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第二話 〜変化〜

 どれだけの時間が経ったのかわからない。

 ずっと泣いていた。

 ようやく幸せな家庭を手に入れたと思ったのに、最悪の形で壊れてしまった。


 お母さんは無事だろうか……?

 白髭の男の態度が僕とお母さんでは明らかに違った。

 無事でいてほしい——そう願うしかない。


 それにしても、この木の箱はまったく開かない。

 押しても、ずらそうとしても、びくともしない。

 僕が子供だからなのか、それとも——何か別の力が働いているのか。


 内側は白く、呪文のようなものが書かれている。

 意味があるのかもしれない。

 ……いや、それどころじゃない。


 この先どうなる?

 誰かに発見されるのか。

 されないのか。

 もし見つかっても、この箱は開けられるのか……?


 頭の中にさまざまな考えが渦巻く中——


 ——それは、突然訪れた。


「ボコォォォン!!」


 ——??


 突然、木箱が崩壊した。

 あのクソ白髭、時間で壊れるようにしていたのか!


「沈む! 溺れる!」


 予期せぬタイミングで箱が壊れたせいで、息がますます苦しくなる。


 ——あああ……。


 もうダメだと思った、その瞬間——


「ガッ!ゴオオオオオ!」


 ——?!


 突然、僕の身体がすさまじい速さで移動し始めた。

 ……いや、それだけじゃない。


 痛い——痛い!


 噛まれている——!


 横を見ると——サメ!

 サメが僕の脇腹を咥え、猛烈な勢いで泳いでいる。


 しかし、次の瞬間——サメは突然止まり、僕を口から離した。


 と思ったら——


「ガブッ!!」


 ——!!


「ああああああ!!」


 右脚が食われた。膝から下がない。

 痛い——なんてものじゃない。

 どう考えても、このままでは死ぬ……。


 そう考えた、その瞬間——またやってきた!


「ガブッ!!」


 ——!!


「ぐあああああ!!」


 今度は右腕——!


 激痛と出血多量で、目の前が暗くなっていく。


 ここで死ぬのか……?

 前世とは違って、今世は少しは幸せになれると思っていたのに……。

 短い人生だったな……。


 意識が朦朧としていく中——


 夢なのか、何なのか……

 頭に、声が響いてきた。


 うっすらと光る文字が浮かび上がる——




「リカヴァー」

「バイト」

「スウィム」

「ブリーズ」




 ——?


 何かが聞こえた。


 微かに動く口で、その文字を復唱する——


「リカヴァー……」

「バイト……」

「スウィム……」

「ブリーズ……!」


 その瞬間——身体に異変が起きた!


 全身に電流が走るような感覚。

 何かが湧き出る——!


「ああああああ!!」


 ふと見ると——右脚と右腕が再生し始めていた。


 これが——リカヴァー?

 そして、水中なのに息ができる——ブリーズ?


 ということは——残り二つは……!?


 サメは、手足を食べ終えたのか、再びこちらに向かってくる。

 だが——今度は違う。


 行くぞ——!


 僕は一気に泳ぎ出した。

 サメは驚いたのか、その場に止まり躊躇している。

 僕は勢いよく突っ込み——その手前で口を開け——


「バイト!!」


 ——ザンッ!!


 僕の口よりはるかに大きいサメが——

 尾の方を残して、半分になって落ちた。




「はあ……はあ……やった……」


 僕は、喜びよりも——安堵を感じていた。

 命の危険だったけれど、それを脱することができた。


 疲れた。

 少しだけ目を閉じる。

 その瞬間——新たな文字が浮かんできた。




「コンフォート」

「ナイト=ヴィジョン」




「コンフォート?」

 快適……?どういうことだろう。

 ……いや、もしかして——。


 本来なら海の中は冷たいはず。

 でも、今は寒さを感じない。


 だから快適——なるほど、そういうことか。

 文字通り、とても便利な能力だ。


「ナイト=ヴィジョン」

 これは——暗闇でも見える能力かな。

 ……そうか、だから白い箱の中でも、真っ暗なのに色々と見えていたんだ。




 少し安心した僕は——初めて海中をゆっくりと見渡した。

 すると——目の前には、息をのむほど美しい景色が広がっていた。


 色とりどりの魚。

 サンゴ、イソギンチャク。

 差し込む陽の光——まるで幻想のようだ。


 よく見ると、サンゴの間や岩陰にも、たくさんの生き物が潜んでいる。


「うわぁ……すごい……」

「こんな景色、実際に見られるなんて思わなかった……」


 寝たきりだった頃、ネットで見ていた。

「世の中には、こういう美しい場所があるんだ」

 そう思っていたけれど——どこか他人事のように感じていた。


 本当に存在するのか、半信半疑だった。


 でも今——僕は、ここにいる。


 思わず、言葉にしてしまった。

 誰かの撮った画像や映像を眺めるのと、実際に体験するのとでは——全く違う。


 僕は——たぶん、感動して泣いていた。

 海の中だから分からないけれど——きっと、涙が流れていたはずだ。




 さて——何をしよう?

 いや、違う。

 何をしなければならないんだろうか?


 休める場所がほしい。

 サンゴの上では、傷つけてしまうし……僕自身も痛いだろう。

 寝られる場所を探そう。




 少し泳ぐと、サンゴ礁を抜け——岩場と砂地が広がってきた。

 この辺に、休めそうな穴がないだろうか?


 しばらく探したものの——穴があっても、小さすぎて入れない。


 さっきは、ウツボに威嚇された——ごめんなさい。

 そんなつもりじゃなかったんだ。


 うーん……どうしよう……

 寝る場所がない。

 もう少し進んでみるか。




 少し大きめの岩壁の前まで来た。

 その下には——砂地が広がっている。


 ……あ!


 閃いた——この方法で試してみよう。

 海には申し訳ないけれど……。


 僕は、岩壁と砂地の間に移動し——さらに良さそうな場所を探す。


 ここなら良さそうだ——あらゆる意味で、うまくいきますように。


 「バイト!」


 ——ガボン!!


 やった……!


 岩壁に、いい感じの穴が開いた!


 そして——恐れていた「岩の味」がすることもない……!

 いや、もしかしたらミネラルは摂れるかもしれないけれど。


 とにかく、本当に良かった。




 僕はさっそくその穴に入った。


 広すぎず、狭すぎず——とてもいい感じ。

 横になっても、ちゃんと眠れる。


 でも、入り口が広すぎるな……。

 少し狭めておきたい。

 さすがに寝ている時に襲われるのは、勘弁してほしい。


 僕は、手頃な岩をいくつか探し、入り口に並べた。

 もちろん——自分が入れるだけのスペースは確保する。

 床には砂を敷いた。


 これで、僕だけの秘密基地の完成だ!




 基地を作り終えた途端——急激な眠気が襲ってきた。

 あまりにも、いろんなことがありすぎた。

 探索は明日にしよう——今日は休もう。


 では……おやすみなさい——




 ……うっ……うっ……

 お母さん……

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