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第4話 フォックスの乱 前編

日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです

仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを

肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが

なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます

温かい目で読んでいただければ幸いです。

 三日後にミッキーの引き取りを控えて、弁天TVの

 企画部門は ”僕と保護ギツネ” の開始に向けて

 大忙しであった

 今日は山室の引っ越しの日、山室は後輩2名、先輩

 2名を引き連れ、軽バン2台、ハイエース1台と言う

 結構な大所帯で引っ越しに勤しんでいた

 転居先はクローゼット完備の為、衣類のみで基本的

 に問題はないのだが、備え付けのTVなどの家電や家

 具は、ミッキーが破損させる恐れがある為

 山室の手持ちの家電や家具を出来るだけ持ち込む事

 となった

 軽バンの一台は先輩と後輩の1名ずつが乗り込み、

 先に転居先へと向かっていた

 ミッキーを迎え入れるにあたって床面、壁面を養生

 に向かったのだ、と言うのも昨日の全体会議で

 「ミッキーに対応した山室の新居を皆でDIYしても

  らうのだが、その様子は随時撮影してもらって番

  組内で差し込ませてもらう…」

 大石の突然の提案だったが、こちとら弱小ケーブル

 TVのスタッフ!慣れたものだぜ!と言わんばかりの

 一同だったのだが…

 「勿論、野放図な予算ではつまらん企画になってし

  まう!限られた予算の中で、如何に最善を尽くす

  かが描かれてこそTVマンと言えるだろう、そこで

  私が決めた予算額だが…」

 ゴクリ、誰かがツバを飲み込む音が聞こえて来た…

 「10万ではどうだろうか?足りるか?少なすぎかな

  ??」

 この大石の発言に、君塚と山室はじめ、スタッフ一

 同がア然とすると同時に、なんだかこれまでと様子

 が違う事を理解した…

 と、言うのも、大石という男は大の倹約家で、事務

 所で使うテプラのミスプリを見つけるとお小言をも

 らう程細かい性格なのだ! 

