表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第1話 新番組!?

日常系って人気無いですよね、でもハートウォーミーな話が好きなんです

仕事中、ふとした時に思いつくシチュエーションにストーリーとキャラクターを

肉付けして背景を描写する、この手法しか今のとこ持ち合わせていないのですが

なるべく山あり谷あり、読み味のある物語になるよう努力してます

温かい目で読んでいただければ幸いです。

 店員一同は矢のような忙しさに追われるのだった

 この2店舗のみならず、周囲の商店街は焼き鳥屋、

 町中華と「かっちゃん」「万福」での一連の騒動の

 聖地巡礼の波及効果により、かつてない程の賑わい

 を見せていた、当の健太も、話題のリッキーとその

 飼い主、とりわけ健太が役者という事もあり、尚且

 つリッキーが2人の仲を取り持ったキューピッドだ

 として地元TVの取材などを受けていた

 グリとグラや大将、ミキの元へも取材が訪れ、駅前

 商店街は一大ムーブメントの様相を呈していた

 一方、リリーフアニマルはと言うと、こちらも健太

 とリッキーを、また美晴を引き合わせた縁起の良い

 施設、と訳の分からない人気の出方で賑わっていた

 保護犬、保護猫の問い合わせや申し込みも殺到して

 いて、美晴たち職員一同はうれしい悲鳴を上げてい

 るのだった


「いや~、見たよ夢原くん、すっかりネットで時の人

 だねぇ」

 撮影現場で助監督の大杉に声をかけられた健太は

「まぁ、一過性の人気でしょうね」

 と恐縮するのだったが

「な~に言ってるの、この業界、話題にのってる時は

 貪欲にいかなくちゃ」

 などと言われ困惑してしまった…

(オレ、貪欲さが足りないのかな?)

 この業界における自分自身のスタンスに健太が思い

 あぐねている時に監督に声をかけられた

「夢原!」

 めったに監督に名前で呼ばれることのない健太はビ

 ックリしつつも返事した

「は、はい!」

「ちょっとこっちで話をしようか」

 監督に促されるまま撮影セットの裏の仮設テントの

 椅子に差し向かいで座らされた

「俺も一連のまとめ動画を見たよ」

「、、、、、、、」

 健太は返答に窮していた

「俺はな、人情味のある役者が欲しくてお前のとこの

 団長に頼んだ、舞台の演技動画を見せられお前の演

 技が今回の役にピタッとはまると思ったからだ」

「あの犬との出会いの後、お前が見せた笑顔、あれが

 俺が欲しかった表情だ、ブレなくて良い、変に気張

 った演技はお前の味じゃない、このままで行け」

 監督に言われて健太の中でストンと胸のつかえが落

 ちた気がした

(そうだ、オレは気張った演技をするタイプじゃな

 い、似合いもしないし柄でもない)

「分かりました!ご助言、ありがとうございます」

 吹っ切れた健太の表情が監督にも分かったようだ

「変な気負いも気取りもカッコつけも要らん、今回の

 役でお前の存在を示すのは素朴な演技だ」

「はい!」

 監督に勇気づけられ健太はさらなる意欲を燃やすの

 だった

 午後の撮影で肩の力が抜けた健太は、自分でも自覚

 出来るほど自然に、リラックスして演技

 出来たのだった

「カーーーーーット」

 監督の声が響いた、直後

「夢原!!」

「はい」

「これ以上ない出来だ、実によかったぞ」

 普段あまり人を褒めない監督がぶっきらぼうながら

 手放しで健太を褒めたたえた

「ありがとうございます」

 こうして健太の出番は終わりを迎えた


 健太の出演する映画「真夏の夜空」がクランクアッ

 プを迎え、健太の元にもいくつかのメディアから

 取材がきた、メインキャストではない、けど端役と

 呼ぶには出番が多い、そんな役どころの

 健太にこれ程の関心が寄せられるのも、ひとえに一

 連の騒動の影響だろう、美晴も店の皆も

「役者なんだから話題に上るのはプラスと考えて」

 と、プラス思考で捉えており、一連の騒動が健太の

 周囲でプラスに働いている現れと言って良いだろう

 また、件の映画「真夏の夜空」のCMに健太もチラッ

 と映っているのが話題に拍車をかけた

 公開まであと1か月、健太を取り巻く環境はまだま

 だ騒がしそうだ

 ブゥーッブゥーッ

 健太のスマホに着信が入る、確認すると山室からだ

(何だろう?)

