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十一

誉田十三子は助手席に沈み、両腕を組み、指でイライラと窓枠を叩き、関節が白くなる。

「またそのしかめっ面~」

黒澤初音は片手でハンドルを握り、もう片手で彼女の頬をつまんで軽く揺らし、銀の唇ピアスが街灯で光る。「知らない人は、私が3ヶ月分の給料滞納したと思うよ。」

誉田が手を振り払い、耳が赤くなり、視線は窓外の流れる街灯へ。「あのギター弾いてる子…まるで昔の自分を見てるみたい。」

少し間を置き、声が柔らかくなる。「ただ…あの頃の私は刺青だらけで街でケンカ、彼女は飼い猫みたいにおとなしく、声も大きく出せない。」

黒澤初音がくすっと笑い、ハンドルを軽く回す。「どうした?人生の師匠にでもなる気?それとも…」

彼女はわざとゆっくり話し、目にからかいが。「銀座のクラブで…私を拾ったみたいに、弟子を拾いたい?」

「黙れ!」誉田の耳が真っ赤、焦って言い訳。「私…急に思い出した、ネックレス、スタッフ室に忘れた!今すぐ引き返して!」

黒澤初音が眉を上げ、嘘を突かず、ゆっくりウィンカーを出す。

§

ライブハウスでは、[潮鳴り]が突然立ち上がり、ドラムセットに大股で向かい、ドラムスツールにどっかり座る、まるで我が家。

不思議…話すのにためらうコミュ障3人なのに、みんな音楽家の魂。

彼女がドラムスティックを握り、スネアとバスドラムを軽く叩く、「ドン、ダ、ドンドンダ」のリズムが軽快なジャズ風に流れる。

[青空]の指はいつの間にかキーボードの上、節拍に合わせて軽く鍵盤を叩く。私は無意識にギターのCコードを押さえ、指先が弦に触れ、次のビートを待つ。

この暗黙の了解…まるでゲームで何年も固定パーティ組んだ親友、言葉なしで次の動きが分かる。

[潮鳴り]がスティックを上げ、派手なソロや見せびらかす前奏なし、4つのクリアなバスドラム:「ドン、ドン、ドン、ドン。」素朴な心拍の信号、3人の呼吸が一瞬で同期。

それでいい…音楽は純粋、媚びず、社交も無理せず、リズムに乗り、感情をメロディに溶かす――私には最高の救い。

[青空]のピアノが最初に続き、柔らかい鍵盤音がドラムを包む。私は4つ目のドラムの余韻で弦を弾き、ギターの音色が隙間を埋める。

§

黒澤初音がスタッフ室のドアに寄りかかり、煙草の火が闇で点滅。

「ほら。」彼女が誉田十三子に煙の輪を吐き、得意げ。「余計な世話はいらない…自分たちで『コミュ障バンド』組んでるよ。」

舞台の私たちは即興に没頭、ギター、キーボード、ドラムの音が絡み合い、完璧じゃないけど自由な雰囲気。

「惜しいね…」黒澤初音が目を細め、私に視線。「ボーカルがいない。彼女にギターと低音を両立させるのは…酷すぎる。」

彼女が靴先で誉田のすねを軽く蹴り、軽快な口調。「ねえ、十三子!そっちに…いいボーカル、年近い子で騒がしくないの、いる?」

誉田が煙でむせ、咳き込む。「は?なら…ゲームで探せばいいだろ?」

灰を弾き、目に狡猾な光。「《終末地》が今バズってるんだ、歌えるプレイヤーなら簡単に見つかる。それに…」

彼女が黒澤初音の耳元に寄り、声を下げ、神秘的に。「この3人…俺たちの『灰烬』ギルドのメンバーだろ、会長~」

黒澤初音の目がキラリ、笑って煙草を消す。「なるほど、手間が省けたね。」

§

音楽が止まり、ギターを抱え、胸が激しく上下、汗が前髪から琴身に落ち、小さな濡れ跡。

その時、スタッフ室への影に、2つの見慣れた人影がほぼくっついてる――黒澤初音がハイヒールの先で誉田のすねを怠惰に蹴り、口角に笑み。

これ…イチャイチャ?

一瞬固まり、定身魔法のよう、息も止まる――今声出したら、口封じされる?

黒澤初音が私の視線に気づき、ウィンクして人差し指を唇に当て、「シッ」。

彼女が誉田の襟を引っ張り退場、ドアで背を向けて手を振る。

突然、ポケットのスマホが振動。[青空]がグループにスクショ:

[大鶏鶏炸鶏店:注文詳細]

[大鶏鶏キッズチキンセット×3]

[大鶏鶏ハニーデュウコーラ×3]

[金額:xxxx円]

[青空]:私が奢る。

[潮鳴り]:チキンにコーラ!さすがヒーラー!天使!!(ハート絵文字×3)

[青空]:…誰がデリバリー受け取る?

空気が固まる。

[潮鳴り]が首を縮め、打ち始める。「配…配達員にドアに置いてもらうのは…」

彼女を見て、[青空]を見る――[青空]も頭を掻き、目を逸らす。

3人が目を合わせ、揃って頷く。

やっぱり全員コミュ障…デリバリー受け取るにも30分のメンタル準備が必要。

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