 山室も当然この提案の内容なら予算は5000円程度、

 上手くいけば10000円出してもらえるか?と思って

 いたのだが、何をトチ狂った事か10万円などと言い

 出した…

 これにはスタッフ一同、驚きを隠せない反面、何が

 こうさせるのか?と原因に頭を巡らせる者が答えを

 求めて君塚と山室をしきりに見やっている…

 その様子を見て大石は

 「なんだ!?やっぱり少なすぎるか?予算が…」

 などと皆の混乱に拍車をかける

 たまらず君塚が

 「局長、おそらくは予算はそこまでかかりません、

  ”限られた予算”という趣旨を変えて”なるべく低

  価格に抑える”という趣旨ではどうでしょうか?」 

 「ふ~む、悪くないアイデアだとは思ったが、そう

  だな!キャットタワーなどの相場も分からない事

  だし、ここは一度価格帯を調べに調べて、我々は

  こう仕上げた!といった趣旨もアリだな!」

 「むしろキャットタワーは自作してみるのが良いか

  と思いました…」

 「それは良いな!皆もこういったアイデアがあった

  らドンドン発言していってくれ!」 

 「ハイ⁴!!」

 「そうとなれば山室くん!」

 「ハイ??」

 「ミッキーと暮らすのは君だ、ミッキーを遊ばすキ

  ャットタワーなどは君が主導して作成してくれた

  まえ」

 「分かりました!」

 ケーブルTVのスタッフは、大道具などを自己完結

 させる場面が多々あり、自然と手先が器用になりが

 ちだ…

 この程度の注文であれば何ら問題ない、問題はむし

 ろミッキーの趣向が読めない事の方だ…

 何をどうしてやれば喜ぶのか?そこの所がイマイチ

 掴み切れていない…

 そんな時、山室のスマホに着信が入る

 「もしもし、どうしたの?」

 転居先に向かった後輩からだった

 「山室さん、ペット用の養生なんだけどどんな模様

  が良いですか?色々と種類があって、好みとかあ

  れば聞きますが?」

 ちょうど連絡を取ろうと思っていたところだ、どう

 やらすでにホームセンターにいるらしい

 「局長!養生班がホームセンターでペット用の養生

  シートの柄で悩んでいるそうです…」

 「うむ、私から折り返すと伝えてくれ!」

 その旨後輩に伝えると、電話を切って折り返しに備

 えさせた

 程なくして大石がかけた電話はビデオ通話のようで

 大石はスピーカーフォンにしたスマホを皆に見せな

 がら

 「こちらでも皆で柄を見ながら相談しようじゃない

  か、すまんが店員さんを呼んでくれるか?」

 「分かりました、すみませ~ん、ちょっとお願いし

  ます」

 すぐさま現地の後輩が店員を呼び寄せる

 「この様子も録画しておいてくれ!」

 大石の咄嗟の判断に君塚がすぐさま対応する

 画面向こうでは店員が”どうされました?”などと、

 こちらの対応に当たっていた

 「すみませんこっちです…」

 画面越しに大石が店員に話しかけると、店員は状況

 を把握出来たようで

 「あ、そちらにお客様がおられるのですね?」

 と、すぐさま状況に合わせたアクションを取って来

 る、どうやらなかなか優秀な店員のようだ…

 「私は弁天TVの局長の大石と言う者です、今回新番

  組を制作するにあたり、部屋作りの一環で買い出

  しに行ってもらってるのですが…」

 大石は現状の説明と、これからも買い出しに来る旨

 そして今、この状況も録画しており、必要が出たら

 そちらの許可を取りに来る旨までを掻い摘んで説明

 した

 「分かりました、少々お待ちください…」

 店員は無線で何やら小声で話すと、画面に向かい

 こう言った

 「今店長がこちらに向かっております、その間商品

  につきましては私が対応いたします」

 実に優秀!瞬時に状況を把握し、的確な対応をとっ

 てくるあたり、ただのアルバイト店員などでは決し

 てない事はそこにいる皆が理解した

 「ありがとうございます、実は賃貸で動物を飼う番

  組を撮ろうと企画しておりまして、ペット用に部

  屋を少し補強したいのです…」

 「では床や壁面の養生メインなのですね?」

 「出来ればキャットタワーなんかも自作したく…」

 「そして材料購入の経緯なんかも撮影したい訳で

  すね?」 

 「話が早い!助かります」

 「小池くん、お客様は?」

 「あ、店長みえました!こちらのお客さまと、画

  面の向こうにも上司の方がおられます!」

 ”いらっしゃいませ” 現地のスタッフにペコリと

 お辞儀すると、店長は画面に向き直り 

 「いらっしゃいませ、当店の店長の白河と言いま

  す、本日はどういったご用件でしょうか?」

 「画面越しで失礼致します、私は弁天TV局長の大

  石と申します、実は今回、、、」

 大石は丁寧に番組制作の経緯と、目的、そして何

 をどうしたいかを説明した

 「あぁ、ボクイヌのような番組をまた制作される

  のですね!」

 「そうですそうです、詳細はまだ明かせませんが

  あの番組を新しく制作すると思っていただけれ

  ば間違いありません」

 「私もあの番組は大好きでして、そういう事でし

  たらいくらでも協力させて頂きますよ!」

 「ありがとうございます!」

 画面越しに皆がお礼を言った際に映ったのだろう

 「あ、山室さんがおられますね!よく存じており

  ますよ」 

 「変に有名だな山室…」

 君塚のツッコミに、店長含めた皆がおおいに笑っ

 た

 その後は順調で、店長自らが猫用壁紙やキャット

 タワー用の木材など、適宜こちらの要求する内容

 に合わせたプレゼンを展開し、気づけば軽バンの

 中には必要資材がわんさと積み込まれていた

 「よほどの運動能力の猫ちゃんでもカバー出来る

  とは思いますが、もし必要ならまた別途、ご用

  命下さい!当店が全面的にバックアップいたし

  ますよ!」

 「有難うございました!本当にご助力頂き感謝に

  尽きません、今後は必要素材はおおむね山室が

  単独で購入にあたると思いますので含みおいて

  いただけると幸いです」

 君塚のこの言葉に、店長の白河と敏腕店員は笑顔

 で頷いた

 

 紆余曲折、様々な障害がミッキーとの生活の間に

 立ちふさがる!だが、、、、

 それにもまして感じる温かな人とのつながり…

 リリーフアニマルの美晴、土方、そして健太とリ

 ッキー山室の身を案じた君塚に、下心が隠せない

 大石、決して多くはない人数の中、精力的に協力

 してくれる同僚たち、、、、

 胸に去来する様々な想いを噛みしめて、いつもの

 軽バンを運転する山室のハンドルにも力がこもる

 「まぁ生活してみて何か過不足が発生したら随時

  対応だな、転居先の部屋は十分すぎるほどに対

  応しておいて間違いはないだろう」

 「君塚くんの言う通りだ!もしミッキーちゃんに

  何かあったら私は後悔してもし切れないよ…」

 ミッキーに会う前からこれなのだ、番組や弁天TV

 への批判などよりもまずミッキーファースト!所

 長の大石がデレデレと言う事実、これはこれで山

 室にとってもミッキーにとっても追い風なのかも

 しれない


 駐車場に何度か見かけた事がある車が滑り込んで来

 た、山室には馴染みの多い車だ

 リリーフアニマルを弱冠30代の若さで束ねる美貌の

 人、何を隠そう、いまではすっかり健太の恋人!

