急だけど…学校行った方がいいと思う…

[鳥の詩]:どういう意味?どう分かった?

[青空]:目…行動心理学ちょっと勉強した…家が厳しくて…ははは

また「ははは」で終わり、今回は無理に隠してるみたい。

彼女の「屋上で一人」の話、厳しい家庭が彼女をコミュ障の枷に?

[青空]:実は…ライブハウスで一緒に演奏した時…

入力状態が長く、返信しないかと思った、最後に一文:

[青空]:楽しかった。

シンプルな3文字、飾りなし、画面で鮮明、小さな光が心に。

「私も」と打つ前に、システム:[プレイヤー[青空]がログアウト]

部屋が静まり、PCのファンの音だけ。

灰色のIDを見つめ、ライブハウスで彼女の口角が上がった瞬間を思い出す――数少ない、仮面を外した瞬間。

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