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第3話 強風!逆風?

日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです

仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを

肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが

なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます

温かい目で読んでいただければ幸いです。

 「ありがとうございました!」

 美晴の話を有難く頂戴した山室は、まだやや硬さ

 の残る表情で出口を目指していた

 不意に手前の扉が開くと、リッキーの担当医をし

 ていた土方がひょっこりと姿を現した

 「お~山室さん!ミッキーの里親になるんですっ

  て?」

 相変わらず、ややお堅い口調の土方は、驚いた表

 情で山室に問いただす

 「えぇ、もう決めました、最も、上司にも止めて

  おけ、と止められたりしたんですがね…」

 「でも振り切って決心した?何故だい?」

 「た、単純に自分自身でやってみたい!と思った

  のが一つ、でもそれだけじゃなく、、、なんて

  言うか健太さんとリッキーを見てて思ったんで

  す、動物と暮らすって、きっと運命なんだな、

  って」

 「確かに、リッキーと夢原さんはきっと運命だっ

  たんだろうなぁ…オレからしてみりゃあのリッ

  キーがあんな短期間であそこまで人間を信頼し

  てくれるなんて信じられなかったよ!」 

 「ですよね、、僕もビックリしましたし…」

 「だがあれは特別中の特別だよ、あんなの二度と

  見る事はないと思うよ?」

 「えぇ、僕もそう思います、でも……僕もミッキ

  ーとの出会いは運命だと、そう思うんです…」

 「きっと苦労すると思うよ?」

 「覚悟の上です!」

 いつになく座った目つきの山室に、土方もいつも

 のおどけた表情から一変して引き締まった表情を

 見せた

 「どうやら本気なんだな…」

 「えぇ、冗談やノリだけでは決してないです」

 「なら言っておく!」

 そう前置きして土方は語り出した

 「まず、キツネってやつは言わずと知れた野生動

  物だ、食生活にもよるが、その糞尿は犬猫の比

  ではない匂いだ、だから常に室内での処置は迅

  速に!すぐ洗い落とさないと匂いが取れなくな

  る、そしてトイレは覚えないと思っておいた方

  が良い」

 山室は食い入るような前のめりの姿勢で聞き入って

 いる

 「次に、野生動物であるがゆえ、というか種の習

  性なんだが、夜行性の側面がある、夜中にバタ

  バタ走り回る場面が想定される、また遊びの内

  容としては、飛ぶ、跳ねる、走り回る、潜る、

  齧る、とまぁ、ちょっとした野獣だわな(笑)」

 「狂暴そうですね…」

 「とんでもない!」

 山室の言葉に土方はすぐさま訂正を入れる

 「そもそも野生で兄弟や親なんかと走り回ったり

  飛んだり跳ねたりしてた奴を家で飼おうてんだ

  普通のペットと同じ尺度で狂暴だの言う事聞か

  ないってのは可哀そうってもんだろ?」

 土方のこの言葉に、自らの認識の甘さとミッキー

 の本来の生息地である野生と人間社会の違いを改

 めて思い知った気分だ

 「覚悟を決めたつもりでしたが、まだまだ認識不

  足だったみたいです…」

 「まぁそう落ち込まなくても、それが普通だと思

  うぜ、野生動物の生態なんて知らない方が普通

  だろうよ…」

 土方はそう言ってくれるが、山室の心の中はおだ

 やかではいられなかった、ミッキーをちゃんと面

 倒見てやれるのか?安心して過ごせる環境を整え

 てやれるのだろうか?そんな不安が頭をもたげて

 くる

 「だがな、ミッキーは親をなくした、あんな小さ

  い子ギツネが、だ!本来なら親が一緒に暮らし

  て獲物の狩り方から木の実の実る場所、水場な

  んかを案内したりと多感な時期だ、甘えたい時

  もあるだろう…」

 「そうですね、ミッキーの親を奪ってしまったの

  が人間であるなら、ミッキーを今後の生活圏で

  問題なく生きて行けるように躾けるのもまた人