 思いつつも健太は電話に出る

「もしもし、山室さんお久しぶり」

「お久ぶりです夢原さん、実は折り入ってご相談した

 い事があって、今日の午後とかご都合どうです

 か?」

「山室さんが持ってくる話というと、また弁天TVの番

 組の件ですか?」

「直接会ってお話したいのでお時間を2時間ほど取れ

 ませんか?」

「わかりました、じゃあ昼過ぎに、場所はどうしま

 す?」

「伺いますよ、ご自宅で待ってて下さい」

「では昼過ぎに、待ってます」

 電話を切った後、山室の用件について考えてみたが 

 分からないので保留した

「リッキー、山室さんが来るってさ」

「ワフッ」

 なんだかくぐもった返事が返ってくる、健太はテー

 ブル脇のタッパーからオヤツを一つだし与えた

 昼食を済ませまったりしていると呼び鈴が鳴った

 ピンポーン

 リッキーが我先に玄関に駆け寄る

 ドアを開けるや否やリッキーが山室にジャれつく

「やあ。久しぶりだねリッキー、元気そうだ」

「いらっしゃい」

「じゃ早速行きますか、おいてくと可哀そうだからリ

 ッキーもどうぞ」

「助かります、じゃあ行こうかリッキー」

「ワン」

 小気味良い返事をして早速リードを咥えて持ってく

 る

「わは、賢いなリッキー」

 山室は初めて見たリードの運搬に感激したようだ

 車に乗り込み発車した後で行先を知らない事に気づ

 いた

「ところでどちらまで?」

「あ、言ってなかったですね、リリーフアニマルで

 す」

 てっきり弁天TVかと思っていた健太は少し驚いた

「夢原さんと、リッキーにも、会わせたい子がいるん

 です」

「???」

 行ってみてのお楽しみです

 含むところのありそうな表情を浮かべて笑う山室で

 あった


 駐車場に着くと山室が

「病院の方で皆さん待ってます」

 と言った(病院??)ますます訳が分からなかった

 がとりあえずついて行く

「お大事に~」

 ちょうど病棟からゴールデンと飼い主らしい女性を

 見送る美晴に出くわした

「あ、山室さん待ってました、健太さんも中へどう

 ぞ」

 美晴に促され「????」な表情をうかべつつも入

 院動物の病舎へ通された

「どういう事なの美晴さん?」

 健太が尋ねると

「見た方が早いかも」

 と部屋の隅にあるやや大きめのケージの前まで来た

「あ、この子…」

 それは以前美晴から聞かされていた小ギツネ、確か

 名前はミッキーとつけたらしい

「ミッキー出ておいで」

 ミッキーは美晴の手の中に飛び込んできた

 しきりに美晴の手指を甘噛みしている、甘えたい盛

 りなのだろう

「実は‥‥」

 不意に山室が話し出した

「僕がこの子の里親を務める事になりまして…」

「へえぇぇぇぇ~!!」

 予想外のサプライズに健太も唸った、こんな展開は

 全く予想していなかった

「そして、またそれが番組になるようで、、、」

「あははは、それは面白そうだ、必ずオレも見ます

 よ」 

「それで、今日は夢原さんとリッキーにも、その、顔

 合わせをしてもらおうと、、」

「え???」

 健太は困惑した(なんで?オレも出るの??)

「実はね、健太さん」

 美晴が口を開いた

「この子は生後1ヶ月くらいの時に保護されたのはも

 う知ってるでしょう?」

「前に言ってたね」

「それでね、保護してくださった方の話では道路脇で

 この子が保護された時に母ギツネと思われる大人の

 個体の死体があったそうなの」

「この子はその側でずっと座り込んで鳴いていたみた

 い…」

「可哀そうに、、」

「うちは県の動物保護委施設に指定されてるから、こ

 の子はそれでうちに連れてこられたの」

「で、この子はまだ小さいし、人慣れはぜんぜん問題

 ないんだけど、、」

「うん?」

「友達がね、欲しいのよ、この時期に大事な遊び相

 手が‥」

 美晴が言いにくそうに先を続けた

「それじゃあリッキーならどうかな?と、ね、実は私

 が思って、、、」

「う~ん、、」

 健太は唸ってみたものの、目の前にいるミッキーの

 あまりの愛くるしさに

「いいんじゃないの?オレはぜんぜん問題ないけど」

 美晴の表情がパッと明るくなった

「ありがとうございます!」

 山室がガッチリ健太の手を握っておおげさに大喜び

 した

 

 山室の話を要約するとこうだ

 僕と保護犬は予想以上の盛り上がりを見せ、結果と

 して

 弁天TV史上最高の視聴率と人気をたたき出した

 それと言うのも、リッキーと言う愛すべき保護犬と

 何より、その保護犬を心から愛すことの出来た健太

 の存在無くしてはあり得なかった事だろう

 だが、果たして自分が同じ事をやって上手くいくだ

 ろうか?

 そこでペットの事情に詳しい美晴に相談したところ

 (健太とリッキーにミッキーの友達として共演して

  もらったら?)と助言された、との事だ

 健太としては正直なところミッキー単体の人気だけ

 でも十分すぎるくらい番組が成り立つ

 と思えていた、それほどにミッキーはカワイイの

 だ…

 どうなる事かは分からない、けど人間たちが話し込

 んでるうちに鼻を突き合わせ

 て仲良く顔を見合わせてるリッキーとミッキーを見

 ると何故か無性にホッとした気持ちになる

 「リッキーとの顔合わせは何の問題もないみたい

  ね」

 微笑みながら言う美晴と、一同も同意見だった

 「やってみるか!」

 「ハイ!」「ウォウ!」

 力強く言った健太の言葉に山室とリッキーが同時に

 応え、一同は揃って笑い声を

 上げるのだった

 (やれやれ…これも芸の肥やしになるのかもな…)


 新しい番組、それも新しい仲間を加えて、以前の様

 なアットホームな雰囲気で、気心の知れた仲間との

 和気あいあいとした

 そんな山室の希望に満ちた思惑は、ミッキーのハチ

 ャメチャな暴れっぷりによって

 脆くも崩れ去る事となる…









ドリームドッグのスピンオフ、主人公は愛すべき脇役、弁天TVディレクター兼アシスタントデューさー山室祐次、健太、美晴、かっちゃんの面々、と、お馴染みのメンバーも顔を揃える、健太の生活の外で起こったあれやこれや、、そんな話を綴った物語です…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