 美晴である

 美晴は大事そうに両手で抱えた小さめのケージを気

 にしながら2階に弁天TVが入る商業ビルのエントラン

 スに差し掛かっていた、階段で上がろうと1段目を登

 りかけたその時、エレベーターから局長の大石が満面

 の笑みを湛えて手を振る様が目に入った

「やあ大貫さん!ささ、こちらへどうぞどうぞ♪」

 一種異様なまでの歓待の雰囲気に気おされながらも

「あ、ありがとうございます」

 と礼を返すとエレベーターに乗り込む、その間も大石

 はニコニコと斜め上からケージをチラチラ見やってい

 る

「こちらです♪」

 手招かれるまま大石の後に続くと、まるでレッドカー

 ペットが大物女優を迎えるかのような歓迎ぶりだ、、、

 左右に並ぶスタッフの中には山室と君塚の姿もあった、

 一歩扉をくぐって中へと歩を進めると…

「すごい!」

 思わず感嘆の声が漏れる 事務机が並ぶ本来であれば

 純粋に事務所であるその場所は、今やまるで室内ドッ

 グランの様相を呈していたのだ、簡易的な網で囲われ

 た周囲、徹底的に目張りされた隙間の数々、本来隙間

 が空いている机と机の間のすら網で目張りされている


 PCやルーターのコード類それらも全て目張りの中へと

 遮蔽され、確保された動線はもはやドッグラン以外の

 何物でもなかった

「スタッフ総出で対策しました、山室が仕事中はここ

 で運動させてストレスを緩和させます、やはりこん

 な小さな子供にさみしい思いをさせては保護などと

 おこがましいですからな!」

 誇らしげに胸を張る大石だが、スタッフ一同は大石が

 ミッキーにメロメロな件を把握していた、誰の表情を

 見ても「やれやれ」といった様子だ、、、、  

 

 ゴクリ、、、、、

 一同が見守る中、小さなケージから微かなシルエット

 だけを見せていた主役が、いよいよ姿を見せる時が来

 た、、、

 「ほらミッキー、皆さんと挨拶しようか…」

 そう言ってケージの扉を開けた美晴の胸に軽くジャン

 プして飛び込むとその姿が露わになった

 ツンと尖った耳、面長な雰囲気だがまだまだ丸っこい

 幼い顔つき、つぶらな瞳は見る者を容赦なく引き込む

 魔力の様な魅力をたたえている

 

 見守るスタッフの全員から何とも言えない、溜息が漏

 れる、女子社員は目が♡になり、男性社員は漏れなく

 口角が垂れ下がる、大石に至っては、まるで初孫にで

 も邂逅したかのような破顔ぶりだ…

 「ミッキー、こちらの皆さんがみんなであなたのお世

  話をしてくれるのよ」

 美晴の言葉を理解してか否か、皆の顔を見渡すミッキ

 ー、その一挙手一投足にその場の全員が顔を左右へと

 シンクロさせる!

 「フォックスランの有用性のテストも兼ねて放してみ

  ましょうか…」

 大石の提案に美晴も

 「そうです、ね、、、一度環境適応の確認、、、と言

  う事で…」

 「待って下さい、、記録しますから!」

 そう言うと一番若い男性スタッフである金本俊が撮影

 していた三脚からハンディカムを取り外して構える

 「では、、、」

 美晴の手から放たれたミッキー、、、、

 オドオドと周囲を見渡し、環境の変化に驚いている様

 子だ、と思ったのも束の間!信じられないスピードで

 駆け出した!

 スタッフは知らなかった、美晴さえも想定外だった!

 ミッキーの運動能力がどれ程なのかを…



ドリームドッグのスピンオフ、主人公は愛すべき脇役、弁天TVディレクター兼アシスタントデューさー山室祐次、健太、美晴、かっちゃんの面々、と、お馴染みのメンバーも顔を揃える、健太の生活の外で起こったあれやこれや、、そんな話を綴った物語です…。

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