  間の責任であると思います!」

 「そういう事だ、ミッキーの運命を変えてしまっ

  たのが人間なら、親代わりに生きてゆく術を教

  えるのもまた人間の責任だ!」

 そう言って目をつぶると土方は一枚の紙を山室に

 手渡した

 内容はミッキーの体重から体の各所のサイズ、と

 いった健康診断の結果、そして与えて良い物、悪

 い物、注目すべき点、などについて土方の所見が

 書き添えられている

 「あんたが親代わりだ!大方の事はそれを読めば

  分かるだろう、様子がおかしい時はすぐに連れ

  て来てくれ、ストレスが溜まってそうな時もう

  ちのドッグランなら問題ないだろう」

 「ありがとうございます!助かります…」

 「安易にオヤツで釣ったりせず、躾ける所はビシ

  ッと!甘えさせる時は優しく甘えさせてやって

  くれ…」

 「ハイ!」

 「うん、あとは随時対策だな!一回生活を始めて

  みないと何が起こるかも分からんしな…」 

 「そうですね、、、何か問題が起きたら相談させ

  てください」

 「いつでもどうぞ!オレで出来る事なら協力は惜

  しまないつもりだ、と、最後に…」

 「ハイ??」

 「キツネは獣医のオレでもあまり馴染みの無い動

  物と言える、従ってオレたちプロを頼ってくれ

  て一行に構わない!だから些細な事でも気にな

  ったら相談するのに躊躇はしないでくれて構わ

  ない」

 「ハイ!ありがとうございます!」

 山室はこれでもか!と言うぐらい深々と土方に頭

 を下げる

 「オイオイ、、そんな畏まらなくっても…」

 「いえ、本当にしょっちゅう相談する事になりそ

  うなので…」

 「あぁ、野生のキツネはいいとこ5年、短いと3年

  ぐらいが寿命らしい…」 

 「そんなに短いんですか?」

 「そのようだ、昔からなのかは定かではないがな

  、近年の研究ではそういった結果が報告されて

  いる」

 「3年、、、、」 

 「それが飼育下では10年を超える例もよく見られ

  るらしい」

 「本当ですか!?」

 「あぁ!だから保護する事は有意義だと言う考え

  方も出来るのかもしれん、もっとも、、、人間

  のエゴかもしれんがな…」

 難しい表情をする土方に

 「じゃあ僕と暮らしてミッキーはきっと幸せだっ

  たと、誰にも思ってもらえるぐらい頑張らない

  とですね!」

 「その意気だ!あとこれを会社の上司に渡してお

  いてくれ」

 そう言って土方は一冊のファイルを手渡す

 「これは?」

 「ミッキーの生活に必要な情報がまとめてある、

  大貫さんからも連絡が行ってると思うが、必要

  な環境やら与えて良い食材、定期健診の予定や

  緊急時の対応なんかが書いてある、例えばだが

  ドッグランには2日に1回は来てもらう!運動不

  足もだがストレスも心配だからな、多感なこの

  時期、伸び伸びと生活させてやりたい!」

 「分かりました、確かに届けておきます!」

 「たしか1Kだったか今の部屋?」

 (そんな情報まで流れてるのか…)

 そう思ったが、別に隠す事でもないので素直に返

 事する

 「そうです…」

 「おそらくは引っ越す事になるな…会社がどうい

  う対応を取るかまでは知らんが…」

 (なんと!?1Kではそれほどマズいのか?)

 山室はまたも自身の認識が甘い事を呪ったが、さ

 すがに従来の住処までは否定されても困ると言う

 ものだ…

 「それじゃ長々とすまんね、ファイルだけ渡して

  おくだけのつもりだったんだが…」

 「いえ、おかげで色々と為になりました、この冊

  子、熟読しておきますね」

 「それがいい、じゃあまたな!」

 そう言って土方はアッサリと立ち去ってしまった

 急にぽつねんと1人ぼっちになった山室は、思い

 出したようにファイルと冊子を抱きしめると、一

 目散に会社へと向かった

 

 あくる日の正午、君塚に呼び出された山室が企画

 資料室をノックすると

 「入れ!」

 明らかに君塚ではない声、というかこの声は…

 「失礼します!」

 山室が資料室へと入室すると、君塚の他にもう1人

 、、、山室の予感は的中していた…

 そこにいたのは大石武彦、何を隠そう弁天TVの局

 長その人だった!

 「まぁ座りたまえ山室くん」

 「は、ハイ、失礼します…」

 (何だろう?オレ何かしたかな、、、、)

 実は山室は大石が大の苦手だった…

 強面で気難しく、君塚ですら大石の前ではいつもの

 柔和な表情を引き締めている…

 その君塚が今回の呼び出しの趣旨を語り出した

 「実はな山室くん…”僕と保護ギツネ” を開始する

  にあたって、色々と準備が不足していてな…」

 「私から話そう君塚くん!」

 そう言って大石は君塚を遮って自ら語り出した

 「つまりだ、まず君の今の住居ではミッキーを住ま

  わせるのに手狭だと言うリリーフアニマルからの

  指摘がまず一つ!」

 昨日土方に言われた通りの内容だ…

 「次にミッキーをストレス無く過ごさせる為に、2

  日に1回はリリーフアニマルのドッグランに連れ

  て行く事」

 これも土方から言われた通り…

 「そして最後に、これが一番の難題なんだが、君の

  仕事中ミッキーを留守番させる、と言うのがどう

  もうまくないようなんだ…」

 「そうなんですか!?」

 「あぁ、やはりまだ幼い、と言うのもあるし、人間

  に慣れさせる為にはなるべく多くの時間共に過ご

  してやる事が大事なようだ…」

 これはなんとも難題、仕事中ずっとリリーフアニマ

 ルに預ける、なんて事を考え至るが、それでは里親

 の意味があるのだろうか?とも思ったり…

 「そこで、なんだが…」

 なんだか少し緩んだ表情の大石が気になった…

 「しょうがないから君たちのデスクの横に囲いを設

  けてミッキーを毎日連れて出社したまえ」

 「は!?はぁ??」

 「本当は自由にさせてやりたいところだがそうもい

  かんからな、囲いを設けて中で放しておきたまえ

  、ドッグランならぬフォックスランだ(笑)」

 「そこまで協力していただけるんですか!?」

 「もちろんだとも!”僕と保護ギツネ”は、きっとボ

  クイヌを超える視聴率をもたらすだろうからね!」

 山室は、自身が大石にこれほど期待されていたのか!

 と感動したのも束の間、次の大石の発言でズッこけ

 そうになるのだった…

 「何せあの天使の様な可愛さだ!絶対に人気が出る」

 何の事はない、大石は大の動物好きなのだ、表情に

 それが顕著に表れている

 君塚の方をみやると、こちらを見ながら複雑そうな

 表情で小さく頷いている

 「最初の件はどうなるでしょうか?」

 山室は住居の件がきになっていたのだが、これには

 君塚が即座に回答した

 「私の方でペット可の十分な広さの仮住まいを探し

  ている所だ、そちらの家賃は会社が負担する、な

  のですまないがミッキーと同居の間は転居しても

  らう事になるが構わないだろうか?」

 「家賃負担がないのでしたら一向に構いませんが…」

 山室のこの返事に、大石は満足したようでしきりに

 ウンウン頷いている

 「あ~あとなんだが…」

 大石が思い出したように言い出す

 「引っ越しは君塚くんの部署の人員で手伝ってもら

  い行う事とするが、当然ペット対策が必要となる、

  それらをDIYでこなしてもらうのだが、そこも撮影

  しておいて番組の途中で差し挟めばいくらかの尺

  にはなるだろう…」

 「良いですね!予算を決めて予算内でいかにDIYする

  か!?みたいな感じなんてどうでしょうか?」

 君塚はさすが部長!というだけあって即座に番組作

 りに余念がない

 「うむ、野放図な予算ではつまらんからな、ちと切

  迫した予算内で如何に効率良くDIYするか!?

  なかなか見応えも出そうじゃないか!どうかね山

  室くん?」

 「大変良いアイデアだと思います!」

 もはや山室にはこう答えるしか回答の選択肢が残さ

 れていなかった

 およそ30分余りの打ち合わせが終わり、大石が企画

 資料室を後にした頃には、山室はグッタイとうなだ

 れていた…

 「お疲れ、山室…」

 君塚も珍しく疲れた表情をしていた

 「しかし意外でした、大石局長って動物好きだった

  んですね?」

 「言ってなかったか?ボクイヌも局長の鶴の一声で

  企画が通ったんだぞ?」

 「どうだったんですか!?」

 「あぁ、やけにスルッと企画が通ったんで不思議だ

  ったんだがな、どうやら資料の写真でリッキーの

  写真を見て一目ぼれではないかと思っている、、、

  内緒だがな…」

 意外であった、だが山室の中で大石という男のイメ

 ージがガラリと変わった瞬間でもあった

 「こうなれば腹をくくるしかない!”僕と保護ギツネ”

  是が非にも成功させるぞ!!」

 「ハイ!」

 急に吹き出した追い風、だが上手く乗りこなさない

 と山室自身が簡単に吹き飛ばされてしまいそうな強

 風でもある

 果たして山室はこの風に乗る事が出来るのか?



ドリームドッグのスピンオフ、主人公は愛すべき脇役、弁天TVディレクター兼アシスタントデューさー山室祐次、健太、美晴、かっちゃんの面々、と、お馴染みのメンバーも顔を揃える、健太の生活の外で起こったあれやこれや、、そんな話を綴った物語です…。

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